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電脳世界に死ンドル  作者: 幻想卿ユバール
プロトストーリー
20/48

第20話【天から降りて来た緑色の天使】

「翠歌!?なにをするんだ!?」

「歌の文句は・・・歌で黙らせる!あっちの色はこっちの色で染め返す!」

ステージへ勢いよく現れた翠歌。


「みなさん!大変お待たせしてすいません!」

会場がどよめき、不安の声が広がっていた時だった。

一斉に黙り、翠歌に注目していた。

「本日来る予定だったミソラさんですが、残念ながら急な予定が入り来ることが敵わなくなりました!」

『なんだって・・・』

『それじゃあ、いくら待っても来ないんじゃ意味ねぇじゃん!!』

『時間を返せよ!』

いっきに暴力的な声が広がるライブ会場。

俺は心臓がバクバクしながら、見守るしかない。

真白も怖がる思いを殺して必死に見守る。

「・・・翠歌先輩」

それでもアイツの声は一歩も引くことはない。

恐れない、何も恐怖しない。

アイツは昔から本番に強かった。

「みなさんにどうか、謝罪したい、ですので、私の・・・私たちの復活の音色を聞いてください!」

すると、指を鳴らして突然現れたグランドピアノの前に座って演奏を始める翠歌。

『・・・即興演奏!?』

聞いたこともないピアノの音楽。

いや、だがこの音はどこかで・・・。

「(思い出した、5歳のころ、アイツの家から聞こえて来た音楽だ!?)」

そうだ、アイツが昔からピアノ才能に長けていたことを知った俺は。

アイツに、俺の作った譜面を渡したんだ。

そんな音をいつまでも覚えてくれていたアイツは、小学校のころ、昼休みとかにも音楽室から鳴らしていたの・・・。

「翠歌先輩・・・すごい・・・観客が減らない・・それどころか・・・増えてる」

あんなにうるさかった声がたった数秒で沈黙するほどの演奏力。

やっぱお前はすげぇよ・・・ッ!

だが、この演奏はそれだけじゃないんだろ。

この演奏は時間稼ぎだ、いくら演奏してもまだ客の心は満たされない。

だから、この音で呼び戻すんだろ?

あの二人を!

「(どうか・・・届いて、この思い、私と人助の思い・・・届いて!)」

翠歌は最初は心の中でしか思っていなかったのに。

だんだん、曲が終わるにつれて、口に出して言ってた。

「届け・・・届け・・・届けェェェェェッ!」

曲の終わりとともに静かになった会場。

沈黙、静かな沈黙、だが、どうしていいかわからないだけかもしれない。

怒りかそれとも感動か。

「届いたぜ」

『?!』

ライブステージに現れた金髪の真ん中分け目・・・この黒いライダースジャケットと子の声・・・ッ!

「・・・ZIN!!」

「ZIN先輩!?」

俺と真白は驚きのあまり、嬉しさで声を大きく上げてしまった。

「ZIN君・・・?ZIN君・・・なの?」

「ああ、お前らの魂の叫び・・・熱い歌に・・・俺は目覚めたぜ」

「・・・嘘みたいッ!!」

その、強気な性格な裏に実は不安だったんだろう。

気が抜けたように涙を流し始める翠歌。

真白も二人のいるステージへ近寄った。

「ZIN先輩ッ!・・・おかえりなさいぃぃうぁぁ・・・」

「おいおい・・・」

嬉しさと同時にまた泣きじゃくる真白。

俺も、ゆっくり歩きだしてZINに声をかけた。

「・・・おかえり、相棒」

「ただいま、戦友」

2人でキリっと見つめあい、お互い熱い確認をした。

間違いない、こいつはZIN!

ブォォォォォンッッ!

「なんだ!?」

会場の後ろから聞こえてくる謎のエンジン音。

黒いバイクの様だが・・・ッ!?

ブゥゥンッ!

バイクは飛び上がり、このステージへ突っ込んできた!

ダァンッ!

