第19話【君が、凄い奴だからだよ】
「なんかの冗談だろ!?なんで今日の日に突然!?」
おもわず真白の肩をもってゆさゆさとしてしまう俺。
真白はそんな俺に思わず涙を流して、飛びついた。
真白は泣きながら抱きついて話した。
「・・・ッ!ミソラさん曰く・・・会社から唐突に仕事の連絡が入り、今日のこの時間にじゃないとダメだと・・・ッ!だから、どれだけミソラさんが行きたくても敵わないと・・・」
「んだよそれ・・・ッ!先に約束したのもこっちなのに、そっちの都合でアイドルいいようにつかいやがって!」
「だったら、それ世間の皆様に言う?」
怒りのあまり感情に流され頭に血が上っていた俺に後ろから問う翠歌。
「・・・これが初めてじゃないんだよ、あの会社はタレントを盾に使ってごまかしたり、炎上しても自分たちのせいじゃないと言ったり、無責任な大人なんだよ!エンタメを金儲けの道具としか思ってない悪の企業め、暴露してたたかれるのが当然なじゃないのか!?」
怒りの声を翠歌にぶつけて、それでも睨みをやめない翠歌は言った。
「君は、復讐の為この舞台を利用するのかい?」
「・・・ッ!?」
言われてハッとなってとっさに冷静になる。
感情のボルテージがマックスになっていた俺は、冷静じゃない考えをしていた。
「君がね、そういうことをする配信者なら止めないよ、それが君の仕事なのだから、で君は違う、真実を告げ続ける者は永遠にその道から逃れられなくなる、歌で人を笑顔にしたい君の夢はどこ?その先にあるの?」
「・・・」
沈黙する俺に、真白は翠歌に悲し気に泣きじゃぐり、言った。
「でも・・・この最悪の状況どうしますか?私たちは今は無名、残っているのは過去に少し有名だっただけのしょっぼい歌グループの名前だけ・・・、それに対して、これからみんなが期待しているのは今を輝かせるアイドル」
「そう、俺たちが歌ったことで、この後、俺たちが宣伝のためにアイツらを利用したと思われて炎上する、それを回避するにはこの事実を明確に証明しなくてはならない、だが、それは」
「・・・ミソラさんの・・・会社をまた死に近づける」
「敵と見られた音楽グループにでけぇ嫌がらせを受けたんだよ。アイドルはそうじゃないかもしれない、だがファンは好きな者の為に盲目になって自分たちの正義をかざすんだ、会社は知ってるんだよ、自分たちの行動の影響力のデカさをな、利用してんだ」
この事態に関係ないタレントは巻き込めない。
巻き込めば彼女たち以外にも被害がいくかもしれない。
なにより、真白家も黙ってないだろう。
だが、真実を濁せば、こちらが火だるまになる。
どうすればいい、お前はその目で何を語る。
翠歌・・・。
「今、私達がやるべきことじゃない、今何をするべきだと思う?」
今、何をするべきか。
真白と俺は沈黙の中か、互いに答えを出した。
「俺は、それとなくこのステージを終わらせるべきだと思う、俺達になるべく批判の飛んでこないようにな」
「私は・・・なんとか別のメンバーに頼めないか相談してみます、最も・・・ミソラさんや他の方に他愛はないですが・・・より炎上が強くなってしまいますが」
どちらも地獄の二択・・・。
これに対して、翠歌は俺達にフッと笑い答えた。
「じゃあ、私から提案なんだけど・・・新曲でもう一曲歌うのはどう?」
「・・・ッ!?」
翠歌ははったりでもなんでもなくその目は自信満々にかましていた。
こいつ、正気じゃねぇ。
「馬鹿なのかお前は!?メンバーはいねぇんだぞ!俺はギターは弾けるがそれでもまだ二人足りない!ドラムもベースもいないのにどうやって生で演奏するんだ!!」
「来るよ、ここに」
「ッ!?」
迷いのない瞳、まっすくでその視線に思わず目を背けたくなる熱い瞳。
なんてきれいなんだよ、お前の眼は真っすぐすぎるぜ・・・。
「君の音は、またみんなを呼んでくれる。あの音で、もし心の底にまだ奏でたいという気持ちがあれば、彼らの心に伝わる」
「・・・本当にそう思ってんのか」
俺は馬鹿げた感情論に渋い顔で涙が流れた。
翠歌は瞳を閉じて、キリっとした目で開き。
キメ顔で答えた。
「君がここに私を連れてきてくれたんだから」
ああ、心の周りにあった闇がわれてしまったようだ。
この天の光に、俺は何度心を打たれたのだろう。
足が崩れてその場地面に手をついてしまった。
「・・・お前は、いつもすげぇよ・・・どうして、そんなにすげぇやつなんだ」
すると翠歌がステージに戻りながら歩きだして、あと一歩でステージのところで止まり。
こちらに振り向いて言った。
「君が、凄い奴だからだよ」
そう言って、彼女は飛び上がりステージに戻っていくのだった。




