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#62

 急に、そして再び盛り上がる会場。煽られてるのか野次られてるのか分からないが、とりあえず今日1番にうるさく、不可解な空間である。


 からかうには用意周到過ぎる。しかし、白渡が黒瀬を手伝い、僕との仲を取り持とうとしているとしたら訳が分からない。


 白渡の行動は常識なんかでは予測出来ない。黒瀬との関係性は今になっても分からない。だから、僕への告白紛いの言葉は嘘だったのかもしれないし、極端な話、全ての行為が今を想定したものだった可能性もある。


 だから、僕がこの状況を評したところで、きっと無駄な努力になるだけ。ただ、白渡を恨み、黒瀬に答えを出し、歪だと思うことしか出来ないし、そうせざるを得ない。


「ほら、逃げられなくしてあげたよ?楓ちゃん、"最後に"何か言ってあげな」


「......」


 憎たらしい笑顔を横に、こちらを見つめる後輩。一息吸うと、握られていた手はもう開かれていた。


「...共に苦難を乗り越えてくれる奴って、ふざけないでよ」


 いつかは話すことすら躊躇っていた場で、彼女は言葉を紡ぐ。


「...分かってるんでしょ。誰も私を気遣わないって知ってるから、捨てれないんでしょ」


「...知ってはない」


「...嘘。なら、どうして捨てないの。これまで色んな繋がりを切ってるのに」


 僕にとって例外である、白渡にはそう表現していた。黒瀬はそれに意味があると思っている。幼馴染の後輩だからではなく、自分が追いかけているからでもない。選択肢は僕にあると言っているのだ。


 黒瀬が勝手に自立する、そんな考えは、僕の脚色かもしれなかった。


「...もしかしたら、昔は選べたのかもしれないね。チェンバロを弾くって決めたときみたいに」


「今は、選んでないのか」


「...そうだよ。縋ってるの。心配しないでよ。真似だけじゃないから」


 観衆の困惑を他所に、会話らしきものを繰り広げる。隣の少女だけは笑っていて、歪だった。

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