第3話:着ぐるみの怨主
これは創作とTRPG“語り部”で動いている企画「百縁草子」の世界観を借りて書かせていただいています。また、書式は通常の小説とは少し異なり、キャラの会話主体で書いているのでご了承ください。
「#」で始まる文:地の文、あるいは筆者の自己つっこみ
○○:「〜」 の文:キャラのセリフ文
SE:〜 の文:効果音
●登場人物
・雪見屋氷
商工会(中洲の商業全般を管理する組合)の会長。25歳。
薄水色の腰まである髪、白い浴衣、下駄が特徴の美人さん。通称“雪女”。
触れたものの温度を急激に低下させる能力を持つ。
(詳細設定はこちら参照→http://kataribe.com/BZ/01/C/0021/)
・静川京悟
特区警察中州署電脳特捜課課長。28歳。
だらしなくよれたスーツを着ているひょろい男。
年中ダルくてやる気のなさそうな顔をしてるが、その顔の通りやる気がない。一応縁主。
・Shell Fox
キツネを模したようなマヌケ面の着ぐるみを着た怨主。
ボイスチェンジャーが内蔵されているのか、声もかなりのマヌケボイス。
大型のメイスを振るって主な武器としている。
・兎岸柚子
苦労の絶えない京悟の部下。厳しいです。
・鈴木
妖魔
■■■
#(金銭的に)ギリギリで酒代の支払いを終えた京悟は、先に店を出た氷の後を追って現場の空き地へ移動した。
京悟:「んーと、確かここら辺……お、いた」
#見れば、閑散とした空き地に氷と怨主らしきものが立っている
氷:「……ねぇ、怨主って…あれ?」
#気配に気づいた氷が京悟を振り返って相手を指さす
#氷の指さした先には着ぐるみを着た変なやつが腕組みをして立っている
#キツネを模しているように見えるが、口の部分からは舌がでろんと出ており、顔もマヌケ面としか言いようがない。さらに背中には柄が長くてでかいメイスを背負っている
京悟:「ここにいたんだし、アレじゃね…?」
氷:「そう。というわけであなた、ここで大人しく捕まっておくことね!」
#ビシッ、とどこからともなく出てきた長めの竹刀をキツネに突きつける
京悟:「おーい、足止めでいいんだぞー」
#小声でツッコム
キツネ:「だが断る!」
#堂々と言い放ったキツネ。しかしこれまた声はボイスチェンジャーが中に組み込まれているのか、なかなかのマヌケボイス
氷:「ナマイキなキツネね。とにかく、何したかは知らないけど、怨主なら大人しく捕まっておきなさい」
キツネ:「怨主扱いされてるとは甚だ心外だな。私はただ犯罪者に罰を与えていたにすぎないのだが」
氷:「罰を与えていた…?」
キツネ:「特区内は銃刀法が解禁されているのをいいことに、縁具を使った犯罪のみならず、一般人同士の犯罪も多数起こっている」
#浪々と語りだすキツネ。内容と声とのギャップがひどい
キツネ:「しかしどうだろう。特区警察は縁具による犯罪を優先しているばかりに、こういった“普通の犯罪”はどうしても後回しにされてしまう。そこには縁具による犯罪と同じように被害者の悲痛の叫びがあるというのにだ!」
氷&京悟:「………」
キツネ:「特区内は無法の地。そこに法に裁かれない外道がいるならば、そいつに罰を与えるのが俺のジャスティス! 俺にはそれを行う強き意志と力がある!」
氷:「強き力…縁具ね。それであなたは罰を与えると言って縁主でもない人を襲っていたわけね?」
キツネ:「襲っていたとは人聞きの悪いことを。やつらは罪を犯したのだ。罰を与えて何が悪い! 俺は人に褒められることはあれど、怨主などと不名誉な呼び方をされる覚えなどないわ!」
氷:「あなたの理由がどうあれ、『縁主でない人間を、縁具を用いて襲った』っていう事実は立派な“怨主”たりえる条件なのよ。わかったらそのくだらない着ぐるみを脱いで、大人しく自首しなさい」
キツネ:「フン、話がかみ合わんな。ここにはまだ多くの人間の悲鳴が聞こえる。悪いがそこを通してもらう」
#背中のメイスを手に取り構える
氷:(あれがあいつの縁具…?)
