#12
集合場所の教室には、疎に人が集まっている。
立ち話をして楽しんでいる奴らに目を向け...はせず、さっさと窓際最後尾の席に座る。
1度だけ教卓の前で座っている生徒...というか児童達を眺めた事があるが、正直後ろにいようが教師目線見えやすさは変わらない。寝れないとか言って前の列に座るのを嫌がる人がいるが、何処だろうと普通に分かる。
それを知って尚、隅に行ってしまうのだが。
「伊折君の場所どりの才能は凄いね。新居探しにも使えるのかな?」
「そうだな、お前に豚箱という家を紹介してやる」
「伊折君が招待状を受け取ってくれるならついていってあげよう」
目の前の席に座る白渡。別にいいけど、席が空いてるなら2席分ぐらい間隔を空けて欲しい。
「そう言えば刑務所には宗教家とかが訪れるらしいね。やっぱり釣りやすいのかな?」
「おい、不謹慎だ...ぞ」
言葉が詰まる。
いつの間にか黒瀬が隣に座り、僕を見つめている。
どうせ止めていたが、親戚の事があるため、黒瀬の前でこんな話をするのは良く無い。でも来たなら一言掛けて頂きたい。
「...あぁ、お前も監査委員になったのか」
「......」
軽く頷く黒瀬。言葉を発する事はなく、彼女はただただ僕の方を見ている。
「......」
白渡の方はというと、いつも通りの悪戯っぽい笑顔を浮かべ僕らを見ている。
「......」
「......」
え、何この空間?
視線がぶつかり合っている訳では無いのに、何処か緊迫する様な空気。少しづつ人が増え、騒がしくなっていく教室の中、ここだけは急に静まってしまった。
「.........」
さっきまで平気で話せていたのに、僕は口の開き方を忘れてしまったのだろうか。今まで学校で話なんてしなかったから、そもそも知らないのかもしれないが。