#56
「3年2組紺迫柾、よろしくお願いします!」
あくまでも、高校の文化祭である。ネタ自体は笑いが起こしたり、感動させられる程度のものでは無かったりする。
「ピクミ...ではなく、コハクチョウのモノマネ!」
それでも観客の評価が上々なのは、雰囲気が良かったり、中途半端なのが滑稽だったり、"彼ら"が演者だからだったり...まぁ、ノリと勢いがあってこその文化祭なのだ。
「紺迫君、ありがとうございました!次は、1年6組、黒瀬楓さんの発表です」
そんな、理屈はどうでもいい舞台。イスがいくつあったって、だから何だって話である。
既に、黒瀬はステージの上にいた。よく見ると、側には白渡がいる。世間話でもしていたのだろうか。そんな間柄ではなかった気がするが。
「......」
「......」
感情の起伏が小さい幼馴染と、とにかくいつも笑顔な...友人?付き合いは長いが、2人が並んでいる姿を遠くから眺めた経験は多分無い。
「あー、あー、えっと、黒瀬さん。意気込みをお願いします」
「...えっと、その......」
「.....、.........?」
「.........」
似てる、のか?ふと、彼女達を見て疑問が浮かぶ。
僕の交友関係が狭いせいで、気付かなかったのかもしれない。決して外見がそっくりだとは言えないが、何を考えてるか分からない所はお互い様だ。
「.........て下さい」
正直、正反対にも思えた彼女達。やはり、灯台の下は暗いのだ。
「あれ?座ってるのになぁ。超鈍感系主人公?」
「...あまり、マイク握ってたくないんだけど」
静けさの中から、次第に騒めきが広がっている。異様な空気に気付き我に帰ると、ステージ上の彼女が僕を見ている。
久しぶりに受ける、黒瀬の真っ直ぐな目線。人前は苦手だろうに、彼女ははっきり、言葉を発した。
「先輩、来て下さい。突然ですけど...ステージに」