#氷も片手に持った竹刀、縁具・聖剣ラグナカリバーを構えて臨戦態勢に入った。
■■■
京悟:(…なーんか見たことあるな、あいつ)
#氷と謎の着ぐるみキツネが戦闘を始めたので後ろに下がった京悟は、キツネを見てそんなことを考える
#彼が右掌を広げると、淡い光と共に一冊の革張りのメモ張が現れる。
#そのメモ張の表紙を軽く指で弾いて適当にページを開くが、そのページは真っ白
京悟:(書いてねぇか。てことは、柚子に渡された資料か何かに載ってたのか? 覚えてねーけど)
#しゃーねぇ、と携帯を取り出して、柚子にメールを打つ
京悟:『目的の怨主と接触した。俺のメモ張にデータがない。次の条件にヒットするような怨主情報を送ってくれ』
#続けて、マヌケなキツネの着ぐるみ、でかいメイスなど情報を打ち込んで送信
#数分後
柚子:『先の条件に該当する怨主ですが、1人いますね。着ぐるみを着て大型のメイスを振り回す怨主、登録名は“Shell Fox” 犯罪暦は12名の一般人の殺傷、及び特区警察官を含む7名の縁主への傷害となっています』
京悟:「おいおい、結構な大物じゃねーか…」
#言われてみれば、以前暇つぶしで眺めていた怨主リストに載っていたのを思い出す
京悟:『あいつの縁具とその能力は?』
柚子:『あの大型メイスではないか言われていますが、詳細は不明です。以前これに当たった特区警察官もほぼ一方的にやられたらしく、能力の確認まで及ばなかったそうです』
京悟:「マジか。あいつ大丈夫かよ」
#見れば氷とキツネが激しく打ち合っている。が、若干氷が押されているようにも見える
#めんどくせぇけど…とぼやきつつ、メモ帳のしおりの紐を空白のページに挟む
京悟:「マーク」
#つぶやいて再びページを開くと、そこには文字が書き込まれている
京悟:「どれどれ……Shell Fox、縁具は…げ、あのメイスじゃねーじゃん! 着ぐるみの方かよ!」
#京悟の縁具はこの革張りのメモ張であり、今まで遭遇した縁主や怨主、崩主の情報などをとどめておくことができると共に、目の前に縁具と契約してる人間がいれば、その人物に関しての情報を得ることができる、というのが能力。
#ただし、情報入手は普通の人間には効果はなく、また縁具と契約している人物が相手でも、名前などのある程度最低限の情報はあらかじめ知っておかなければいけない
京悟:「縁具能力としては、結縁時には身体能力の強化と五感の鋭敏化、さらに極めて強力な防御能力有り、並みの攻撃では歯が立たない、か…」
#横薙ぎのメイスの一撃をラグナカリバーで受けた氷が吹っ飛ばされる
京悟:「おーい、会長さんや。そいつの縁具はそのメイスじゃなくて着ぐるみの方だから気をつけろよ。ハンパな攻撃じゃダメージは与えられねーぞ」
#前線で戦っている氷にアドバイス
氷:「ウソ!? あのマヌケな着ぐるみが縁具なの!?」
京悟:「そういうこった。見た目に惑わされんな」
#そう言うと、とばっちりをくらわない程度に離れて、再び静観に戻るのであった。
■■■
氷:「ウソ!? あのマヌケな着ぐるみが縁具なの!?」
#てっきりメイスの方だと思い込んでいた
キツネ:「どうした、その程度か!」
#肉薄してきたキツネが上段から大振りでメイスを叩きつけてくる
氷:「くっ!」
#バックステップで紙一重にかわす
SE:ドオォォォォン
#叩き付けたメイスの先端によって地面がえぐれる
氷:(うわぁ…あんなのまともに受けたらいくらラグナカリバーだからって…)
#ふん、とメイスを構えなおすキツネ
氷:(…ただ、さすがに重いものを振り回してるだけあって隙は大きいし…上手くやれば…!)
