#45.5~65-2-1
まとまりの無い議論と、唐突な手伝い命令。しかも、早く家に逃げようとした矢先に生じた腹痛により、バスに乗り遅れる。散々な金曜日となってしまった。
気晴らしに、学校を歩き回る。久々に聞く生徒のかけ声や楽器の音は凄まじく、遠い。
「ねぇ?お願いしますよぅ。君の美貌がどうしても必要なんだよぅ」
「嫌だよ。私の身体目当てだなんて」
すると、廊下で触れたくない会話をしている男女を見つける。女子の方は知り合いなのだが、知らないことにならないだろうか。
とりあえず向きを変え、立ち去ろうとする。経験上、こういうときは堂々と帰るべきだ。コソコソ帰るとバレる。
「伊折君?そんな足音を立てて、構ってほしいの?」
「......」
「逃がさないよ?」
急に身体が浮いたかと思うと、何故か離れた筈の男女の側にいる。そして女に抱えられている。夢のお姫様抱っこである。
「頼むよぅ。白渡さん、主演を引き受けてよぅ」
「え、役者の異常性は気にしろよ」
「そこまで勧誘するなら、こっちにも考えがあるよ。私が出る代わりに、主人公を憎たらしい伊折君にしてよ。演者にとって良い環境を作るのも仕事でしょ」
「嫌だよぅ。こんな棒に出来る訳無いよぅ。主演は白渡さんしか有り得ないよぅ」
男は僕の事を完全に無視するのかと思ったが、一応外見の評価はしていたようだ。僕は棒人間らしい。
「白渡、よく分からんけど僕は不適らしいぞ。交渉には別の奴を使え。それと、お前人を抱えるの上手いな」
「このまま抱きしめようか。そうすれば劇に出てくれる?」
「監督にやればいいじゃん」
「それセクハラだよ?」
暴れるわけにもいかず、どうにか足を着けようとすると、本当に抱きしめられる。男に見られてるのに、酷い。
「止めて下さいな...大体、目立つの嫌いじゃないだろ。主役やれよ」
「ただでさえ委員会で知らない人と絡むのに、どうして劇までやらなきゃいけないのさ」
拘束から抜け出し、彼女に向き直る。なるほど、知人と一緒じゃないのが嫌なのか。白渡の癖に可愛い理由だ。
なら、僕である必要はない。
「じゃあクラスメートとか誘ってくれ。僕は...」
「待ってくれよぅ!やはり君は必要だぁ!」




