#45.5~65-2-5
「.....いや、いくら魔王だからって、舞台上で無茶振りを入れてくるのはどうかと思うんだが」
ポカンとしている脚本家を除いて、妙に騒つき始める会場。この理不尽な状況を楽しみ出す現代の高校生の民度は、どうかしていると言わざるを得ない。
「無茶振りではないよ?伊折君のセリフが出た時点で、台本は完結したからね。ここからは行動に応じた釈明だったり、謝罪だったり、求愛行動だったりをしてもらうターンになっただけだよ」
「え?僕は劇中の発言の責任さえも取らないといけない文化圏に生きているの?大体誓ったのは勇者、しかも魔王相手にであって、僕と白渡の話ではないじゃん」
「それは違うよ。この劇中、誰も名乗っていないでしょ?さっきまで勝手に、都合上伊折君を”勇者”、私を”魔王”って呼んでただけ」
幾ら自分に贔屓しているとしても、こんなことが許されるなら世界の芸術と法秩序が崩壊してしまう。良い加減幕を閉じろというメッセージを込めて、司会席に目を向け...
「...先輩、答えてよ」
「...く、黒瀬さん?」
すると突然、温かい体温を感じると同時に、上半身が拘束される。目の前で倒れていたはずの楓が、僕を後ろから抱き締めていた。
「...魔王との戦いが終わったら、結婚してくれるんだったはずでしょ。もう戦いは終わったよ」
「ちょ、ちょっと待て。分かった。お前らグルだな?僕を辱めてどうするつもりだ。金は2000円しかないぞ」
痛い程の鼓動をどうにか無視しながら、抗議の声を上げる。それを見た白渡は、いつも通りの笑顔で、客席に向けて語り始めた。
「皆さん!この新色伊折という人間は、私からの告白をずっっとほったらかしにしたのに加え、後ろの少女、黒瀬楓からの熱烈なアプローチに対して、フラフラと交わし続けてきたたらし野郎です!」
「やっぱりあの人クズなんだー!!」
「白渡さんだけじゃないのかよー!!」
白渡のプロパガンダに流され、盛り上がる聴衆。白渡の本音は分からないが、外面上では想い人の株を下げているだけなような気がする。
「ということで、楓ちゃんと内密に相談して、この舞台上ではっきり決めさせようって決めたんです!」




