偽りの王
「民が望むは完璧な王
何にも汚れず何にも穢されず何にも犯されぬ高貴な王
国に尽くし民に尽くし国を思い民を思う優しき王
人に尽くせぬ王ならば
それは王ではなく
ただの暴君
ならば私は
少しでも理想へと近づこう」
声がする
「write」
焔の中から
「fakearthur!!」
影が入る
英雄の
脇役を悪から守る為に
その|少年(千夏)は|僕(脇役)を守る為に
英雄の力を振りかざす
「大丈夫か!?真琴!」
「……ぁ……っ」
「おい!!返事しろ!!」
「後ろ!!」
ガァァァァン……
千夏の後ろに迫って居た炎はしかし千夏に当たる前に何かにぶつかり霧散した
「ちっ 偽王か 邪魔すんなよ」
「その蔑称は辞めてくれないかな?あと邪魔なのはお前だからさっさと帰れよ焔神」
「ハハハハハ」
「ふふふふ」
「「殺す!!」」
かまってちゃんと呼ばれた男が大地を踏み鳴らす
それだけで地が砕け火柱が上がるが
「届かねぇよ」
千夏を境にして火柱が止まる
そして千夏は踏み込み男へ突っ込んでいく
その右手には光が集まり一本の剣ができていた
「偽りのーー」
途中距離で千夏は止まり
「ーー聖剣」
振り切った
刀身から放たれた斬撃が閃光が男に降り注ぎ視界が白く染まる
そして視界が戻ったその場所には
抉れ蒸発しすり鉢状に削れた地面とその中央に
無傷の男がいた
「きかねぇなぁ」
全身から煙を放ち
しかしその身体には1つの傷もなかった
なんだあれ……
あいつら化け物かよ
その場で展開してるのは
殺意と殺意の応酬
所謂殺し合いだった
だけど普通の殺し合いと違うのは互いに決定打がないということ
相手の一撃は確実に捌き防ぐ事ができるが
自分の一撃も完璧に返される
一種のダンスのようにも見えるやり取り
違う点といえば
千夏はどっちかと言うと守る戦いであり
男は殺す戦いという事くらい
それを見て俺は
千夏から守られているのに
心の底から
妬ましいと、羨ましいと、それを寄越せと思ってしまった