#30
「久々に汚部屋探索でもしようか。同じ所だよね?」
「待て、その企画はもう打ち切りになったぞ」
「あんな人気企画を止めるとか無能ディレクターじゃん。復活するよ」
僕の制止を無視し、笑顔で僕の部屋に入って行く白渡。どうあがいても無駄なので、渋々彼女に着いて行く。
「おー、やっぱり酷いね。どれだけ溜め込んでるのさ」
「色々出してくる学校が悪い」
食べ物のカスとか使用済みティッシュとか、明らかなゴミはそれほど無い。しかし、学校から配られた冊子やプリントを処分せず、それが部屋に散らかったせいで、外観はなかなか酷いものになっている。
大切な資料を捨ててしまった経験があり、どれが必要でどれが不必要か判断出来なくなった。その為全部積み重ねたところ、重ねるだけで完全に放置するようになった。
「さては伊折君、私が掃除して欲しくてこんな風にしてたんだね?言ってくれればいつでも来たのに」
「耳かき音声みたいに言うな」
そう言いつつ、整理を始める白渡。
連絡先も、そもそもどこに住んでるか分からない奴をどうやって呼ぶのか。もちろん絶対頼まないが。
というか、こいつ去年まで何処に住んでたのだろう。確かに中学校のクラス内で、卒業後白渡が引っ越すなんていう話は出ていた。でも具体的な話は知らないし、本人が言う事も無かった。
「ん?これ何?」
「美術の授業で描いた絵だ。ピカソをリスペクトしてる」
「伊折君ピカソの絵見た事無いでしょ。あの人かなり上手なんだから、下痢の模写みたいな絵の言い訳にしちゃ駄目だよ」
勝手に漁られる僕の部屋。当然、僕が白渡について分かる事は無い。