第14話【この世に扱えない楽器はない】
「トランペット」
パララパッパララパパラ~。
軽快しかしてどこか楽し気な音。
「ギター」
ジャンジャンジャジャジャンジャーン!
いかつくそして体をしびれさせるロックな音。
「バイオリン」
キュールッルツルルルーン。
優しく時には切なさを心に伝える音。
「翠歌先輩・・・凄すぎです、どれも完璧じゃないですか!」
「さすがに衰えてるかなって思ったけど感覚は死んでなかったみたいね」
真白が思わず拍手し立ち上がるほどの完成度の高い翠歌の楽器の使いこなし。
流石はこの世に使えない楽器が存在しない女だ。
「通常管楽器は人によっては吹けないらしいが・・・お前の体はどうなってんだ」
「それは私自身もわからないからなんとも言えないかな」
だろうな、昔から謎の多い奴だとは思ったが。
こんなに多才そして、死後魂だけがここに戻ってきたこと。
なんというか、謎は深まるばかり。
「まあ、気にしても仕方がない、足りない楽器は全部翠歌がやってくれるってことでいいんだな?」
「うん、キーボードは真白ちゃんがいるしね!」
そう、ドラムとベースがいればよかったんだが、片方は連絡がつかなず、もう片方は大学を最後に連絡先が変わってしまった。
「真白、吹雪とは連絡はあいからわず?」
俺が問いかけると真白は渋い顔で答えた。
「ええ、アイツにも一様連絡しました、一度は繋がったんですが・・・」
「本当か!?」
と、最初こそとても喜ばしい情報だったが真白曰く。
『吹雪!?お前に話があるんだけど!』
『何年も連絡よこさなかった上に突然話ってなに?』
『先輩が音楽を始めたの、2週間後ライブするからドラムとして来なさい』
『お断りよ』
『んァッ!?』
『夢を追いかけることに疲れたのよ、ドラムもなんかつまんないし、もうやらない、夢ってのはね、痛い破片なのよ、握れば握るほど破片はどんどんでっかくなる、そんな痛くて仕方がないモノいつまでも握るほど私は馬鹿になれない』
『・・・ッ!この臆病者がッ!』
『それが普通の人よ、頭真っ白人間』
『キィィッ!!』
という具合で冷静に冷めた返しを食らった真白が熱くなりまともに会話にならず。
結局その後連絡がとれなくなってしまったらしい。
「ごめんなさい、先輩・・・」
「気にするな、アイツのドラムがないのは少々心細いが、こっちには翠歌がいる、アイツの音を聞いたら吹雪もまたやりたくなるんじゃないかな」
と、俺が気休め程度の言葉をかけていた時。
翠歌が嬉しそうに告げた。
「だったら、どこにいても届くように思いっきり演奏してあげなくっちゃね!」
「えっ?」
「天国から来た天使は、天からどんな場所にしても君と思いを繋いでくれるって」
翠歌がいつになく自信満々に言ってくる。
天国から来たやつの言葉は冗談に聞こえないね。
「それにこっちには虹の架け橋もいますしね!」
「真白ちゃん?」
緑歌の言葉につられて真白が元気を取り戻す。
「楽器の天使の翠歌先輩、人助先輩は虹橋じゃないですか、苗字が、だから先輩は私達の虹の架け橋なんですよ、天国からここに連れてきてくれた、虹の架け橋です」
「・・・素敵じゃん、それ」
緑歌が頬を赤らめて嬉しそうに微笑んだ。
俺も思わず、ちょっと照れくさくなり、頭をすこしかきむしった。
「天国から現世へつないだ虹の架け橋ね・・・悪くないよ、だったら次は全員を集める虹の架け橋になってやろうじゃん」
この言葉に2人は「うん!」と返事をもらった。
開催までに最高の音楽とパフォーマンスを作り。
最高の舞台にしたい、そう願うのだった。




