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電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
第二章【狂奏のピアニスト】
23/48

第1話【あの時の君に俺はなんと言ったか】

お詫び

第二章二話でも書いた通り、現在一章の書き直しを決め

二章は現在公開されている一章とはつながらない話になっています。

すこしややこしくはなりますが

ご了承ください。

毎日、俺に演奏を聞かせてくれ。

俺は、好きな音を弾いてくれる奴によく言っていた言葉だ。

そう、たとえば五歳だった時。

隣の家の窓から聞こえた素敵なピアノの音。

とても楽し気で、優しい指使い。

あれが、俺と翠歌の音楽道を開いたきっかけだった。

小学校の音楽室を使っていたこともあったな。

でも、ピアノだけは途中で、アイツの音以外を好むようになってしまった。

不思議だった、なにもかも完璧に演奏できるアイツ以外の音を好んだのた。

それは、ある日、帰りが遅くなった夕方の小学校だった。


「帰りの車、遅いなあ・・・」

一人の少女は、夕焼けに照らされる薄暗い小学校の窓から夕焼けを見た。

彼女は自分の机を離れて、一階から二階へとかけ上がっていく。

すると彼女は、自分よりも大きなピアノの椅子に座り、音を静かに奏でた。

タッターン・・・トーン・・・タタタトトーン。

夕方の小学校の校舎に響く、夜を感じさせる優しいピアノの音が聞こえる。

俺はその音につられて階段を上がっていく。

不思議だった、この音は俺の好きな曲【月の光】だったから。

最初は暖かく優しい音色が曲をもっと遠くへ響かせるために強く、冷たい水を心にしみ込ませるような不思議な曲だった。

あんまりそういう曲は聞かなかったが、俺は月の光を狂ったようにずっと聞いていた。

聞いていたって言っても、音楽を一人で買えるような年じゃなかったからな。

聞かせてもらっていたんだ、翠歌に。

でも、この音はなにか違う。

アイツと奏でる月の光となにもかもが。

このピアノがなにか言っているような気がした。

たとえるなら「たのしい」と言っているような。

俺は音楽はわからない、楽器も知らない、だからなんとなく。

俺は、奥底でしかないけど。

次、翠歌のピアノを聞いたら、俺は満足できないかもしれない。

それくらい、このピアノは耳に残ってしまう。

上がりきった階段の先にすぐにあった音楽室を除いた先にいたのは。

綺麗な白髪とウェーブがかかって、白いゴスロリを着こなしていた。

真白 真希、当時小学一年生だった、彼女の演奏だった。

「・・・ッ!?」

演奏が終わって、こちらに気づいた真白。

「お前、すげぇな!そんな演奏できるなんてさ!」

思わず感動して拍手までして、真白に近づく。

そして思いのままに、感想を述べて伝えたが・・・。

「なにが目的なの!?」

「あえ・・・」

机の上から俺を睨み、おびえて震える瞳。

「私に優しくする人は私の何かを狙っているんでしょ、お金?それとも体!?」

最後の発言に若干抵抗して頬を赤らめている。

ていうか、今考えると小学一年生の発言じゃねぇな。

「なにも狙ってないよ」

「嘘!私に話しかける人はみんな嘘つきだ!」

「・・・そうなのか」

その時の真白は、とても寂しそうなお嬢様だった。

誰も信じられない、誰も信用できない。

ただ一つ、このピアノと家族だけが、彼女にとって安らぎなんではないだろうか。

「お父さんが言ってた、音と家族だけは信じろ、音は嘘をつかない、家族も嘘をつかない、でも赤の他人は平気でうそをつく、自分のことしか考えてないから!」

「頭良いんだな、お前、一年目でそんだけ教え込まれてたら、犯罪は平気そうか・・・最も、真白財閥ならなおのこと誰も手を出さないけどな」

怒りをあらわに家族から学んだことを次から次へと言葉にだす真白。

俺はその不安をよそに、彼女の隣に座った。

「な、なによお前!」

「聞いてくれよ、俺の音」

「えっ・・・」

俺は真っ赤に怒る真白に、優しく言った。

そして俺はピアノに触れて、鍵盤をたたいた・・・。

ジャ・ビ・ド・・ゴッゴッ

「・・・あれ、上手くいかねぇな」

「・・・」

真白が怪しい目でこちらを見て来た。

まずい、このままだと痛い発言をしてきた痛い人だと思われる。

「うおおおおッ!」

でゅらどらどらどどど!

