表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3:秘密の話

私は怒っていた




ちょっと変な流れではあったものの


男子と付き合うことになったその日に、相手方がいきなり失踪していたからである


正確には失踪ではなく、単に早退との事だったがイライラする




私の中の常識だと、付き合ったカップルは学校帰りなどを一緒にするはずだった


今日はまぁ彼氏の方が倒れて保健室に運ばれたのだから、早退も想定していたんだけど


彼女である私に一声かけても良かったじゃないの?って思う


あぁ、なんかむかついてきた・・・


殴りこみに行こう!


そう思った私は、すぐに仮病を使い学校を早退した




ヤツの家を見つけるのは簡単だった


海中都市に引っ越してきた際にもらった、タウンマップを見たからだ


これは、海中都市に何かがあった際に緊急物資保管庫の場所、避難経路などが記載されている


また、身分証明や点呼などに使われるため住人一人ひとりに配られているものである


それ故、ご丁寧な事にそれぞれの家の位置まで載っている




私は、タウンマップの情報を元にヤツの家に向かった




「いた!」




ヤツの家を窓越しに覗き込むと


ヤツは誰かと話し込んでいる


親だとは思うが、そんなのはどうでもいい


ヤツに一言言わないと、私の怒りは収まらないからである




私は、突入を決意した


邪魔なドアを勢いよく開け、そして叫んだ




「なんで、先に帰ったの!!!!」




----------------------------------------------------------------




綺麗な長髪を振り乱しながら、不法侵入をしてきた女は激高していた


そんな女を見て親父はぽかんとしている


俺もこんな状況は経験したことがないので、どうしていいかわからず何も言えずにいた


乱暴な不法侵入が目の前で起きたのにも動じず、親父は冷静に




「お前の友達か?」




と、俺に質問を投げてきたが・・・




「彼女です!」




と、即座に暴走した彼女が回答した


さすがの親父もそれにはビックリし、目を見開いていて暫く固まっていたが


博識であり、会話をする時はいつも冷静沈着でクールな親父の珍しい顔を見れたのは


親父が彼女の存在に気が付いた、その時までだった




「その声は・・・


 もしかして、佐藤総理の所のアカリちゃんかな?」




そんな親父の質問に暴走女は一瞬ハッと驚き、親父の事をじろじろ見始め


しばらくすると暴走女は親父の事を見て、ビクビクと震えていた




Deep sea計画責任者の一人である親父は、移住者の個人情報を知っているので


暴走女の事は知っているのであろう


だが、暴走女も俺の親父を知っているようだった


それも、さっきまで暴れていたのに、一瞬でビクビクするぐらい怯えるほどの存在らしい


俺の知らない所で、同い年の子供が親父と知り合いだった事にびっくりしたし


なんか、モヤモヤした気持ちになった


そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、親父は彼女との関係を話し始めた




「ん?そうか!?


 そういえばお前は、俺とこの子が知り合いだって知らなかったな


 この子は俺の恩人の孫娘で、この子が生まれた時から知っている


 お前達は覚えていないと思うけど


 1歳のなる頃まで、同い年のお前とこの子の二人はよく同じベットで寝てたんだぞ


 みんなでオムツを替えたのも懐かしいな」




「・・・


 博士!若干セクハラですよ!」




と、暴走女は静かに怒った




「おっと、ごめんごめん


 でだ、その後この子は家の都合で地上へ引っ越す事になったのだけど


 地上の治安情勢が安定していない時期は、海上のギガフロートにある俺の研究所に


 避難しに来ていたんだ


 大人しかったお前と違い、今日みたいに当時からやんちゃだったこの子の行動は


 避難民に寛容な研究所職員内でも議論の対象になるぐらい、ひどくてね・・・」




「ごめんなさい・・・」




と、暴走女はしょんぼりした




「そんな職員達の不満を解消すべく


 昔からの知り合いだった俺はこの子の生活指導係になったんだ


 もちろんこの子の親代わりである、佐藤総理に了承を得てね


 それはそれは、大変な日々だったけど最終的には改心してくれたみたいで


 大人しい、いい子になったはずだったんだけどね・・・」




そう話すと親父は、暴走女が蹴り飛ばし半分凹んだ玄関ドアを見る


暴走女はその目線に気が付くと、親父に向かってごめんなさいと何回も謝るであった




「でも丁度良かったよ!


 さっき、お前に話した仕事だけどアカリちゃんにも依頼する予定だったんだ


 家に行く手間が省けたよ」




えっ?


なぜ、この暴走女が?っと俺は思ったが


親父が仕事を依頼をするという事はこの女には技術があるのだろう


親父の判断はいつも的確だ




親父が仕事の流れを暴走女に話すと、暴走女は納得した表情で親父に話しかけた




「なるほど、了解しました


 博士の依頼とあれば、従わないわけにはいけませんしね!


 それに戦争もまた始まりそうですし、DS3の建設は急務ですもんね・・・」


「そうだね・・・」




戦争が始まる?


暴走女が発した言葉に俺はびっくりした


戦争とは、国同士がそれぞれの主権や領土を主張し、相手からそれを奪う行為だと授業で習った


それによって引き起こされた武力衝突でたくさんの人間が殺されていく事も


そして、それは日本も例外ではなく


超巨大地震によって、国家機能がマヒしている間


近隣諸国からの介入があり、小さな戦闘が度々起きていたらしいが


最近ではそういう事もなく、日本は復興の道に着々と進んでいるはずだ




だけど、また戦争が始まる


それを親父も暴走女も知っている・・・


俺は疎外感を感じながらも、これから話始めるのであろう


二人が知っている秘密の話が気になって気になって仕方がなかった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