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#25

 新入生歓迎会は、全校生徒出席の前半と、代表者が部紹介をする後半に分けられる。僕は自然科学部の代表ではない為、前半が終わり次第そのまま帰る予定だ。


「1年生の皆さん、新しい生活にはもう慣れましたか?」


 生徒会長の言葉を聞き流しつつ、頭では黒瀬の事を考える。彼女の気持ちには応えられないと、早く伝えるべきなのだ。


 僕はしょうもない人間である。人付き合いは下手。家事も運動も出来ない。勉強は昔は成績良かったが、化けの皮が剥がれた今では平凡。サボり癖が酷く無礼で弱気で稚拙。他に特出した能力も無く、しかも告白した女の子への返事を保留し続けるクズ。無駄にプライドは高いのに、将来像は決められない面倒な人間。


 そんな奴が幼馴染な黒瀬は本当に不幸だ。家族との不和からか、彼女は迷った時、まず僕を参考にした。自己紹介は良い例で、他に小学校時代のリーダー、中学校時代の部活や学習、下原高校理数科への進学等、学校における話だけでも色々ある。体験入部先や委員会が同じだったのも多分偶然ではなく、少し前に僕から聞いたものに合わせているのだろう。


 慕われるのは嬉しい。しかし、このまま僕に着いて行けば、彼女は僕のしょうもない人生に巻き込まれてしまう。


 だから、黒瀬とは付き合う気はない。高校を卒業するまでには、自立するか、僕以外の優秀な奴を頼りしていて欲しい。でも、ずっと隣にいた彼女を拒絶するのは、やはり苦しい。


「記念品授与。代表者は前に出てきて下さい」


 どうやら、仕事の時間らしい。立ち上がり、所定の位置につく。


 目の前には、黒瀬が立っている。


「こんにちは!あたしは監査委員長の、朱膳寺苺です!」


 委員長の挨拶が始まる。相変わらず無表情な黒瀬の顔を、何故か直視できない。


「これから様々な経験をすることになるでしょうが、仲間たちと共に、苦難を乗り越えていって下さい!」


「ありがとうございました。それでは、代表者の方、どうぞ」


 合図を受け、記念品を渡すことになっている。僕と黒瀬も前に出て、後はこのよく分からない物を押し付けるだけ。


「...彼氏でも作って楽しめよ」


「.........」


 小声で話したが、大声で驚かされたかのように、黒瀬の目は見開いている。動きは固まり、彼女が明らかに動揺しているのを読み取れる。


「...誰と、付き合えば良いの」


 僕より、今までの彼女よりか細い声で、黒瀬は尋ねる。こんな不安そうな彼女を見たのは何時以来だろうか。

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