・・・が、ダメッ!

やはり弾いたことのない、ピアノを弾けるはずがないか。

「すまん、ピアノ弾けんわ」

カッコつけて勢いのままピアノを弾こうとしたが全くダメだった。

俺は、頭を片手でかきむしって申し訳ない気持ちを精一杯込めて謝った。

「・・・フフッ」

「・・・?」

すると、彼女を見た時、真白はとっても嬉しそうに微笑んでいた。

「アハハッ!おかしい人・・・ッ!」

「やっぱりぃ?」

俺は予想通りの答えに自分にがっかりした。

でも、真白は笑いすぎて出て来た涙を自分で拭って俺に告げた。

「でも、素敵な人・・・」

「は?どこが?」

「カッコつかないくせにカッコけて、できもしないのに私に証明しようとする無謀な勇気」

「・・・それが俺だよ」

最初に見せた不安そうな顔、そして次に見せたのは睨み怒る君。

そして今は、月の光に照らされる笑顔の微笑み。

「まるで、絵本の王子様ね、アナタ」

そんな君に椅子を下りて、背中を向けて俺は言ったんだ。

「俺、親父が小説家なんだ、母さんは絵を描いてんだ」

「まあ、素敵な家族ね!」

家族の話を聞いて嬉しそうに両手を合わせて喜ぶ真白。

「姉ちゃんもいてさ、なにかあったらめっちゃ心配してくれてさ、親父も他人にあんなに冷たいけど、心の底じゃ人の何倍も他人のこと思っててさ、母さんもそうなんだ、母さんいつでも優しいけど」

「・・・いいな、いつも一緒なの?」

その言葉に俺は少し冷たげに返した。

「いつかは離れる」

「えっ?」

「家族に優しくしてもらって、仲の良い友達に巡り合えて、こんな心を揺さぶる素敵な音を奏でてくれる人に出会えて・・・俺、死ぬとき絶対後悔ねぇんだ」

「そんな・・・次の人生は・・・」

「なくてもいいよ、それがきっと、いい、絶対にもうこの家族みたいな生活はできない、絶対にもうアイツの音を聞けない」

俺は次から次へと出てくる小学生らしからぬ言葉を真白に言い続けた。

それはあまりにも覚悟の決まっていた決意。

それだけ、もう小学生の俺にとって満足だった。

「一つ違えば、俺は影しかしらない人生があったかもしれないんだ、数億の可能性からこんな人生を最初から味合わせてくれた・・・神様にはもう何も望まねぇよ」

「だから・・・もうなにも思い残すことはないと?」

また悲しそうな目で俺を見てくる真白に俺は迷いのない一言を告げた。

「ああ、俺はこの世界の神に感謝してる」

「どうか、お考え直しくたせさいませ!」

そう言った後、真白は涙を流して俺にとびついた抱きついた。

「なにすんだ!俺は別に今は・・・」

「嘘ですわ!アナタ今からでももうこんな世界に悔いはないという感じでこの世を去ろうとしているような気がしますわ!」

「とってつけたかのようにですわますわ言うな!」

馬乗りになってこいつをどかすことができない・・・。

下手に動けばコイツを傷つけてしまう。

そんな俺をよそに真白は涙をぽとぽと俺にこぼして言った。

「私・・・なんだってしますわ、アナタのような方に、私生きてほしい!だから、おねがい、私にできることがあるならなんでも言ってください!」

真白のその言葉に俺は答えた。

「じゃあ・・・」


ジリリリリリッッッ!!


その時、大きな目覚ましのアラームの音が部屋中に鳴り響いた。

「んえッ!」

クッソねぼけた声が思わず口から出てしまい。

勝手に不貞腐れながら頭をかいてスマホを取る。

「んだよ・・・気になってもう一度ねたくなるじゃねぇか・・・」

と、時間を確認してみたら・・・。

「ンゴァァァァッ!あと二十分しかねぇッ!そんなのってないよッ!」

慌てて布団をフッ飛ばして、着替えて職場に向かう。

寝ぼけて気づいていなかったが今日は出勤日だった。

慌てていた中でも心の中ではもやもやしていたような気がした。

あの時、真白はなんて言ったのか。


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