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電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
第二章【狂奏のピアニスト】
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第5話【自分を大切にする生き方】

雷神が怒鳴なれて俺の隣に座って来たので。

俺は彼に言葉をかけてた。

「元気?」

すると雷神は少し気まずそうに答えた。

「まあ、元気だよ」

仲の良い友達同士なのにどこかぎこちない会話になってしまった。

そんな雰囲気に疑問に思った伊吹さんがこちらへ声をかけた。

「あら、二人ともそんな感じだったかしら、前もっと気楽そうに話していたわよね?」

その言葉に対して雷神は申し訳なさそうにこう答えた。

「俺が悪いんだよ、この前音楽またやろうって言った時さ・・・仕事が忙しくって音楽やる暇ないって言ったからさ・・・」

「お前は悪くねぇよ、だって今更音楽やろうって、あまりにも遅すぎたんだよ、お前が謝ることじゃないだろ」

雷神の謝罪の気持ちに俺は必死にフォローする。

雷神は今、別のことが忙しくって音楽なんかやる暇なんてない。

コイツのベースは必要としているが、コイツの気持ちに無理させるわけもいかない。

「ごめんな、人助」

こっちを見て再び謝って来た雷神に対して、俺は口を少しニっとさせ言った。

「謝るな、雷神・・・、大丈夫だから」

「ありがとう・・・」

俺の言葉に安心したような顔を見せた雷神。

そんな時、テーブルになにか置かれた音がした。

「はい、二人とも、コーヒー淹れたわよ」

そんな会話を聞いていた、伊吹さんが俺達2人にコーヒーを入れてくれた。

頼んでいたコーヒーはとても香りがよく、味も深く、ほろ苦い味わいが。

口の中を優雅な気分にさせてくれた。

「・・・いつ、飲んでもこのコーヒーは美味いですね」

雷神も「本当だな」と言葉を述べた時。

ゴトッ。

俺と雷神が気持ちよくコーヒーを味わっていた時のことだった。

目の前にとても美味そうな匂いのするしょうゆラーメンが・・・。

「サービスだ、食っていけ」

「・・・」

俺は思わず、唖然とした。

新鮮なネギ、メンマときくらげのトッピングがまた食欲をそそる。

卵が2つ、チャーシューも二枚、3枚の海苔がのせられていた。

とても美味そうだ・・・このコーヒーの後でなければ。

「いつも、思うんだ、なぜこの店はラーメンとコーヒーを飲まなきゃいけないんだ」

雷神が思わずツッコミを入れる。

「ラーメンカフェだからだ」

そして冷静に返した嵐さん。

「どう考えてもおかしいだろッ!なんでラーメンにコーヒーが出てるんだよ!教えはどうなってんだ教えは!まさか嵐のおっさんも」

「落ち着け雷神」

なにやら雷神が危険なネタに走りそうになったので止めた。

まあでも、味は確かだし、この二人がこの店を決めたことだから俺達になにか言う権利はない。

「まあまあ、味は美味しいわよ、この人の作るラーメンは最高なんだから!」

「そりゃ、そうだけどさ~」

雷神は伊吹さんになだめられながら、結局ラーメンを食べることにした。

ずるずるとすすって食べ始め、俺もなんとか食べることにした。

このどこのラーメン屋からも想像できない絶妙な濃い味。

あと少し、濃くしたら濃すぎて人を選びそうだが。

この境目を見えているかのような調整が素晴らしい。

「美味い・・・どっちも美味いのがこの店凄いと思う」

俺はそのまま思わず感想を述べていた。

「ふふっ、ありがとう」

伊吹さんもお礼を言っていた、嵐さんはうんうんとうなづいてたが。

内心嬉しかったんだろうか。

「そういえば、ライブっていえば・・・吹雪ちゃんとはもうやらないの?」

伊吹さんが聞いてきた一言に、少し深刻そうに答えてしまう俺。

「それなんですけど・・・アイツの行方知ってる人が今いなくて、連絡先も変わったみたいで、知ってるの真白だけなんですよ、でも真白の持ってる連絡先も途絶えたみたいで」

「あらら、相変わらずね」

母親が認めるくらい吹雪は相当難しい性格しているのだろうか。

昔から結構、人を遠ざける癖があったが、ここまで激しく遠ざけられたのは初めてだ。

「居場所も連絡先も知ってるけど・・・教えようか?」

と、ここで伊吹さんが提案してきた。

だが、俺はこう答える。

「それは、遠慮しておきます」

