漫才 異世界転移
ボケ「最近、異世界に行く小説が流行っているじゃないですか」
ツッコミ「確かによく見ますね」
ボケ「実は、異世界へ行って帰ってきたんですよ」
ツッコミ「マジで? まず、どうやって行ったの?」
ボケ「最初気が付いた時、小さい箱の中に僕と人々がすし詰めにされていた」
ツッコミ「あんまり聞かない展開だな」
ボケ「ふと気づいた。天から声がしたことに。『自衛隊しか内定がありません』という。そう、その箱には陸上自衛隊と書かれていた」
ツッコミ「出オチですね。自衛隊のマイクロバスですね」
ボケ「ドナドナド~ナドナァ、その箱にゆられ」
ツッコミ「実際問題食らっている状態が、かわいそうな子牛。そのような情景が目に浮かんで仕方ない」
ボケ「小さい部屋に10人ほどが押し込まれ。やれと言われた労働、それが!」
ツッコミ「それが!」
ボケ「階級章と名札を手作業で自分の迷彩服と制服につけろという奴隷如き労働! その労働の成果は所定の位置に正確に縫い付けられているかどうか、ミリ単位で調べられ、却下されるごとに、訓練していないのにボロボロになっていく迷彩服と制服!」
ツッコミ「コイツ、不器用なんです」
ボケ「さらに! 課せられた労働! それがブーツを磨けという不可思議な仕事! その上、服にアイロンをかけろ、しわを残すなという無理難題! 磨いているのに汚くなっていく我がブーツ! 更に酷い見た事のない惨状と化していく、我が迷彩服!」
ツッコミ「本当に、コイツ不器用なんです」
ボケ「しかし、そんな日々を過ごす小汚いこの手に、与えられたのだ!」
ツッコミ「といいますと、異世界物によくある!」
ボケ「そう! 聖剣『89式小銃』!」
ツッコミ「自衛隊採用の国産アサルトライフルです」
ボケ「しかし重大なる欠陥があった! 部品が小さい! 分解できても、元に戻し方を覚えられない! でもって部品落とすたびに、腕立て伏せの刑、30回! 酷い時には合計150回!」
ツッコミ「どうしようもなく不器用なんです」
ボケ「度重なる困難、試練を乗り越えて、いよいよ実施されるこの手にしせり聖剣が雷を放つ時!」
ツッコミ「要するに実射射撃訓練ですね」
ボケ「何ということだろう。ゴブリン共はそれを避け切ったのだ」
ツッコミ「当たんなかったんだな。てか、標的動かないからね。お前の狙い方が悪いだけだからね」
ボケ「しかし、その時には最強魔法を覚えていたのだ!」
ツッコミ「そんなんいつの間に!」
ボケ「その名も『気合、根性、アルコール』!」
ツッコミ「それ体育会系の精神論。感化されまくり」
ボケ「それを私は次の機会において唱えた!」
ツッコミ「怒られね?」
ボケ「あ、心の中で」
ツッコミ「ですよね」
ボケ「前方に現れしゴブリンに向かい唱えた! 『気合、根性、アルコール! 気合、根性、アルコール! 気合、根性、アルコール! 気合、根性、アルコール!』」
ツッコミ「それ雑念じゃね?」
ボケ「なんとその結果、50点満点中42点!」
ツッコミ「奇跡が舞い降りた!」
ボケ「そうチート魔法を手に入れていた! いかなる困難も『気合、根性、アルコール』! その次に行われた匍匐前進からの突撃する戦闘訓練でも! 山道を駆けずり回る体力錬成でも! 真夜中から歩き始め、朝方に到着する25キロ行軍でも! 酒飲みすぎてやらかした反省、腕立て伏せ200回でも!」
ツッコミ「いや、酒飲みすぎてやらかした時は止めような」
ボケ「そんなこんなで気が付いた時には8年その異世界に滞在していました」
ツッコミ「まさかそこまでそこにいると誰が思ったでしょうか」
ボケ「もっとその異世界にはいようと思えばいれたんですが、いい加減元の世界に戻ることにしました」
ツッコミ「任期満了退職です。頑張りました」
ボケ「色々やらなくてもいいようなえげつない目にも遭いましたが、今となってはいい思い出です」
ツッコミ「20代の大半を異世界としか言いようがない自衛隊で過ごしたコイツのお話でした」
ボケ「ですから皆さん! 何かあれば魔法を使いましょう! 最強魔法『気合、根性、アルコール』! あ、アルコールはまずいか」
ツッコミ「酒飲めない人もいるからね! それは止めなさい!」