#31
しばらくすると、白渡は大きな本を抱えて尋ねてくる。
「これ、小学校の卒アル?」
母校の名前が書かれており、卒業した年度も正しい。捲れば、懐かしい姿が現れるのだろう。
「小学生の画像だ。悪用するなよ」
「伊折君ってよく分からない人だね。普通こういう時って、恥ずかしいとか言うでしょ?」
「僕の人生のハイライトはあの頃だ。今の自分を見られるよりありがたい」
本を開く白渡。
写真のそれぞれをじっくり眺めている。アルバムをこんなにゆっくり見る奴なんているのだろうか。実は誰かの親だったりするのか。
「...変わらないね」
「何が?名前とか?」
彼女の目の前には、委員会時代の僕の写真。校内の立場という意味では結構変わっている。
「伊折君、自分から入ったんじゃないよね?他にも色々務めてるみたいだけど、どうせ先生とかに言われてやったんでしょ」
「...そりゃ、僕だしな」
「やっぱり変わってないよ。伊折君は伊折君だ」
白渡は笑顔でこちらを見る。
確かに、受動的な人間であるのは変わっていないかもしれない。頼まれた事はやる。頼まれなければやらない。そう考えれば、彼女の話は正しそうだった。
「全部自分で抱え込んじゃうところ、昔からそうだよね」
「...は?」
「だから、伊折君を構いたくなっちゃうんだ」
だから、予想外で訳の分からない理由を示された時、僕は当然困惑するのだった。