正義はここに?
「葵ちゃん。今日は雅明ん所いかねぇの?」
学校帰り、いかにも勢いと乗りで生きてそうな横の男、佐々勝有にわたしは遭遇した。
服装もかなりだらしが無いが、わたしはわたしなりにこいつの良い所は知っている。
わたしの名は相場葵現役女子高生をやっていたりする。
「師匠・・・・今日の夕方はいないって言ってたから。」
すると勝有は面白そうな顔をして・・・・。
「女でも出来たか?」
言ってニヤニヤ笑う彼。
「勝有の頭の中は年中常夏だね・・・・・」
嫌味を言うわたしに対してつまらなそうな顔をする彼。
「ちっとは焼き餅の一つや二つ焼いたらどうかねぇ。」
・・・・・焼き餅?何故わたしが?・・・・・・
わたしは彼の言葉の意味が分からず深く考えたが何も出てこなかった。
「はぁ~あぁ・・・・・葵ちゃんはまだまだ子供だな。」
言うと彼はわたしの手を握り・・・・。
「そぉ言う葵ちゃんも葵ちゃんらしくて好きだぜ。結婚しよう。」
ばこんっ!
背後に突然気配が生まれたかと思えば突然紐のついた分厚い本が勝有の脳天を直撃した。
「お付き合いも無しに結婚とはどぉ言う料簡だ?ああ?」
紐を手繰り寄せ本を回収すると再び本を彼に向って投げつけようとした。
「師匠~!!」
わたしは笑みを浮かべ雅明の横に張り付いた。
彼の名は九律雅明十九歳。わたしの師匠を務めている。
「雅明!てめぇよくもオレの恋路の邪魔をぉぉぉぉっ!!
いってぇ・・・・・・頭にタンコブ出来たぞ。」
彼は座り込み頭を押さえ涙を流していた。
「お前の悪い所は直ぐに女性に手を出す所だ。早めに治しておかないと後で後悔する事になるぞ。」
わたしは勝有にベーっと舌を出して見せた。
「お前もお前だぞ。あいつに近づくなって言ってあるだろ。」
何だかとばっちりを受けて悲しくなるわたし。
「それより師匠・・・・・もう用は終わったの?」
取りあえず、とばっちりはゴメンなので話しを反らす事にした。
「あっああっ。
情報屋の姉さんに夕方にこの本を取りに来いって言われててな。ちょっと行ってただけだ。」
そして先程、勝有を攻撃した、しっかり縛っている紐付きで分厚い古い本をわたしの目の前にぶら下げて見せた。
「術式大全集。」
『は?』
首を傾げるわたしと勝有。
「世界各国の呪術って物を知ったつもりでいてたが漏れてた部分があっててな。
今後の開発の参考になるんじゃないかと買ったんだ。」
・・・・・・態々買わんでも師匠は強いのに・・・・・・・
「ちなみに幾らしたんだよ。」
勝有は頭を摩りながら立ち上がり彼に聞く。
「とある屋敷の地下研究施設から発見されたらしいんだが、今回は結構御手頃な価格だったな。
取り寄せ賃込みで五百だったか・・・・・。」
「え?送料込み五百円?」
「いや万だよ。五百万。」
・・・・・・万って、え゛ぇぇぇっ!?・・・・・・
「師匠そんなのよく買えたね。」
桁の違いに苦笑するわたし。
「それなりの仕事はしてるつもりだからな。」
そう、彼は人が扱えない術を開発して様々な所で役立てている言わば天才。
そしてこのわたしも変わった力を持ち悩んでいる所、数か月前彼に世界平和の為にとスカウトされ色々とやっていたりするのだ。
「こいつ昔からこんな無駄遣いしやがるんだぜ。貧乏人の敵だ。」
勝有は嫌な顔をしてそう言った。
「お前の場合女性の尻ばかり追いかけているから貧乏になるんじゃないのか?」
・・・・・ごもっとも・・・・・
師匠の言葉に頷くわたし。
「きゃぁぁぁっ!」
突然女性の悲鳴と共に、直ぐ真横を白いニット帽をかぶって黒いサングラスに黒い服を着た男が走り去って行った。
三十前後の女性は息を切らせヨロヨロと地面へと崩れ落ちた。
「スリです。わたしのバッグをあの人が・・・・・」
顔を強張らせて涙を流す女性。
「大丈夫ですか?大丈夫ですよ。
ここは彼等に任せましょう。」
言って震える体を優しくそっと抱き寄せて落ち着かせる勝有はわたし達にウインク一つ投げた。
「ったく・・・・・オレには出来ない芸当だな。
お前はその女性を見といてやれ。但し手は出すな。良いな?」
「へいへいっ。」
何かつまらなそうに言う彼。
そしてわたし達は人気の無い路地に入り込み、わたしは鞄から仮面とマントを取り出してそれを着用した。
・・・・・・・着替えるの面倒なのよね。これ、でも人に見られる訳にもいかないし・・・・・・・・
ぽしゅっ!
