#E-2
先生が来て2日目の昼休み、臨時で作られた先生の机で、私はプリントに取り組んでいた。
確かに、内容は正確だった。教え方には相当癖があるけど、要点をしっかり伝えてくれる。
でも、先生が優等生だと呼ばれていたという事に、何故か、少し違和感を感じていた。寝癖が立ってるし、服は傷付いていて、直接話すと言葉遣いは少し雑。自己紹介の後からはずっと眠そうな顔をしていて、真面目さを感じなかった。
それでも、とりあえず聞いてみるしかなかった。
「伊折先生」
「ん、どの問題だ」
「問題ではありません。先生、勉強ってどうしてやるんですか?」
「どうして?自分の評価の為だろ」
先生は当然の様に答えた。
残念だった。そんな理由、あらゆる所で聞いていた。
あれだけ優秀だと言われていたのだから、私が納得出来る理由を教えて欲しかった。やっぱり、想定とは違う人間なんだと思った。
「不満そうだが、そういうお前はどうなんだよ」
「私は、お母さんから勉強しなさいって言われてるから...」
「へぇ、僕の親は特に何も言わないから新鮮だ」
先生は、私の顔を見た。彼はいつかとは違ったやる気無さげな顔をしていた。
そして、尋ねてきた。
「でも、それって勉強をさせられる理由だよな?僕はお前が勉強をしている理由を聞いたんだけど」
「え?」
「いや、お前が聞いたのは、僕が能動的に勉強する理由だよな?同じ質問を返したつもりだけど」
「...あの、自己紹介の時から思ってましたけど、先生って面倒臭いですよね」
「ああ、昔ウザい奴に絡まれてたのか、気付いた時には僕はウザい奴になっていた。まぁ安心してくれ、人見知りを隠す為に変な口調になってるだけだから」
言葉遣いの理由はよく分からなかったけど、確かに、私は勉強をさせられる理由とする理由をごちゃごちゃにしていたかもしれない。彼の言葉を蔑ろにする気は起きなかった。




