第2話【ここからだ、新たな道は】
お詫び
現在、第一章の再構成が決まって書き直しを初めています。
それゆえに2章の内容に旧一章と食い違いが発生してしまいますが。
きちんと新しく更新される一章と同じになるようになりますのでご安心ください。
長くなりましたが、二章は新一章に合わせた話になりますので
少し、話が繋がっていませんが、ご了承ください。
自転車を急いで走らせいつもの仕事場へ向かう。
だいたい遅刻しそうになると俺はいつも体に無理をさせて超特急で走る。
一様、赤信号とかは守るけど。
間に合うかどうか不安になるとちょっとイライラしてしまう時もあるかな。
割合、しょうもない男かもしれない。
俺は22歳の時大学を卒業し、23の今もこの薬局【ムイセス】で働いている。
一年目の時もよく遅刻も休みも多かった俺を採用してくれたこの会社と。
面接のときの人事部の岡野さんと中島さんには感謝だ。
今でも俺のことで問題になっていないか、不安だ。
そんなことを思いながら着いたと同時に勢いよくブレーキをかけて自転車を止めて店に走っていた時に大きく叱るような声が聞こえた。
「遅いッ!ダッシュ!」
「はいッッ!!」
俺は声に言われるまま駆け足で事務所にむかった。
この叱ってくれた存在こそ、俺のことをどんな時でも対応を変えなかった上村さんだ。
メガネとグラボブレイヤーみたいな髪型が特徴的だ。
このムイセスの人達は全体的に優しい人ばかりだが、上村さんはいつも厳しい。
ただ、個人的にいいバランスだとは思っている。
「人助君!今日も間は合ったね!嬉しいよ!」
「あ、翳井店長」
緑のエプロンをかけて、準備を整えている時優しい声が俺に話しかける。
なぜならこの店長がものすごく優しすぎるからだ。
このムイセスのて店長、翳井店長だ。
お客様のことを第一に考えることはもちろん、このムイセスの良い雰囲気を取り持つ柱。
翳井店長が太陽なら、上村さん月、だからこの二人のバランスは凄く良い。
この暖かい職場にたった一度で巡り合えたことに深く感謝している。
さて、支度を終えて今日の仕事に取り掛かっていると翳井店長が話しかけて来た。
「人助君、なんか最近音楽流行ってるらしいね!」
ニコニコした顔でこちらに声をかけて来た。
「ええ、なんか昨日も凄い盛り上がっていたってなんかSNSで見ましたよ」
俺はそれに対して少し明るい声で返した。
「なんかこう、若者の間で流行ってるアレ!なんだっけ、メカバース!」
「店長、メタバースです」
「そうそう!そのメタ・バース!」
店長は英語が好きだ、たぶんかっこいいからだ。
ものすごくわかる。
ただ、イントネーションがなんとなく気になる。
気になるけど突っ込んだらいけない気がした。
「仮想空間でコミニケションとるのがやっとだったのが今や仮想空間で好きなことできますからね、ライブは当然としてこれからの世の中はバーチャルがもう一つの地球になるのは遠くないでしょう」
「おお、詳しいね~、好きなんだね!」
「恐縮です」
俺も使い方があっているかわからない言葉を使う癖がある。
かっこいいからだ。
わかれ。
「でも、あれだね、今日の人助君はなんだかとても嬉しそうだよ」
「え・・・俺がですか?」
嬉しそう・・・店長は常に嬉しそうで明るそうだが。
そんな店長にそういわれるくらい、今の俺は本当に明るいのか?
いつもはみんなに心配かけたくないから無理やり明るさを作っていたが。
それがもう、作り物じゃないってことなのか・・・?