急ブレーキをかけてAKI〇さながらのパフォーマンスを見せる。

なんだと思ったがその見覚えのある髪の色・・・。

「・・・その紫色から青、水色と変わるグラデーションの髪色はお前だろ、HYO」

「えっ?」

煙で見えてこなかったが、ZINが言い当てる同時に驚く真白。

そして、煙が晴れたその先に見えた姿は。

「伊達に片思いしてますね、ZIN」

ZINの言っていた通り、HYOだった。

「お前・・・ッ!どうしてここに来たの!?」

真白が涙を流し続け、HYOの下へと近づく。

するとHYOはバイクから降りて、こちらに近づいた。

「馬鹿な連中がドラムもなしに生演奏するって感じに盛り上がってたんで、仕方がなく来てやったんですよ」

冷たく、でもどこか優しいような言葉使い。

ああ、お前なんだな、吹雪。

「素直じゃねぇな・・・お前は」

ZINは昔みたいに両腕を頭に組んでおちょくるような発言をかます。

「馬鹿な人達ほど素直じゃないですよ、私は」

それに対して、強くあたるようにキッと睨み告げた。

ZINは余裕そうに言い返した。

「好きだぜ、そういうところ」

するとHYOはとても冷たそうな声で言う。

「嫌いです、私はあなたが」

夢にまで見た、この二人まで帰って来た。

ああ、クッソ・・・熱くなるじゃねぇか。

なんなんだよ、俺の人生は呪われていたんじゃねぇのかよ。

「で、でも・・・お前楽器は?ドラムどこにあんのよ?」

真白が少し冷静になってHYOに聞いた。

「ここに、あるじゃない」

するとHYOはバイクのハンドルについているスイッチを押すと。

バイクがスチームを上げて変形を始めた。

前のタイヤは2つのシンバルと大きなドラムが

乗るところの真ん中から中くらいのドラム2つが。

その後ろについていたドラム、下のタイヤにシンバルが一つとドラム。

バイクに全部・・・持ってきていたのか。

「なんてやつだよ、お前」

「バーチャルならなんでも可能にする、ここはそういう世界でしょ?」

HYOはにやりと笑い、俺に返す。

変わっていないな、みんな。

「・・・それで、どうするの人助」

「えっ?」

翠歌がとても嬉しそうにこちらに聞いてきた。

「みんな、私たちの歌を聞きたそうだけど?」

観客のほうへ向いてみたら、そこには・・・。

『すげぇ!伝説りメンバーがここにいるぜ!』

『完全に復活じゃないか!』

『聞かせてくれよ!』

怒りは完全に静まり、みんな・・・期待の眼と声をしている。

「・・・だったら聞かせてやろうぜ」

「俺たちの最高のライブを!」

『おおー!』

全員に即興で作り上げた歌詞・譜面を渡して。

翠歌が前に立ってマイクを取って告げる。

「皆さん、言いたいことは山ほどあると思います」

「ですが、これを聞いて、今日のことは全部なかったことにしてください!」

【平和を諦めない者達】ッ!

定位置につかせ、始まりの合図をドラムがたたいて知らせる!

「1、2・・・1、2、3、4!」
















争い憎しみ合い戦う 人達

くだらないことでぶつかりあう 人達。

なにかを求めてる

なにかを欲する

なにかに縛られている


喧嘩ばかりしないで 人達

こんなに無意味なことに意味が  あるのかな

私達はこんなにも 仲がいいのにね


戦争をやめない 大人たちは

今日も関係ない人を巻き込んでいる


辛いよ 痛いの 何もかもが

戦慄してしまうくらい クラクラ痺れちゃう


私達は 平和を諦めない 最後まで

全力で 叫ぶんだ 無意味と告げるために

教えてくれ その行動に 意味はあるのかな

ないなら やめてほしいんだ


命を奪うことや 傷つけることに

心のない兵士達が 今日も鉛玉をぶち放す

悲しみや 絶望感と恐怖の 戦場が

人々達が 叫ぶんだ 死にたくはないと

教えてくれ その戦争に 意味はあるのかな

お前らのエゴなら 今すぐにやめてほしいかな


ただ平和を願う。







激しいドラム、感情のまま鳴り響くベース、綺麗で優しいキーボード、俺が響かせる魂のギター、そして・・・かっこよく決めた、最高の歌声。

「・・・ありがとうございました」

『ウォォォォォォォォォッ!!』


大きくな拍手、涙を流し感動する観客たち。

歓声はどこまでも広がる。

『すまねぇ・・・ッこんな俺たちのために・・・こんな最高のライブを!』

『最高だぜ!お前らァァ!』


その声に、精一杯の嬉しい気持ちを込めて翠歌が言った。

「ありがとう!みんなァァッ!!」

ワァァァァアッ!

