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#54


 白渡は、学園祭を楽しんでいるのだろうか。当然彼女の気持ちは分からない。


 では、僕はどうなのか。こんな経験が無かったから、今の感情を"楽しい"と呼ぶのか分からない。


 でも、楽しくないとは言えなかった。乱暴に連れ回されているだけなのに、もしかして僕はマゾヒストなのだろうか。


「...お前、まだ買うの?」


 白渡の鞄には、大量の菓子と小物。他の奴らも買い溜めているのを見ると、下原の高校生は金持ちなのかもしれない。


「いや、伊折君がおかしいよ。いつ財布の紐を緩めるか、今でしょ!」

 

「寒さ以前に、伝わるかどうかもギリギリだぞ」


「でも、あの人はデート資金を稼ぐ為に家庭教師のバイトを始めたんだよ?やっぱり今しかないじゃん」


「知るか...」


 出典はwikiである。


「店で出るものならいいけど、手作り感があるものはなんか無理なんだよ」


「それは、楓ちゃんのせいだったり?」


「は?...まぁ、あいつも僕も料理は壊滅的だが」


「...へぇ、なるほどね」


 黒瀬の名が出たせいか、急激に鼓動が速まる。さっき腕を引かれたときに似た、でも、ちょっと違う様な、そんな感覚がする。


 恥ずかしいのか、気まずいのか、ただ驚いただけなのか。そんなことを気にしていて、彼女の違和感には意識が回らなかった。


「伊折君、外に行こっか。そろそろ昼ご飯の時間だよ」


「え、結局それは買わないのかよ...気まぐれな奴め」


 手に取っていたアクセサリーを戻し、僕を連れ出す白渡。彼女はいつもの笑顔のまま、呟く。


「気まぐれじゃないよ。ただ、自分勝手なだけなんだ」

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