師匠は何かボタンを押し、気づいたら彼もまた仮面とマントを着用していた。
「え゛~っ!?師匠ズルイ!いつの間にそんなワンタッチ式に?」
「ああっ。こっちの方がより早く変身出来ると思ってな昨日作ったんだ。お前のも帰ったら作っといてやるよ。」
それを聞き安心し笑みを浮かべた。
わたし達は意識をコントロールし始め、すると宙へと浮き上がり・・・・・。
空を飛んだ。
わたしは師匠がいなければこんな空を飛ぶ事も出来ないでいたと思う。力を持て余していたわたしは力の使い道を知らずただ感情だけで動き様々な人に迷惑をかけていた。でもそれは彼に会うまでの話し。
彼はわたしの知らない事全てを教えてくれた。わたしの尊敬出来る人だ。
「さっきの男の姿を覚えているだろ?思い浮かべるだけで良い。」
空へ上がり師匠はそう言った。
わたしは特徴全てを思い起こすと全然見えないはずなのに街中で走っている男の姿を捉えた。
「郵便局の横を今走ってる。
もう直ぐ交通の多い十字路に差し掛かる。」
「イメージしろ。男の首根っこを掴んでる様子を。」
言われわたしはそっと前に手を出してイメージした。
すると掴んでいないはずの男は訳が分からんと言った様子で喚き手足をバタつかせながら、そのまま宙へと上がった。
「近くに警察署があるはずだ。そこまでイメージして放り込んどけ。後は警察連中が何とかしてくれるだろ。」
言われわたしはその通りにした。
警察は突然上から人が降って来た事に驚き、男を不思議そうに取り囲んで見ているが男は完全に気を失って逃げる事も出来なかった。
「面白い。
イメージで色々見たり遠隔操作したり出来ちゃうもんなんだ。」
わたしは男の様子をジッと見ていた。
「お前にはそれだけ力があるって事だ。それに、このやり方ならオレ達の目撃者は大分減るだろう。
なるべく人に見られない。そして正体をばらさない。それが正義の味方の鉄則だからな。」
・・・・・・かっこいい。流石師匠・・・・・・・
「ほらっ。勝有の所に戻るぞ。」
言われわたしは師匠の後に続くかの様に誰もいない路地裏へと降り立った。
「本当にありがとうございます。」
無事盗られた物も警察の手から直接返してもらい女性はわたし達に何度も礼を言いながら帰って行った。
警察が言うには彼はスリの常習犯だったらしい。
「しかし・・・・・何故この男は警察署の中に何処からか飛ばされて来たんだ?」
「そうだな。訳が分からんな。」
警察は今もなお気を失っている男の顔を不思議そうに見ていた。
「取り合えず起きたら聞いてみるか・・・・・・。」
わたし達は何も分かりませんと言った顔をしてその場を後にした。
「しかし美しい女性だったよな。オレときめいちまったぜ。」
勝有は胸を押さえ顔をポッと赤く染めた。
「お前は年から年中ときめいとるだろうが。」
嫌な顔をする師匠。
「勝有改め年中常夏男略して夏男。」
「そりゃあ良いな。お前は今ここで夏男決定だ。」
わたしの言葉に乗って来る師匠。
「酷!
そんな・・・・かっこ悪い名嫌だぁぁぁ。」
勝有の絶叫は夕暮れの空に木霊したのだった。
【正義はここに? 終わり】