「なにか、心の底から嬉しいことでもあったのかい?」
お酒の缶を陳列させながら、俺は店長にフッと笑い答えた。
「・・・会えないと思っていた人に・・・会えたことですかね」
かっこつけて静かに語った俺に店長は大笑いで言った。
「はははッ!カッコいいじゃない!」
「かっこつかないのにかっこつけてもしょうがないでしょう!」
「ぬおッ!?」
突然、ちょっと強めの声に驚いた。
振り向くと上村さんが少ししかめっ面していたのだった。
「店長、休憩でもないのに話すのは困りますよ」
「あー、ごめんごめん、ついね!気を付けるよ~」
そう言って軽々足を運ばせてこの場を後にした。
店長、誰が相手でもあのキャラなんだよな・・・。
「人助君、あと30分で終わるようにね」
「わかりましたッ!」
思わず大きな声でプレッシャーを感じながら背筋をピンッと伸ばしてしまった。
上村さんはそう言ってこの場を後にした。
ストイックかつ軍曹みたいな人なんだよな。
ただ、そういうクールなところは凄い憧れるけど。
さあ、ぼやぼやしていたら30分はすぐだ。気合をいれてかかるぞ。
俺は長袖の腕をまくって声に出して気合を入れる。
「うしッ!」
これが俺の職場だ、ここで朝9時から夕方16時まで働いている。
基本やることは品出しが主だが、わかる場所の品に案内することもある。
みんなほど大したことはやっていないのに、帰ってきたら疲れて寝てしまう。
働いた日、帰ったら作業するぞと家についても。
結局ベッドに寝そべって、そのまま寝てしまう。
帰る時は元気に意気込むのに、なんで家に着いたらあんなに気がぬけてしまうのか。
不思議だ、きっと創作をするやつあるあるだと信じたい。
そんなくだらないことを考えつつ作業をこなしていると気が付いたらもう終わり。
仕事は割合同じことの繰り返しだが。
俺は、作業しながら別のことを考えてやっているから。
あんまり同じ作業が苦にならない。
勤怠を押して、急いで家に帰る。
帰りの自転車はそんなに急いでないが、早く帰って作業するぞという気持ちで。
夕方の風に吹かれながら、ペダルを回し、家を向かうのだった。
仕事場に向かった時と違って、急いでブレーキをかけず、ゆっくりと家に自転車を止めた。
家の扉を開けて、疲れた体を玄関へ、そして靴を脱いで上がって。
「ただいま」
そう言った瞬間、ドッと肩の力が抜けた。
やっぱり、この実家の様な安心感はどうしようもないな。
※実家です。
「ただいま・・・か」
何気ないこのセリフはおかえりが返しだよな。
だけど、この家にもうただいまなんて言ってくれるヤツはいない。
小説家の親父がいたが、今はここにはいない。
小学生が旅する物語を書いているヤツはもっと現地の気持を知るべく。
旅する小説家になった。
今や、フューチャー文庫を代表する作家だよ。
虹橋 巧、奴もまた多才の天才だったな。
姉も福祉施設の近くに住むべくここを離れた。
母親は・・・もういない。
音楽家として天才的だった幻想の音楽家だった。
事故に巻き込まれてなければ、今も家族が離れ離れになることもなかったんだろうか。
「・・・考えても仕方がないか」
今更、こんなこと考えてまた元の暗い生活に戻ることは許されない。
あの日、退路は断った。
俺が今やるべきことは、たった一つ。
変に気合が入った俺は、部屋に戻りゴーグルをかけてパソコンを起動した。
「ログイン開始ッ!」
暗い画面が一転、【Now Loading】の文字が目の前に表示され。
だんだんと粒子のような緑色の優しい光が場面を展開する。
気が付けばまた下は何本の線が重なり広がる。
この殺風景極まりないマイムールこそ、俺の電脳空間。
そして、ログインしてすぐにぶかふがのアームカバーを振っている女の子。
「あ、人助!」
緑色のツインテールにロングヘアー。
彼女は死んだ幼馴染、翠歌の魂が入った電脳世界の住人。
と、今は言うべきだろう。
新たな名前は【Green Angel】。
俺はまた、この音楽の世界に帰ることにした。
この前のライブは頑張ったし、ここからまた頑張れば。
いつか、今度こそ、翠歌を世界へ連れていける!
「見て見て人助!この前のライブでチャンネル登録者数たくさん!」
「本当か!?」
「253人も!」
・・・、俺たちの次回作にご期待ください。
俺はなにか感動的なBGMが流れて話していたこの瞬間。
ぶつ切りされたかのような衝撃が走った。
「翠歌、やったな」
「うん!」
ただ、ファンは多ければいいわけじゃない。
大切なのはこのファンを大切にしていくこと。
昔凄かったから今も凄いわけじゃない。
始めるんだ、新たに始まる、俺たちの夢を。




