#52
出歩けば人が邪魔で、教室や部室にいればサボりだと思われる。だから、去年の文化祭はしばらくここに隠れていた。
遊ぶ気は起きないし、個人的に"手作り"のものを食べたくないし、変なものに金を使いたくない。捻くれてるのではなく、正直にしているのだ。
「伊折君、出て来ないと写真撮って、怪奇現象集めてる雑誌に送り付けるよ?」
「......」
まぁ、今年は探してくる人がいるから、諦めざるを得ない。ドアを開け、廊下に出る。
「仕事は後夜祭までないだろ?静かに過ごさせてくれよ」
「...それは、駄目」
「...いや、流石にお前の発表は見に行くわ」
強い口調で言われ、少し怯みながら答える。
目は合わないし、結局今日に至るまでほとんど話をしなかったのだが、発表には来て欲しいらしい。やはりよく分からない少女である。
「そうそう、文化祭は参加してなんぼだよ。だから、私と一緒に回ろう?」
「...あっ」
すると突然、強引に腕を掴まれ、引っ張り出されそうになる。
少し目を見開いた顔から、よく見る笑顔に視線が移る。
「おま、止め...」
いつもの様に、抵抗する筈だった。それなのに、言葉が出ないどころか、力も入らない。
強く引かれる。僕の気持ちなんて気にせず、彼女はどんどん進んでいく。
「...ちょ、ちょっと」
辛うじて発した単語。去年ではない何時かの感覚が、僕を白渡に囚わせた。




