第17話【ライブの時間】
俺たちは現在、サイバー・ファンタジア最高の密度。
T区に来ていた。
そのライブ会場の舞台裏に。
「・・・いよいよだな」
俺は緊張のあまり汗をかく。
「緊張する?」
それをからかう翠歌。
「ああ、めっちゃ久々でな!」
それに対して無理してでも元気よく答えようとする俺。
「大丈夫ですよ、今回は実際に歌のは翠歌先輩だけです!」
ちょっと気を安らげさせようとする真白。
みんなじゃないが、みんなここにいる。
俺が歌わけでもないのに、俺が緊張する。
おかしいな、人ってやつは。
「翠歌、今日はお前に全部かかっている、いけるか?」
「大丈夫!この体もそろそろ馴染んできたところだから!」
余裕の笑顔と両腕をぐっと構えるポーズ。
大丈夫そうだな、お前は。
「そういえば、今日の人予想の何倍もいるよな」
「そりゃ当然ですよ、私達のファンもいますし、なにより今日は特別ステージもあるんですよ!」
「特別ステージ?」
「今回はインペリアルレコードの協力を得ようと思ったんですが、どこの子も今忙しくって・・・代わりなんですけど四天王の一角【I'mNo1.Project】とからあのアライブの一人、ミソラちゃんが来てくれることになったんですよ!」
あの、大手企業I'mNo1.Projectってだけでも驚きなのに、ミソラが!?。
俺は驚きのあまり開いた口が塞がらない。
「誰なの?その子?」
翠歌はどうやらピンと来てない様子。
それもそう、コイツが死んでから有名になった企業と女だから。
「ミソラちゃんは今もなお輝き続けるバーチャルアイドルのトップ・・・はインペリアルレコードがとってるんですが、実力だけなら全然インペリアルレコードの足元に及ばない凄い存在なんですよ!」
「へえ~!そんな子が今日ステージを?」
「おかげで私たちが先行、ミソラちゃんが後にライブをするという約束ですけどね、ミソラちゃんが言ったわけじゃないんですけど、あそこの所属タレントが良くても社内の社長とか悪いうわさけっこうありますからね~強情なんでしょうよ」
「真白」
「す、すいません」
真白がぺらぺらと語り、そのうち悪いことを言っていたので注意をした。
まあ、でも近年色々炎上騒動になりかけたことがあるからなんともいえない。
火のない所に煙は立たぬとも言う。
「まあ、でも俺達に協力してくれるし、ミュージシャンに悪い奴はいねぇよ」
「そうですね!」
真白がこれ以上あらぬ妄想をしないためにも一度不安を拭う。
こんな時に余計なことは考えられない、今は俺たちのライブに集中だ。
「さあ、時間だ、いくぞ!」
長かった凍り付いた時間。
それを溶かすために今、新たな道へと進む。




