異世界行ってダークエルフの高級娼婦で童貞卒業

第7話 聖母の微笑み

　イズミのパンツが帽子代わりに頭に装着された。

　極小の布部分には大きな切れ目というか穴が開いていて、これは下着というカテゴリーにいれてよい物なのだろうか？

　俺は生まれて初めてブラジャーという物を胸に装着し、それから腰にもつけてもらったんだ。

　女性の肌に優しいその布触り……俺は小宇宙を感じ女物下着(クロス)をまとった。

　魔女の手によって、紳士という名の聖闘士へとジョブチェンシしたんだ。

　……本音、言っていいかな？　

　俺、今、凄い、興奮してる。

　この格好で興奮しまくってる。

　台座に括りつけられた体が歓喜でカタカタと震え出す。

「う、うごごごごごご…………」

「お、お主……着けさせたワシが言うのもなんじゃが、ひどくノリノリではないか……おっききが、おっきき大将軍になっておるぞ！？」

　俺の下腹部をみて引き気味の声をあげるロリ魔女。

　この惨状を作りだしたのは君なのに失礼な人だな……。まあ、それはおいて、誰がどう見ても言い訳できない変態状態。割り切って現状を楽しむことにしたんだよ俺。

　小学校の通信簿で『驚くくらい前向きです！でも前より回りを見てね？』って書かれるくらいポジティブさには自信があるよ。

　下着一つに愚か者かい？　……愚か者だな。

　ああ、そうだよ、そうだとも。人にとってはたかが肌着、たかが布切れなのかもしれない、だけど俺にとっては掛け替えのない装備……下着(レア)なんだ。

　エロフコンビは軽蔑するかもしれない、でも俺はこの香りが、この香りたちがいいかなって……本気でそう感じた。

　ふふ、強がりじゃないさ……ＴＳ、ホモゥ？　関係ないね。

　だから今はこれでいい……これでいいって思えるんだ。

「……死に逝く戦士のような、恐ろしく澄んだ目をしておるのじゃ……ワシ、何だか不味い扉を開いてしまったかのぅ？」

「いや、魔女……逆に感謝しているよ。真の自分を見いだせた、今は最高に清々しい気分さ……本当にありがとう」

「お、おう？　それは……その、よかったのじゃ」

　そうさ、今の俺は明鏡止水の心持ち。

　魔王と二人っきりでペア組んでガチった時と同じ精神状態だ。

　仲間達のほとんどがいい感じの男女ペアになってて、誰も助けにきてくれなかったのよね。

　ダービー〇タリオン？　だから嫌なんだ炎の紋章……。

　ほんと、あのシチュは強制的に無の境地を開眼するほど気まずかった……。

　魔王も俺と似たような境遇だったのか漢泣きしながら殴りかかってきてさ……文化祭の創作ペアダンスで、男と組んだ忌まわしき記憶を掘り起こしちゃったよ。

　最後のほうで唯一助けに来てくれた魔女に対し、俺は照れ臭げに笑った。

「それじゃ早速、握らせてもらうかのう？」

「あ、待ってください！　それはお待ちになってください！？」

　回らないお寿司屋さんのような発言をする魔女。

　途端にヘタレな俺が顔をみせる、一般庶民では時価に心が委縮してしまいます。

「う、なぜじゃ？　さっきまでノリノリだったではないか？」

　幼女は愛らしく首を傾げ、モミジのようにちまっこいお手てで、俺の穢れたバベルの塔に触れようとする。

「魔女！！　それ以上はいけない！！　非常に危険なんだ！！」

　俺は危険な敵に対して、仲間達に警告するのと同等の真剣さで叫んだ。

　そう、今の俺のバベルの塔は崩壊寸前。

　色々な意味で肉体のリミッターを外しすぎた。

　ちょとでも衝撃を加えると天の雷を放つことになる。例え齢三百才を越えているロリババア相手とはいえ、それはとても不味い、条例とビジュアル的な意味で。

「むー、分からん……分からんが取りあえず触るぞい？」

　しかし幼女は戦闘民族でチャレンジャーであった。

　ひぃ、魔女のお手てが、愛らしいお手てがラメェ！？

　ガシャァン！！　俺の危機を救った音は、部屋の外からだった。

　壁に重さのある何かを叩きつけた音。その直ぐ後に、バキッ、ベシャといった枯れ枝をへし折るような音が立て続けに聞こえてくる。

　音は断続する、この部屋に段々と近づいてくるようだ。

「ぬ……ワシの使い魔が破壊されているじゃと？」

　魔女の呟き、彼女の使い魔スケルトンのジョニー（故72歳♂）達。

　それを倒すことの出来る者というと……カオルとイズミ？

　も、もしかして彼女達が目を覚まして、俺の窮地を救いに来てくれた？

　お……オレヲ……オデ(・・)なんかを助けるために来てくれたのガ！？

　その優しさに、心が……泣いた。

「ちっ、小娘どもが……どうやら躾が必要なようじゃな」

「！！」

　そんな感動する俺を置いて魔女は立ち上がり、部屋の出口とおぼしき場所まで歩き扉に手をかけた。

　こいつは不味いぜっ、魔女の強さは俺が良く分かっている。

