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#35

 楼隠中学校は名門の女子校。親の希望で、榮子はそこを受験する事が決まっていたらしい。


 母親によると、家庭の事情はもちろん、"榮子の為"に、早いうちから勉強させていたそうだ。殆ど毎日家庭教師が来たり塾に行ったりする勉強漬けの日々。楼隠しか受けさせる気は無いらしく、娘の教育にかなりお金を使っているようだった。そもそもこんな田舎に家庭教師を呼ぶ事自体、結構な費用がかかりそうである。


「人が少ないからでしょうねぇ。一昨年ぐらいから日曜日にいらしてくれる家庭教師の方が誰もいなくなってしまいましたの。塾も開いておりませんし、仕方なく兄に教えさせていたのですが、あの子も受験生ですし...」


「...だから、日曜の午後、代わりをしてくれる人を探しているんだって」


「そうなんですの。自分が教えられたらいいのですけれども、忙しいですし、最近の教材は機械を使うものばかりでよく分からないのです。1〜2時間でいいので、お願い出来ませんか?」


 そう言って、高校生達を1人ずつ見つめる母。"榮子の為"に必死になっている様子がよく分かる。


 多分、彼女自身しか見えていないが。


「その、2つ質問していいですか?」


 白渡が尋ねる。母親の返事を待たずに、聞く。


「まず、私立中学の受験勉強を、高校生が教えられるんですか?そもそも私、中学受験なんて受けてないですよ」


 その通りだ。転校前の白渡も中学受験は無かった様だが、僕や黒瀬等この地域の子供は小学校卒業後、普通近くの公立中学に直接入学する。正直中学校や小学校、あるいはそれ以下で受験があるという事実が恐ろしいほどだ。

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