表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/79

#49


 勇気というか、勢いが出たのは翌週になってからだった。


「お前、ステージ発表やるらしいな」


「......」


 もうすぐ高校に着くバスの中、隣の黒瀬に話しかける。十数日ぶりとなる"いつもの会話"を試みる。

 

 彼女の決定に口を出す気は無い筈だった。だが、好奇心と、妙な空気の息苦しさが僕を動かした。


「...別に良いじゃん、やりたいんだから」


「...そっか、頑張れ」


 黒瀬はこちらではなく、下を向いて答える。その様子に配慮した訳では無いのだが、無意識に話を終わらせてしまう。


 "やりたい"なんて言葉を彼女の口から聞いたのは、いつ以来だろうか。初めて聞いたかもしれない。あまりにも無縁だったせいで、なんと返せば良いのか分からなかった。


「......」


「......」


 結果は逆戻り、もしくは悪化か。少なくともあの妙な空気は消えていない。黒瀬は下を向いたままで、話をしてくれる雰囲気では無い。内容はともかく、一応答えを得られた事だけが唯一の収穫だった。


 黒瀬にとっては、"やりたい"だけでも十分な理由になるのかもしれない。分かっていない男が、分かっているかの様に結論づける。


 ずっと一緒にいた奴の気すら晴らせないのは、僕らしかった。何せ田舎の狭いコミュニティで、自分の都合で人間関係を絶った野郎だ。1年以上経ってクラスに馴染めていないのも納得がいく。


 白渡は僕の事を『変わらない』と言った。短い付き合いの奴でも人の特徴が分かるのに、僕には黒瀬が変わったのかそうでないのか判断出来ない。


 アナウンスが聞こえる。今日も無言でバスを降り、学校まで重い足を運ぼうとした、その時だった。

 

「...先輩も出るんでしょ、れん...白渡さんと」


「は?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