#26-1 ED1
「...知るか」
悲痛な顔を前に、つい無責任な返答をしてしまう。
そもそも、僕は何と言おうとしていたのだろうか。牽制する様な話の振り方をしておいて、どのように本題に繋げるか全く考えてなかった。
「......」
「......」
苦しい。
こんな情けない先輩を前にして尚、彼女は僕を見つめている。黒瀬はまだ、僕が答えを出してくれると信じている。黒瀬はまだ、僕を頼りにしようとしている。
「......」
「......」
やはり、僕は弱かった。別に今、この関係を切る必要は無いと思ってしまった。こいつの学生生活に文句を言うのもおかしいし、何よりも、僕が黒瀬に嫌われたくなかったのだった。
「お前な...彼氏ぐらい自分で探すもんだろ」
「......」
「...どうしても見つからなかったら、ぼっちの幼馴染が一緒に堕ちてくれるだろ。その時は残念でしたってことで」
「...え、それって」
記念品を持たせ、急いで列に戻る。こんな時でも情けない自分が恥ずかしい。
その後、休憩時間になるまで、1年生の方を向けなかった。
歓迎会後半の部紹介に、1年生は強制で出席する筈だった。それなのに、黒瀬は僕を引っ張り出し、誰もいない教室に来ている。
「おい、行事には真面目に出とかないと教員に視姦されるぞ。今からでも...」
「うるさい」
「...すんません」
突然当たりの強くなった黒瀬に困惑していると、彼女は再び不安そうな顔になる。
「...白渡さんは、どうなの」
その言葉に、僕の心は乱される。
中学時代から絡まれ続けている同級生で、自分に告白した女子。そしてどうやら、僕が惹かれているらしい女子。
そういえば、僕らの関係は何なのだろう。ただの知り合い以上ではあるのだろうが、一体何が僕らを結び付けているのか。疑問と興味、罪悪感が僕を苦しめる。
でも、それでも、僕は黒瀬と離れる方が嫌だった。
「...あいつは友人だよ、これからも」
「...そんなの分かんないじゃん」
「分かるわ、そもそも僕が嘘ついたことがあるか?」
「...白渡蓮花君」
「...確かに」
見事に論破される。
未だに疑いを晴らさない黒瀬。いつもなら適当な事を言って逃げていた場面。しかし、ここまで来てはもう引けない。あいつを裏切ることになっても、クズの名がさらに酷いものになったとしても、どうにかして黒瀬を信頼させなければならない。
顔が熱くなるのを感じつつ、言い放つ。
「あ、あのな、お前の様な可愛い奴を嫌いになる訳ないだろうが、何があっても、お前の頼みを蹴る訳ない」
「......」
固まる黒瀬。やらかしたと思い、身を引こうとする。
「...ッ!?」
突然、体を壁に押し付けられる。目の前に、ニヤリとした笑みを浮かべる黒瀬の顔が現れる。
「...そっか、仕方ないね。それじゃあ先輩、私と一緒に堕ちてもらうよ」
「待て、おい、確か僕はまず自分で探せって言ったよな」
「...分かった、じゃあ探すよ」
そう言うと、黒瀬は僕の手を握り、さらに顔を近づけてくる。
「...お前、探す気ある?」
「...今探してる、後10秒で見つからなかったら、終わり」
さらに近づく黒瀬。甘い匂いを感じて、理解する。
僕は彼女に、今までも、これからも囚われ続けるのだろう。




