#45.5~65-2-2
「君、白渡さんの熱い抱擁の"演技"を引き出したよねぇ?ルックスはともかく、演者を活かす配役をするのも自分の役目だよぅ」
「嫌だし...もう少しこちらにも愛のある勧誘をしろよ」
将来対人トラブルで失脚しそうである。
「子供の話?伊折君ってそういう趣味なんだ」
「はぁ?何で変し.........아이かよ。誰が分かるかよ」
「別に何でもいいけど、愛が欲しいならまず輪に入らないとね。やってよ。他に入れたい人がいるなら入れればいいし」
いつもの笑顔で話す白渡を見て、違和感を覚える。明らかに脆過ぎる。
普通こいつが何かを要求する時、弱みを握ったり酷い理屈を用意したりして、強引に頷かせる作戦をとっていた。しかし、今回は白渡の感情しか主張するものが無い。論破王なら煽り散らかすだろう。
タイミングの為に、説得材料を作れなかった可能性はある。だが、白渡だ。流石にその気になれば、物語とか過去の話とかを持ち出す事ぐらい出来る筈。
「良いでしょ?伊折君、私への恩返しだと思ってさ」
ここで、名探偵新色の目が光る。
つまり、彼女の目的は劇団の誰かなのだ。誰を誘うかは本質的にはどうでも良くて、その相手とお近づきになる為の手伝いが欲しいのだ。で、偶々近くにおり、ついでに知り合いである僕に白羽の矢が立ったのだ。
感情的になってしまったのは、相手への想いのせいで頭が働かなくなったのだろう。さっきまでの過激なアピールは伏線で、多分何か上手いこと繋がればそういうメッセージとなるに違いない。最初に劇をするのを躊躇っていたのは、監督が頑固な人だと分かっていて、粘れば手伝いを入れられると踏んだ訳だ。内部工作は難しいしな。それか、主演だと色々不自由だからだろうか。
そうなると、別の奴に目を向けさせないといけない。残念ながら、僕には絶対に拒否するであろう後輩しか知人がいない以上、とりあえずたらい回しするか。
「分かった、お前の気持ちは伝わった。だがな、僕はそこまで時間を割けない。だから黒瀬とか...」
「...私が、どうしたの」
「......え、何でいるの」
ごたごたしていると、何故か黒瀬の姿。隣の教室のドアが開いており、恐らくそこにいたのだろう。
そういえば、今週帰りに彼女を見ていなかった。これまでもちょくちょくあったし、朝の様子を考慮しても、不思議な話では無いかもしれないが。
「学校で宿題とかしてるのか?」
「楓ちゃんは最近、私と秘密の会合をしてるんだよ。あ、そうだ。ちょっと来て」
2人が寄り、コソコソ話し出す。時々こちらを見ていて、恥ずかしい。