「えっ?いいのかよ!」

雷神が俺の答えに思わずびっくりしてしまう。

俺はそのまま、会話をつづけた。

「吹雪には音楽で伝える、雷神真白とはこうして会ってまだ、言葉伝えられるかもしれない、けど・・・吹雪はずっと遠くにいる気がする、場所も心も」

「・・・そうね、少なくとも私や雷神くんがどうこうできる問題ではないわね」

「だから、まずは聴かせるんです、俺の・・・俺たちの魂の叫びを」

仕事で忙しいなら、それでもかまわない。

音楽をやめてしまったのなら、それも別にいい。

それでも、俺はお前たちを必要としている。

お前たちの気持ちを押しのけるようで申し訳ないけど。

でも、俺は帰って来たんだって。

ここに、音楽の世界に・・・ッ!

「・・・昔と変わらないな・・・お前は」

「雷神?」

雷神はしんみりとした顔で笑っているのに悲し気な顔していた。

「俺にはお前の目指す道が眩しすぎるぜ、時々お前の心に嫉妬しちまうことがあるくらいに、お前はあまりにもかっこよすぎる」

「俺は、そうは思わないけどな・・・」

「お前が自分のことに興味がなさすぎるだけだ、自分のことくらいしっかり愛してやれ、他人から愛されなくなった時、愛してくれるのは自分だけだ」

「雷神・・・」

その言葉はなにか誰かに向けて言っているような。

そんな言葉だった。

でも、雷神じゃない、アイツは愛してくれる家族だって友達もいる。

雷神は誰を思ってその言葉を言ったんだろう。

「頼むから、アイツみたいに自分に嘘ついたり、大切にしない生き方はしてくれるなよ、それで怒る人間は数えきれないのだから」

「あ、ああ」

そう言ったあと、静かに立ち上がり、食べ終わったラーメンの器とコーヒーカップをカウンタ―に乗せた。

「ごちそうさま、美味しかったぜ」

お代をスッと置いて帰り、このラーメンカフェの扉を開けて出ていこうとした時。

雷神は少し立ち止まり、言葉を発した。

「人助、少し待っててくれ」

「えっ?」

そういわれた俺に振り向いてこう言った。

「俺は必ず戻る、理由は言えないが、今はまだ戻れないんだ、決着がついたら・・・必ず戻るから、待っててくれ」

その、暗い目の中にどこか覚悟を決めていたような気持ち。

俺は、彼にキリッとした表情で返した。

「・・・ああ、待ってるぜ」

そういうと雷神は静かに微笑み「ありがとう」と言ってこの場を後にした。

お前が今、何をしているのかは聞かない、けれども。

お前は帰ってくると言った。

だから、俺は待つぞ、何年でも、何か月でも、何日でも。

お前が戻って来るその日まで。

「私、貴方たちのやる音楽が好きよ」

「のえ」

突然伊吹さんに褒められた。

伊吹さんの言葉はまだ続いた。

「上手いとか下手とかじゃないの、みんな好きなように弾いて、好きなように音を作っている、自由で、暖かくて、幸せそうで、とても楽器が喜んでいる、聞いていると心と耳がポカポカしてくる、優しさの塊のようなチーム」

「・・・そんな大そうなもんじゃ」

「みんな貴方に惹かれてやってくるのね、人助君は虹のような存在だもの」

伊吹さんの褒めが止まらず、俺はなんだか恥ずかしくなってしまう。

「そ、それほどでもないですよ・・・」

「また、来てね、そして、またみんな集まれるといいわね」

伊吹さんのその言葉に恥ずかしい気持ちを押し殺し、精一杯の気持ちを伝えた。

「はい!俺は必ずまたみんなと世界を目指します!」

「ふふっ・・・期待してる!」

やはり素敵な笑顔でほほ笑む伊吹さんに俺はお辞儀をして。

お金を置いて、この場を後にしようとした。

「坊主」

「んえ?」

と、去ろうとした時、言葉をかけてきた嵐さん。

「なんでしょう・・・?」

俺が振り向いたら握りしめた片手を差し出してきた。

「手を出しな」

俺は言われた通り手を出すと、嵐さんの手からおつりが出て来た。

そういえば、そうか・・・。

「おつり・・・あ、でも雷神」

「いい、やつは言っても受け取らん」

慌てて言った俺に嵐さんはそう言った。

「なんでわかるんですか?」

俺は思わず不思議と思ったので聞いた。

嵐さんはどこかわかっている感じ背を向けてカウンターに戻りながら言った。

「なんとなくだ」

「は、はあ・・・」

その答えにクスクス笑っていた伊吹さん。

俺にはどうもわからなかったが、少し考えた後。

俺もこのラーメンカフェを後にした。


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