#45
「あー、失礼するよー」
帰りの支度をしていると、何処かで見た事のある大人が入ってくる。委員会ですぐに帰った、あのやる気のない教師だった。
「えー、監査委員の人。学園祭の事なんだけど、生徒会とか実行委員の手伝いやるから、水曜放課後と土曜の午後残ってくださーい、それじゃ」
「...えぇ...?」
気怠げ先生は、要件を告げるや否やさっさと帰っていく。話し振りの軽さとは対称的に、僕の心は一気に重くなる。
「やったね伊折君、君が嫌ってそうなクラスの手伝いをサボる口実が出来たじゃん」
いつの間にか真後ろにいた白渡に話しかけられる。応対し辛いんで出来れば斜め後ろとかからにして頂きたい。
「口実があっても自分が得出来なきゃ無意味だろ。1日準備で残るだけでも数時間人生を損するのに、週2日も居られるか。僕はサボる」
「楓ちゃんや私がいるのに?伊折君の数少ない知人と一緒に活動する機会だよ?」
「知人ぐらいいるぞ。さっき来た先生は知ってる。名前知らんけど」
「13話で名乗ってるの聞いてたよね。ちなみに知人って互いに知ってる人を指すから、伊折君の知名度を考慮すると多分違うよ」
何故か僕の人間関係的評価を入れながら話してくる白渡。正直、言葉の間違いを指摘された事が1番恥ずかしい。
「とりあえず、仕事には来なきゃ駄目だよ。そうしないと、伊折君のラブレターを赤ペン先生の添削付きで貼り出しちゃうかもよ」
「はよ捨てろ」
「ちなみに、伊折君が国語の授業で書いた名作詩集もあるよ」
「何だそれ、捨てろ」
「ちなみに、昔家に訪問したとき貰ったんだけど、小6の頃に書いた物語とか...」
どうやら彼女は僕の文学集を沢山持っているらしい。熱狂的なファンだとしても、節度をわきまえて欲しいものだ。