「ま、魔女！　頼む、カオル達には手を出さないでくれ！！」

「……………………」

　魔女は無言で振り返る……背筋が凍った。

　闇の中でも光を放つ瞳は血を映したような深紅の色。

　口が亀裂のように横に広がり中の深い闇が見えた。

　……ああ、忘れていたよ、こいつは魔女だ。

　対峙する相手は敵だろうと味方だろうと容赦しない、目的を達する為なら手段を選ばない、法という理の外側にいる外道……だから魔女なんだ。

　俺と同じく、何故、彼女が仲間内でハブられていたのか思い出したよ。

「ポー……。ポー・ヨサクル……」

　絶望的な気持ち、それでも俺は呼びかけた。

　彼女の名前、教えてもらった魔女の名を。

　魔女はニタリと笑……おうとした顔面をいい感じで分厚い扉が強襲し強打した。

　突然、乱暴に開かれた扉に、魔女の小柄な体は宙に弾き飛ばされた。

　酷く、酷く鈍い音……確実に人体が出してはいけない類のだ。

　弾かれ、壁と扉の間に綺麗に挟まれて、完成したサンドウ(・)イッチ異世界風味。

「ぐぇえぇぇぇぇぇぇ！！」

　幼女らしからぬカエルのような叫び声。

「きゃああああああああああぁぁぁ！？」

　幼女リョナ映像をライブで見てしまい俺も甲高い悲鳴を上げた。

「「ヒイロ！！」」

　勢いよく部屋に飛び込んできたのは、美しき闇と光のエルフ達だった。

　二人とも呼吸が乱れうっすらと汗をかいている、俺の姿を視認すると動きを止めた。

　この世界でも一応は健在な慣性の法則、カオリの深いスリットが入ったロングスカートが大きくひるがえり、イズミのミニスカワンピの裾も捲れ上がった。

　選ばれし者として強化された俺の目は薄闇の中でも捉えてしまう。

　低い台座の位置から見えたのは……剥き出しになった二人の丸みを帯びた女性らしい下腹部と太もも、大きく足を広げたそこに楚々とした佇まいの……女の子。

　彼女達が履いていたパンツは今現在、俺の顔の防具として装備されている。

　処理できぬ日々、そして長時間に渡る魔女の拷問に、先ほどの精神を削るような修羅場。心と体がもう限界だった。

　今までペドの汚名を着たくない、その一心で耐えていたと言ってもいい。

　正直に言おう……俺はカオルとイズミに異性として好意に近い思いを抱いている、たかだか下着一つでおっききしてしまったのが何よりの証拠だ。

　だからこそオーバーキル。

　初めて見た二人の女の子は本当に綺麗で、前世とかＴＳとか人前とか、脳内の理性的な歯止めは全て消えてしまった。

「――」

　浮遊感があった……体の自由は効かないのに何故か意識だけは鮮明で……。

　俺は女性下着(ゴッドクロス)を装着した神々しくも変態的な姿で、手足を聖者(セイント)のように磔台に固定したまま……小宇宙を高め、第七感まで到達してしまった。

　全てを開放、体が、腰がびくんびくんと震え自由になる。

　その瞬間を目撃して、驚きで目をぱちくりと開く可憐な乙女達。

　チカチカという閃光……そして全てが終わってしまった後。

　視線が合った……。

　生命の木が誕生する神秘を見届けたエロフ達は頬を染め長耳を垂れさげ……今まで見たことないような優しい笑顔を見せてくれたのだ。

　俺は……漢泣きした。

　――――

　拘束から解放された俺は、カオルの豊かな胸に抱きつき顔を埋め、子供のようにエンエンと泣き続けた。

　その間「今回は正妻権限で私ね？」とか「仕方がないですね、次はわたくしですよ？」と聞こえた気がしたけどどうでもよかった。

　何故なら俺の体と心は、汚され、恥辱にまみれ、酷く疲弊していたからだ。

「えぐっ、えぐっ、カ、カオルぅ……お、オデ、オデ……」

「大丈夫、大丈夫よ、泣かないでヒイロ」

　カオルがしんなりと優しく慰めてくれる。

　柑橘系の果実のような香りとわずかな汗の匂い……不快ではないむしろ好きだ。

　艶やかな褐色肌、重さと張りのある双丘に安らぎを覚えた。

　震える指で触れると、しっとりと馴染み、たぷたぷとして柔らかい。トックントックンと眠気を誘う心臓の鼓動が聞こえる、ああ、ああ……心地が良い。

「よしよし、良い子、ヒイロは良い子ね」

「うー、うー」

　俺がこれ以上傷つかないように、傷つける者から守るように、包み込むように抱擁してくれるカオルは唯々優しい。

　首筋と背中をあやすようにぽんぽんと一定のリズムで撫で叩いてくれる。

　深い、深い、母性を感じる……。

　温かいよ、カオルの中は温かいよ（おっぱいの谷間）

　……もう……この胸から……離れたくないよぅ。

「よ～しよ～し、ママとおっぱい、いっぱいしましょうね～」

「あ”ー、う”ー、マ”マ”ァー」

　心の隙を突かれ、カオルのおっぱいによって幼児にまで叩き落とされた俺。

　復帰できたのは宿屋に戻ってからだった。