#それから再び激しい攻防戦へ
#キツネがどんどん攻め、氷はときに受け、ときに避けながらの防戦状態
京悟:「…はぁ、雪見屋の会長もなかなかのもんだけど、それを防戦一方にさせるあの怨主はさらにハンパねぇな…俺だったら5秒で死んでるね。くわらばくわらば…っと」
#上着のポケットから潰れたタバコの箱取り出し、その中から1本銜えて同様に取り出したマッチで火をつける
#ライターではなくマッチで火をつけるのがクールだと思っている古風なやつです
#早く終わんねぇかな、と思いつつ、すぱぁ、と紫煙を吐き出したところで、再びメイスによって地面がえぐられる音がする
京悟:「…ん?」
SE:スコンッ
#音のした方を見ると、えぐられた勢いで飛んできた小石が京悟の額にジャストミートする
京悟:「おぅふっ…」
#タバコをぽろりと口から落とし、額を押さえてうずくまる京悟
#ざまぁみろ
#戻って、氷とキツネ
キツネ:「せいっ!」
#再度、大きく振りかぶられて上段から叩きつけられるメイス
氷:(ここっ!)
#真正面に立ちながらも、わずかに横にずれてかわした氷が、カウンター気味にラグナカリバーでメイスを持った手を打つ
氷:「小手ーーーっ!」
SE:バシーン
#渾身の力で打たれた小手により、キツネが思わずメイスを取り落としてしまう
キツネ:「ぬっ!?」
氷:「いくわよっ」
#言うや否や、ラグナカリバーが純白の輝きに包まれる!
氷:「私の剣が純白に輝く! 怨主を倒せと轟き叫ぶ!」
#だん、と左足を踏み出し、両手で持ったラグナカリバーを一直線に迷いなく突き出す!
氷:「裂光! シャァァイニングスピアァァァァァァァ!!!!!!」
SE:バチィィィィィィン!!!
#ラグナカリバーの先端がキツネの喉元を捕らえた!
#およそ、着ぐるみと竹刀がぶつかったとは思えない音と衝撃を放たれる
キツネ:「ぬぐおぉぉぉぉぉっっっ!!!」
#必殺の一撃を浴びたキツネは数回地面にバウンドしながら吹っ飛ぶ
京悟:ポカーン
#氷がラグナカリバーを振ると、刀身に残っていた光の粒子が空気中に溶けるように消える
京悟:「や、やったのか!? むしろ殺っちまったのか!?」
#キツネは仰向けに倒れたまま動かない
京悟:恐る恐るキツネに近づいて、靴先でつんつん蹴ってみる
キツネ:がばり
#上半身を勢いよく起こす
京悟:「うおぉぉぉっ!」
#ダッシュで氷の背後に隠れる。情けないやつだ
キツネ:「ま、まだだ…私はまだこのようなところで倒れるわけにはいかんのだ…!」
#多少よろけてはいるものの、その場に立ち上がる
氷:「あれを食らってまだ立てるなんて、呆れた丈夫さね、その縁具」
キツネ:「ふん…それがこの縁具、“クースケくん”の唯一の取り得でな…Shell Fox の名は伊達ではないのだよ…さすがに今の一撃は効いたがな」
京悟:「マジかよ…(しかもクースケくんって名前なんかい…)」
キツネ:「さぁ、どうする? 私はまだ戦えるぞ」
氷:「私はもう疲れたわよ……だから、少し大人しくしてなさいな」
キツネ:「………ん?」
#そこでキツネは気づいた。氷の手に縁具がないことに
SE:ギイィィィィィィ………
#キツネの背後で、錆付いた重い扉が開くような嫌な音が鳴る
キツネ:「な、これは…!?」
氷:「……氷結処女」
#キツネの背後に現れたのは人一人なら簡単に閉じ込めることができそうな容量を持つ巨大な冷蔵庫、否、冷凍庫であった
#今その重厚な扉は開かれ、中の見えない暗黒の空間を晒してる
キツネ:(ま、まずい…!)
