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Again.記憶共有的異世界物語  作者: さも
第一章:白紙の少女
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第4話:女神ミレイ・ノルヴァ

「またか......」


口から自然と出た言葉は、今の心情を完璧に表現していた。

いくらなんでも頻度が高すぎないだろうか。


空の色と、街の雰囲気。明らかに近代的ではないこの世界で、シュンヤは冒険者として暮らしているらしい。

だからなのだろうが憑依すると体が軽い。ちょっとした跳躍で普段の2倍近く飛べるし、握力が上がっているのか服の汚れを払うと殴られたかの様なダメージになる。


便利なのか不便なのか、少なくともシュンヤの方は不便に感じてるだろうなと思いつつも俊介は歩みを進める。


ここがどこなのか、トウやナエラは何処に居るのかサッパリ分からない。

ただ一つシュンヤの記憶から分かることは彼が「暇だった」ということだけだ。


つまりこれも散歩みたいなものだろう。


目的もなく歩いていると、いつのまにか最初にトウに連れて来られた教会に着いた。

人間の帰巣本能みたいなものだろうか、道も知らないのによくたどり着けたものだ。


教会の重い扉を開け、中に入る。

ステンドグラスからの光は相変わらず美しく、キツネの影絵で遊ぶ女神像を神秘的に照らす。

その光は下へと続いていき、影絵に命を与え......


人が居る。

ロングのシルバーヘアー、紫色の冷たく光る目。

灰色一色のワンピースは彼女の異様さをより一層表現しているようだった。


「やぁ、初めまして俊介」


彼女がこちらの視線に気付くと同時に世界が一瞬グレーに染まる。

気づくと女神像の真下にいたはずの女が目の前ゼロ距離まで近づいて来ていた。


「私はミレイ・ノルヴァ【時と運命を司る女神】よ」


妙にハイライトの薄い、仕事の出来る女上司みたいな目で睨まれ思わず硬直する。

何故名前を知られているのだろう。それに女神って......?


分からないことが多すぎる。一度に与えられた情報量に脳が追いつかない。


「女神?」


「まぁいきなり言われても困惑するよね......」


「そうね、この世には貴方達人間が絶対に抗えない存在がいるの。暦は進むでしょう?縁は巡るでしょう?それが私」


「いや、別に女神の説明を受けたいワケじゃないんですが......」


ミレイ・ノルヴァの口がアヒルの様に歪む。

どんな感情だそれ。


「まぁいいわ、貴方をここに呼んだのは謝罪と警告の為なの」


「呼んだ?」


「えぇ。妙だと思わなかったの?貴方達の言う...憑依だっけ?が短期間で起こりすぎだって」


「じゃぁ今回の憑依は――――――」


「私が起こしたの」


食い気味で答えられると同時に、色々察しが着いた。

この女神はこの憑依現象に大きく関わっている、そしてさっき言ってた謝罪ってのは......。


「もう気付いて居ると思うけど、貴方達は生まれた時から共同体として繋がっているの」


「本来【地球】と【バーミア】はお互い干渉しないのが鉄則なんだけど、私のミスで貴方達がリンクした状態で産まれたってワケ」


やはりか。

神なる存在が記憶共有に干渉していた時点で大きな鍵を見つけたと思っていたが、まさかその大元から会いに来てくれるとは思っても居なかった。


有難がるべきなのか、恐れおののくべきなのか。感情がグチャグチャになりすぎて正直リアクションに困る。


俊介が困った表情をしていると、ミレイ・ノルヴァは深々と頭を下げた。


「本ッ当にごめんなさい!謝って済む問題じゃない事は分かってる。貴方の命を私のさじ加減で弄んでいるのだから。でも大きな陰謀とかじゃないってコトだけは理解して欲しいの」


顔を伏せているので表情までは分からないが、その声から泣きそうになっているのは分かる。

普通初対面の相手にここまで謝れるだろうか。


いや、向こうはこっちのことをよく知っているのだろうけど、自分の過ちを認め感情をストレートに見せてくれる人を無碍には出来ない。


「顔を上げてください。ミスって事はちゃんと経緯があるんですよね?良かったら聞かせて貰えませんか?......ノルヴァ様?」


そう言うとミレイ・ノルヴァは明るい笑顔を見せた。

さっきまで消えかかってた目のハイライトは明るくなり、胸のつっかえが消えた様なスッキリとした表情になった。


「ミレイでいいわ。あと様も付けなくていいからね」


明らかに上がった声のトーンでそう言う女神様を横目に、神々しくそびえ立つ女神像を覗くと目の前の女神にそっくりなコトに気付いた。

なんで最初から気付けなかったのか......どうやらここはミレイ・ノルヴァの教会。


「そうね、貴方エルフは知ってるかしら」


「あのファンタジーとかに出てくる耳が長い?」


手で耳をヒョコヒョコさせエルフを表現する俊介。


「えぇ、そのエルフ。実はバーミアに種族として存在するのよ」


「基本は森に引きこもって町とかには滅多に出てこないからその存在を知らない者も大勢いるんだけどね」


「彼らの魔法技術は神の領域に触れた。ホントどうして生物ってのは神に抗おうとするのかしら」


「人はタイムマシン理論だなんだって時間の概念を歪めてくるし、エルフは高い占い技術で運命を歪めまくるし......」


ミレイ・ノルヴァは小声でボソッと呟く。

その表情は苦悩に満ちていた。


「その占い技術で【地球】を見つけたエルフは知識欲が働くままに神の理に大きく抗った、私はエルフに地球の情報が行かないように次から次へと処理していたんだけどね......」


「数が多すぎたのよ!流石の神にも狂いが出てね、その狂いの一つが貴方達ってワケ。生まれて初めてのミスよ」


困惑が困惑を呼ぶ悪循環にハマっているが、概要は理解した。

理解した......からこそとても嫌な結論にたどり着いてしまった。


「つまり僕が生まれた理由ってのは......」


「エルフが地球を調べた時の出力先を一つにまとめるため......つまり人柱よ」



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