第1話【呪われた人生】
「俺の人生は呪われていた」
「俺は死神だった」
歌が好きだった。
歌詞を作ることが好きだった。
小学校も、中学校もずっと歌詞を作り続けていた。
高校に入っても同じだった。
だけど、俺の関わった歌姫はみんな死んだ。
一人は事故で。
もう一人は殺人。
最後は自殺だった。
俺の作った歌詞を歌ってくれた人はもうだけもいない。
俺は決めた。
もう歌詞を作らない。
誰とも組まない。
なにもしたくない。
なにもしなければ、なにも起こらない。
そう、悲しむことも、苦労することもない。
夢を見ることは、ただつらい現実を見ることでしかない。
そういう暗い考えが頭をよぎっていた時。
ふと、明るい光が差し込む。
「・・・朝か」
夢の中でもそういうことを考えていたらしい。
俺は常に闇の中にとらわれている。
可哀そうな人間だ。
目覚めて顔を洗うためにベットから出て一階へ階段を下りていく。
俺は今、社会人。
親とは離れて、親が残していった家に一人で暮らしている。
「先輩!今朝はよく眠れましたか?」
失礼、二人で暮らしているわけあって。
「ああ、とても快眠だった」
俺は息を吐くように嘘を吐いた。
今朝は嫌な夢を見た、そのせいでとても目覚めが悪い。
この子は【真白 真希】
真っ白な長いツインテールと碧眼が特徴てきな子で。
明るいピンク色のゴスロリがとても印象的だ。
まるで小説のようなお嬢様、それもそのはず。
真白家のご令嬢。
真白財閥は今や世界を支える柱。
本来ならばエリートコースを進む彼女とは俺とは無縁だが。
好き好んでここにいる。
自暴自棄になり私生活がままならない状態になった時。
彼女は掃除から食事までなんでもやってくれた。
「毎日申し訳ない、無関係の君にこんなことを」
「いいえ、先輩、他人だからこそ尽くしたいんじゃないですか」
「いつか私は先輩の家族になりたいので!」
自称ヤンデレストーカーを名乗る彼女はいつも俺の生活を支えてくれている。
俺としては彼女に頼る生活からそろそろ抜け出したいんだけどな。
だが、ニコニコと嬉しそうにしている彼女の善意をはねのけるわけにもいかず。
今の状況につい甘えてしまっている。
「そういえば、真白」
「なんですか先輩?」
真白はきょとんと不思議そうにこちらを見て聞き返す。
「例のモノが完成した」
俺は普段と変わらない覇気のない話し方でそう伝えると。
真白はとても嬉しそうに言った。
「え!?まさかついに・・・!?」
真白は椅子から飛び上がり目をキラキラさせてオーバーに喜ぶ。
俺は夢を諦め、もう音楽にはかかわらない様にしていた。
だが、俺はあることをきっかけにもう一度だけ。
ここに、戻って来ようと決めた。