#危機を感じ、その場から逃れようとするがすでに遅く、氷結処女は驚異的な吸引力でキツネを飲み込んでしまう
SE:ギイィィィィィィ………バタン
#あとには氷と京悟、そしてでかい冷凍庫だけが残った
京悟:「………」
氷:「さ、やっと終わったわね。……あー、もう久々に激しい運動したから疲れたわぁ〜」
#うーん、と伸びをする
京悟:「……なんだありゃ」
#呆然と冷凍庫を見て
氷:「何って、私の縁具よ? 氷結処女って名前で、雪見屋家秘蔵の由緒ある冷凍庫なのよ」
京悟:「アホだ。こんな白物家電が縁具って……さっきの光る竹刀と言い、あんたはもうちょいまともな縁具は持ってないのかよ…」
氷:「光る竹刀なんて失礼ね。あれはラグナカリバーって言うかつて凄い人が使ってた聖剣の縁具で…」
京悟:「はいはい、もういいもういい。手こずったとは言えなんとかこうして怨主を捕獲したんだしな」
氷:「あなたは何もしてないくせに〜」
京悟:「しゃーないだろ。人には適材適所ってもんがあるんだから。今回は俺向きの仕事じゃなかったしな。…まぁでもあれだ、協力には感謝する。あとで中州署に来れば感謝状ぐらいはやるよ」
氷:「いらないわよそんなの。それよりさっきの飲み代じゃ割りに合わない感じだったから、時間もあるし一緒にハシゴするわよ」
京悟:「おま、ふざけんな! 俺の所持金はもう2桁だぞ!? 自販機でジュース1本だって買えないんだぞ!?」
氷:「そんなの署の経費で落せばいいじゃない。私なんて大抵は商工会の経費で払ってるのよ?」
京悟:「お前と一緒にすんじゃねーよ! 大体な…」
SE:バーーーーーン
氷&京悟:ビクッ
#何かと思って見れば、氷結処女の扉が大きく開け放たれている
#そして中から這い出すように半分氷付けになったキツネが出てくる
氷:「え、ええええええ!? ウ、ウソでしょ!?」
キツネ:「わ、私の使命…ここで止まるわけには…いかない…!」
京悟:「おいおいおい…どんな執念だよ…」
#すると遠くからパトカーのサイレンの音が聞こえてくる
キツネ:「…どうやら、ここまでのようだな…今回は引かせてもらおう」
#そう言うと、どこにそんなエネルギーが残っているのかと言う勢いで走って逃げ去っていった
#氷と京悟はポカン、としてアクションできなかった
#その数分後に中州署からの腕利きの応援が到着したが、怨主には逃げられるという結果に終わったのであった。
■■■
氷:「だ〜か〜ら〜さ〜、ありえないのよ! あいしゅめいでんから自力で出てきちゃうなんて! 何のあのキツネ? マヌケ面にマヌケボイス出しちゃってさ〜」
#あれから到着した署員に事情を話し、柚子にメールを入れた後、氷に引っ張られるようにして居酒屋でヤケ酒タイムに突入した。現在3軒目で、氷もいい感じに出来上がろうとしている
#一方
京悟:(ああ、嫌だ…署に戻りたくない…一体いくらの請求額が中洲署に…柚子の目に入るんだ…? 願わくば、このまま泡となって消えたい…)
#氷の顔が酔いで赤くなるのに比例して、京悟の顔は青くなっていった
京悟:「あ、あの〜雪見屋会長? そろそろこの辺でお開きにしてはどうでしょう? ほら、もう18時になりますし、商工会にお戻りになった方がいいのでは…?」
#何故か敬語になっている京悟
氷:「あん? あによ、あたひと飲むがいやなわけ?」
#酒臭い息を吐きながら顔を近づけてくる
京悟:「こっちだってな! もうこれ以上請求額が増えるのはイヤなんだよっ!」
#思わず男泣きしそうになる
氷:「(京悟の剣幕に押され)わ、わかったわよ…仕方ないわね…」
#京悟、ついに解放される
氷:「じゃ、また機会があったら飲みましょ〜 バーイ♪」
#上機嫌で下駄を鳴らしながら去っていく商工会の会長であった
京悟:「…誰がもうお前なんかと飲むか! 鬼! 悪魔! 人でなし!」
#氷の姿が見えなくなってから魂の叫び
#そして鉛の足枷をつけたかのように重くなった足を動かして、戻りたくない場所へ戻っていく京悟であった。
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#商工会本部ビル
氷:「たっだいま〜」
#と、会長室の扉を開けると、開けた扉の隙間から圧縮された怒りのオーラが漏れ出してきた
SE:ガチャン
氷:「…そうだ、うちに帰ってくーちゃんの美味しい晩ご飯を食べましょ。うんうん」
#すぐに扉を閉め、回れ右をしてエレベーターに向かおうとする
SE:ぐわし
#会長室にいた“彼”が扉の隙間から腕を伸ばして、帰ろうとしていた氷の肩を無言で掴んで引き止める
鈴木:「お帰りなさいませ、会長。本日はどちらにおられましたのでしょうか…?」
#氷は思った。「振り向いちゃダメ! 後ろにいるのは私の知ってる鈴木じゃない! あれは妖魔と呼ばれる類のものよ!」と
氷:「……(ゴクリ)」(←声が出せない
鈴木:「おや。何やらアルコールの臭いがしますな、雪見屋会長?」
#人はどれほどの怒りを溜め込んだら妖魔になるのだろうか?
