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第1話 世界は二行で救える

 王国にある一番の高級娼館で一番の高級娼婦を頼んだ。

 褐色の肌をもつ極上の長耳美女が俺の前に現れる。


「お前、ひょっとしてヒイロ……ヒデオじゃないか?」

「え、うん、そうだけど……なんでその名を?」

「オレオレ! オレだよカオルだよ。漫研のカオル!」

「え……ま、まじかよ!?」


 俺は全財産をはたいてダークエルフの高級娼婦を身請けした。

 


 俺の名はヒデオ、あだ名は英雄 > ヒーロー > ヒイロだ。

 こちらの世界ではあだ名のほうを名乗っている……中二病? そうかもしれない。

 不本意ながら前世ではバスの崖下転落事故で死亡した。


 死後よく分からぬうちに出会った神様にスマススマヌといきなり土下座されたので、恐れ多くて土下座を返したら更に土下座を返されて、更に土下座を返し返し返した。

 そしたら、くどいって神様に頭踏まれて異世界へと蹴り落とされしまう。


 王国の城に召喚された俺、世界の危機なんです魔王を倒してを了承。

 仲間を集めて何だかんだで炎の紋章的なロープレして魔王討伐に成功。


 その後、良い感じになっていたお姫様に告白したら生理的に無理ですと泣かれて土下座された。俺は泣いた。二番目に良い感じだった聖女に告ったら、貴方からは濡れた犬の匂いがするし生理的に無理ですと泣かれて土下座された。

 

 俺は居た堪れなくなり土下座して彼女達の前から姿を消した。


 そして色々場所を旅して女の子の危機を救ったり、女の子の親の仇討ちしたり、女の子がいる寒村開拓とかアレコレしてみたんだけど、告白するとどの女の子も最終的に生理的に無理ですって泣いて土下座してしまうのだ。俺は孤独に震えた。


 自分のツラが最高にキモイことは理解している。


 エロゲーなら催眠スマホとか使って女の子にキモエロイことをするキモキャラだって、漫研のキモいエロゲーマイスターにもお墨付きを貰っているほどのキモさだ。

 それでも剣と魔法の世界なら、力こそパワーの世界なら顔なんてどうとでもなると思っていた……でも俺のキモ顔は異世界でもどうにかなるレベルではなかったようだ。

 別にハーレムなんて望まないしいらない、ただ世界を救う偉業を成し遂げた自分自身に、ご褒美ってやつが欲しかっただけなんだ。

 そう、素人相手ではご褒美はどうやっても無理だと悟ってしまった。そこでプロのお姉さんにお願いすることにしたんだよ、ご褒美……卒業式ってやつをさっ!


「俺さ、一応は魔王を倒してこの世界救った英雄で名声と金だけはあるから、どうせなら王国一の最高の美女で童貞卒業(・・・・)してみようと高級娼館に来たわけよ。男になりたくて来たわけよ。そして頼んだら出てきたのがお前だったんよ!」


 俺は安宿屋のベッドの上で悠々と寝っ転がる、月光のような白銀色の髪に艶やかな褐色の肌を持つ美貌のダークエルフに指を突き付けた。

 ぱん、きゅ、ぱんの匂い立つような無駄に魅惑的な体……。

 中身がこいつじゃなければ一晩中肉欲に溺れて延長までしたかもしれん。

 ああ、そういえば思い出したわ。こいつは男の時も隙あればどこででも直ぐに寝っ転がる汗疹だらけの物臭なキモデブだったよ。

 

「へぇ~そんなことあったんだ。ヒイロ、大変だったんだなぁ」

「そうだよ大変だったんだよ! オマエのお陰で一文無しだよ!!」

「あはーごめん、ヒイロ、ごめんなぁ」


 王国一の元高級娼婦……ではなく元漫研仲間のカオルはベッドで横寝したまま、瑞々しい唇から小さく舌を出し、むちっとした長く美しい二本の足を交差させ俺の方にスッと差し出してきた。


「というかオマエさ、何でダークエルフで高級娼婦なんてしてたんだよ?」

「んーそりゃ、バスで事故って神様に出会って、土下座されて苛ついて頭踏んでやったらこの世界に落とされて、そしてダークエルフで女になってたのよ」


 カオルは薄いネグリジェの胸元を指先で大きく開く。

 メロンのようなサイズの球体がたぷたぷと揺れ、先端の薄い桃色が見えていた。


「……じゃあ、娼婦になったのは?」

「ああ、それは生まれ故郷のダークエルフ村が小さい頃に盗賊団に襲われてね。奴隷から、流れに流れて娼館に売られて今に至るってわけ」

「お、おう……中々に重いな」

「うん、改めて考えるとそうだよねー」


 カオルはベッドの上でうつ伏せの姿勢になると、肉付の良い重量感のあるお尻をフリフリと高くもち上げる。Tバック……いや尻肉の谷に紐パンがいい感じで食い込んでいた。


「あ、あのさ……」

「うん、どうしたよヒイロ?」


 ダークエルフの美女は妖艶に微笑んで足を開くと、椅子に座る俺の太ももの上に対座で腰を下す。そして俺の首後ろに抱きつくように手を伸ばし、キモ顔を大きくて柔らかいおっぱいの谷間に押しつけ包み込んでパフパフ、とてもよろしい匂いがした。

 ああ……不覚ながら、不覚ながら非常に気持ちが良かったよ。

 俺はオ〇禁一週間を達成するに匹敵する、鋼のような精神力で乳の間から顔を突き出すと、カオルの華奢な肩をつかみ早口で叫んだ。


「ねえ! ねえってば!? さっきから君は何やってるわけ!? というか何で俺の股座に平然とデカケツを下ろして、おっぱいぷるんぷるんさせて、自然な感じでだいしゅきホールドしてるわけ!?」

「え、何やってるって……ヒイロ、私とナニ(・・・・)したくないの?」


 カオルは本当に不思議そうにつぶやく。

 見つめ合った……完璧な黄金率を描く美しい顔立ち。長いダークエルフ耳が緩やかに上下していて、あざといくらいの愛らしさだ。

 俺はカオルをベッドの上に放り投げて、宿屋の壁に思いっきり頭突きをかました。


「あはぁん、ヒイロったら激しいっ!?」

「ぶらぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 元漫研仲間の元キモデブはすっかりメス堕ちしていやがった。

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