第2話【サイバー・ファンタジア】
バーチャル。
あるいはメタバースと言ったほうがいいだろうか。
俺達の生きる世界ではもはやあたりまえとなった世界がある。
パソコンからネットを繋いで到達できる世界。
言うなればもう一つの地球だろうか。
【サイバー・ファンタジア】と人は呼ぶ。
人口はほぼ世界の人数と同じだ。
日本をはじめとした世界各地でこのサイバー・ファンタジアにアカウントを持つ。
近しい世界観は【O〇】あるいは【ロックマ〇】的な感じだろう。
おかげで退屈していない。
好きなアバターを作り、現実ではできなかったことをここでは可能とさせる。
まるで異世界に転生したかのような感覚でこのバーチャル世界に生きていける。
昔は動画配信サイトに動画を投稿するかのように。
歌ってみた、作ってみた、踊ってみたなどが主な活動だったが。
現在ではバーチャルゲーム実況も含めて大きく変わった。
中でも人工AIを起点とした新たな活動【AIプロデュース】は今なお発展途上だ。
自分で作ったAIに歌わせ踊らせるのはもちろん、人間の様にモデルになったり交流したりゲームしたりも様々だ。
とはいえこの活動自体は主流ではなくまだ本当に発見されたばかりの方法だ。
最近はまだ人間が魂となって活動する、バーチャルアイドルなんかが。
今もなお、活気にあふれている。
と言ってもだいたいは企業から選ばれた育て上げられた英兵だけだけどな。
個人勢が成果をあげたのはまだ聞いてはいない。
まあ、これからが勝負だろう。
さて、前置きが長くなったが。
このサイバー・ファンタジアにはある一つの祭りがある。
それはサイバー・ファンタジアのバーチャルアイドル最強を決める祭典。
【Virtual・Revolution-1】通称VR-1だ。
このVRは今は日本でしか開催されない祭りだが。
大手企業があっちこっちで提供しており、今やバーチャルアイドルの一つの目標。
ここで活躍した功績はより多くの道へと繋がり。
個人勢にとっても企業を通さずに唯一頂点へ登れる扉だ。
そんな祭りが今年でようやく5回目・・・この5回目には。
今、日本の音楽業界のトップと言われている【インペリアルレコード】がかかわっており。
優勝者はその会社との契約権が渡される。
この会社にかかわれば世界への切符もとったも同然。
インペリアルレコードの一人と言われるだけでどこでも起用してもらえるだろう。
それゆえに今回はかなりの参加人数がいるわけだが。
なにゆえそんな地獄の時期に俺は参加しようとしたわけか。
それは遠い過去、俺が音楽をやめた理由を話すことになる。