#5
南葛城の過疎化は激しい。
面積だけは広いこの町に小学校は2つ、中学校は1つしかない。
特に小学校は、僕が5、6年生のとき、もう片方の学校に吸収する形での合併に関するアンケートが実施される程だった。あまりにも離れているからか一旦計画は中断されたが、1学年数人しかいない母校がそのうち消えるのは時間の問題だろう。
そんな環境だったから、同年代の生徒達の中で一番頭が良いという称号を得ることは、簡単なものだった。皆が運動やゲームなどに熱中し、勉強に力を入れる奴が居なかったという運もあったのだが、競争相手もいなければ周りから離れ勉強に打ち込もうとする人もいない。
中学入学後、スマホを持たず、部活は楽とされた卓球部に属し、栄養ドリンクを1日2本飲むことで得た時間を問題集の暗記に割いたことでテストの成績だけは劇的に良くなった。中学生らしい生活を犠牲にする代わりに、徹底した暗記によって、周りから一目置かれる程の立場を手に入れていた。
実際学力はあまり身についていなかったが、凡庸な少年だった僕がクラスメートや教師に優秀だと褒められるのは気持ちいいものだった。
クラスに親しい友人は出来なかったが、僕の発言には担任さえも蔑ろにできない様な風潮も生まれ、まるで独裁者の様な扱いに天狗になっていた。
そんな僕の立場が悉く破壊されたのは、中学2年の秋、あの白渡蓮花が転校してきたのがきっかけだった。