#64
後夜祭の盛り上がりはなかなかのもので、いつ鼓膜が破れてもおかしくない程だった。
適当な運営の挨拶、大した景品の無いじゃんけん大会、評価の高かった展示や発表についての軽い紹介。彼らの様に楽しめないのは、単純に別の場所で見てるからだけではない。
誰かの間違いで進行の手伝いをしているが、注目のされ具合が尋常でない。これまでの程度なら何とかなった。だが、僕が人前に出る度に、少なくない人数から罵声が飛んでくるのは流石に痛い。
会場のテンションのせいもありそうだが、白渡関係の鬱憤が大きいのだろう。不満自体も良いエネルギー源なのだ。
「もっとも評価されなかった展示は...2年5組の瑠璃垣杏里さんによる、『収支報告書の例』です!」
「何よその紹介!いらないでしょ!」
まぁ、僕自身は楽しみに来ている訳ではない。いくらでも貶せば良いさ。
「伊折君、最近大人気じゃん。特に株が上がったのは今日だけど」
「お陰様でな。もう売りたいけど」
残念ながら、話をしに来る奴は増えない。というか、事の主犯格だろう白渡の平静振りにはもはや感動する。
「このままだと過激派から脅迫文が届きそうだから、助けてくれよ。隠れるための忍術とか」
「殿、手遅れでございますよ。忍者が嫌われるべきなのは行為だけであって、本人に目がつけられた時には処刑寸前なんですよ」
「どういう理屈だ」
要望も通らない。
「大体、伊折君はまだ罰ゲームを受けてないじゃん。隠れるなんて許さないよ」
「罰ゲーム?...どう考えてもここにいる事自体が罰ゲームだろ」
唐突に余計な事を思い出される。しかし、ここからさらに罰を加えようとするなんて、斬新な耐久テストでもしているのだろうか。
「"後夜祭で"処理するって言ったよね?要件は別だよ」
「え、これって僕の日本語力が足りてなかったのが...」
「皆さ〜ん!遂に最後のコーナーですよー!内容はもちろん、毎年恒例の大暴露大会で〜す!」
話を遮る様に、マイクに乗った声が響く。週刊誌ばりのモラルの無さを恐れつつ、今でもにこやかな白渡に呆れる。