再び大きな歓声と拍手の中でライブを幕を下ろした。

しばらくして、無事に終わった後。

舞台裏でみんなで話そうと思っていたが。

「吹雪のやつ、結局帰っていったな」

俺は少し残念そうに口を開いた。

ライブが終わった後、「それじゃあ、私はここまで」とだけ告げてここを去った。

風の様に現れて、風の様に消えていく。

「勝手に現れては勝手に消える!昔からこうなんですから!」

真白はものすごく不満そうだが、どこか嬉しそうにも聞こえる。

「ま、いいんじゃね、俺はそういうところが好きなんだよ」

ZINは相変わらずだった。

「みんな、ありがとう、今日はみんなのおかげでとっても楽しかった!」

翠歌がとても嬉しそうに俺達3人に微笑んだ。

「翠歌ちゃん、それは違うよ」

「えっ?」

ZINがクスっと笑い、口を開いた。

「俺はお前らに思い出させてもらったんだよ、好きな音楽をただがむしゃらにやって自分たちのやりたいことをたたきつける、熱い魂を・・・」

「・・・ZIN君!」

本当はお前だって最初から火がついていたんじゃないか?

ZIN、お前のベースは昔から何も変わってなかったぜ。

「吹雪はこれからどうなるかわかりませんけど、これからはZIN先輩も一緒にいれば安心ですね!」

真白が嬉しそうにこちら笑顔を振る舞う。

俺もそれに対して嬉しさを顔に表していたが・・・。

ZINは少し苦い顔をしていた。

「どうした、ZIN」

「すまん・・・まだ、戻れはしないんだ」

「・・・?」

ZINは悲し気に俺達に伝えた。

「・・・俺は今、インペリアルレコードに所属している」

「あのインペリアルレコードに!?」

「すごい!」

驚きのあまり俺と真白は大声でびっくりしてしまう。

「ああ、契約に縛られてな、一人で食っていくには申し分ない大金だった・・ただ」

「ただ?」

その言葉をつづける前に少し間があった。

再びZINから口が開くと怒りがこもっていそうな静な声だった。

「つまんねぇんだ、あそこ」

「・・・そうなのか?」

俺は不思議だった。

俺たちが夢見ているインペリアルレコードにいるZINはとても嬉しそうには見えなかった。

「ただ、俺の意思は決まったぜ、決着がついたらお前たちに合流する」

「いいのか?せっかくの・・・」

どこか名残惜しそうでも、そこにはふっきれたアイツの言葉あった。

「金より、やっぱ俺は友が好きだぜ」

「・・・最高じゃねぇか、お前」

ZINのその言葉に嘘は感じられなかった。

おれはその言葉を信じるために、背中を向けて去っていくZINに告げた。


「待ってるぜ!ZIN!」

その言葉に対して、ZINは後ろから手を振って答えた。



ZINが去った後、真白がふと「あっ」と声を出す。

「翠歌先輩は完全にここに帰ってきましたけど、これから何て呼びましょう」

「そのままじゃダメなのか?」

「まだ死人の名前をそのまま使うわけにはいかないじゃないですか・・・」

俺は困った顔をした、真白に少し考えこんでから。

良い名前が思いついたから、翠歌にそのまま伝えることにした。


「だったら・・・天から舞い降りた緑色のアイドル」


「【Green・Angel】でどうだ!」


翠歌に勢いよく伝えた後、翠歌はとても嬉しそうに目を開いて言った。


「最高だね!それ!」


end その名はグリーン・エンジェル




第一章その名はGreen Angel



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