氷:「あ、あのね鈴木、私…」
鈴木:「ご安心ください、会長……戻ってきてくれると私は信じておりました。ちゃんと、仕事は残しておきましたから、これらをやっているうちに酔いもすぐ醒めることでしょう。さ、中へどうぞ…」
#鈴木はこんなに握力があっただろうか?
#氷はもう片方の肩も捕まれ、ゆっくりと暗い室内に引きずり込まれていく
氷:「す、鈴木? ちょ、ちょっと肩が痛いかな? オンナノコはもっと優しく扱わないといけないんだゾ? …とか言って……みた…り……」
#嫌な汗が止まらない。あのキツネの怨主と対峙したときだった、こんなプレッシャーは感じなかった
氷:「あ……」
#全身が暗い室内に入り、無情にも扉は閉められる
#かくして、氷の悪夢は始まる
#これより5日間、街中では勿論、自宅やビル内(会長室を除く)で氷と鈴木の姿を見かけたものはいなかったという。
#…終
●おまけ
柚子:『先ほど中洲署宛てに、このような物が届きましたが、何か身に覚えはありますか?』
#椅子に座る柚子の前に、直立不動で立つ京悟。このような物と言って見せたのは居酒屋の請求書の数々
京悟:「いや、それは、その、ちょっと訳ありでだな…」
柚子:『言い訳は結構です。身に覚えは?』
京悟:「あります、はい…」
#はぁ、とため息を一つ吐く柚子
柚子:『怨主に逃げられることは考えていましたが、このような物が届くというのはいささか想定外です。大方、逃げられた腹いせにヤケ酒でも飲んだのでしょう』
#7割ぐらいは当たりだが、残りは違う。飲んだのはほとんど氷だ
#しかしそんな言い訳もできず
柚子:『請求側に非はないので全額支払っておきます。ですが当然、その分は課長の給金から全額引いておきます』
#恐れていたことが起きちまった
京悟:「……因みに、俺の今月はいくらで…?」
柚子:『0です』
京悟:「…はい?」
柚子:『引いたところ、課長の今月の給金はありません。さらに、それだけでは足りなかったので来月分も約10%減になります』
#開いた口が塞がらないという状況は、実際にも起こりえるんだな
柚子:『請求書を見ると、随分高そうなものも飲んでいますね。あとつまみの類も』
京悟:「あ、あの、俺、今月はどうすれば…?」
柚子:『そんなこと聞かれても困ります。ただ言って置くと、9時から17時まではここにいてもらいますが』
#警官ってバイトしてよかったんだっけ? コンビニでバイトすれば期限切れの弁当ぐらいはもらえるか? うん、あとで探してみようそうしよう
#うつろな目でそんなことを考える上司を見て、柚子はまたため息を吐くのであった。
個人的に「これだ!」と思った戦闘の流れと、試験期間が終わってしまったせいで逃避エネルギーがなくなってしまったこともあり、2話と少し間が開きましたが、なんとか終わらせてみました。氷さんは百縁の自キャラの中では個人的にトップ3に入るぐらい気に入っているので、一度流れが浮ぶと楽しいもんです。クスリ、とでも笑っていただければそれで十分w
何か考えたら別の話もこんな形式で書くかも。