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1:転校生

それは突然の事だったらしい

2019年11月30日

日本で大地震が発生した

最初に発生したのは東京

大きな縦揺れと長い横揺れで一軒家などは崩壊し、耐震設備が整っているマンションもヒビが入るほどであった

道路は電柱などが倒れ緊急車両などの交通を妨げていた為、消火活動や救助活動に支障が出たそうである

そこまでは、東京で起こりうる想定内の地震被害であった

だが、この地震の本当の被害はこれからである


最初の地震とその後の余震は東京湾沖で連続で発生していた

地震による衝撃波で波が生まれ、その波が東京湾に侵入していく

波は障害物にぶつかると跳ね返り、反対の方向に新たな波を発生させる性質があり

湾状である東京湾は波同士がぶつかり合い、新たなる大きな波へと変わっていった

俗にいう津波である


東京湾に侵入した津波は、まず湾岸エリアを飲み込み

海抜が低い江戸川区、江東区等もあっという間に海水の中に沈んでいった

その後も進行は収まらずに、各地の川を伝い東京の街を飲み込んで行った


それでも、その時の東京にはまだ"陸"が存在していたらしい


連動して日本各地で地震が大地震が発生し

結果的に津波や地殻変動の影響を受けた東京は海の底に沈んでしまった


その後の日本は大変だったらしい

30年経った今でもその爪痕はいたる所に残っている

他の国に攻められたり、経済が混乱したりもしたが日本として機能を続けている


だけど、今の時代を生きる自分たちはとっては慣れた状況であるから

環境に恵まれていないとは、あまり思っていない


新しい形での復興"Deep sea計画"(通称DS計画)

海中にドーム型の都市を建設し、人々を住ませる計画であった

計画自体は様々な困難があったらしいが、なんとか15年後に完成

その年に俺も生まれた

プロジェクトメンバーの一人である俺の親父が、この街の移住者の一人であったため

俺もずっとここに住んでいる

だから俺はこの環境しか知らない


外から来た新規移住者は必ず不満をもらすが

俺にとっては、これが普通なのである

最近、群馬って県から転校してきた女もそんな奴だった

"陸とは違って空気がどんよりとしている"とか"食べ物は魚ばっかなの?野菜を食べないと肌に悪いわ"とか

海中都市のすべてを否定してくる勢いであった


クラスのほとんどは第一次移住者ではない為に、その女に同感しているが

第一次移住者であり、DS計画のプロジェクトメンバーである父親を持つ俺にとって

許しがたい発言だった


「おい!!転校生!この街を馬鹿にするのも大概にしろ!」

「はぁ!?思った事を言って何が悪いの?それに他のみんなも納得してたじゃない?」

「そうだけども・・・」

「わかったなら、茶を濁すような話はやめてよね

 ただでさえ、こんな閉鎖的な街に来てイライラが溜まっているのに・・・」


外の県から来た連中はみんなこいつの意見に納得している

だが、最後の発言には俺以外の何人かの気にも触れたらしい

その何人かと俺は、その後もこの女に対して怒りを言葉に乗せぶつけた


「あぁ~もう、うるさいわね

 はいはい、もうわかったから静かにして」

「つくづくむかつく奴だな」

「別に貴方に好かれても、何の得にもならないし」

「なんだって・・・!?」


俺は怒りに耐え切れずに手を出しそうになったが

女に手を出すのは良くないと必至で拳を抑えた

だが、それを見た転校生の女はさらに挑発をしてきた


「なにそれ!?殴りたいなら殴ればいいじゃない?

 それともパントマイムでもやってるの?」

「んだとっ!!このっ!」


その言葉に反応し俺の拳は女に向かっていた


スッ


女の顔を狙ったはずの拳は空を切っていた


「あれ?そんな・・・」


喧嘩には自信があった俺が攻撃を外す事はあまりない

偶然だと思いもう一度殴る


スッ


またも当らなかった


「これなら!!」


俺はターゲットを顔から体へ、攻撃手段を拳から足蹴りへシフトした


パシッ


「ぱしっ?」


俺の蹴りは女に受け止められていた


「あんたねぇ・・・

 女に手をあげるなんて最低だね・・・」


そう言うと女は俺の足を解放した


「それに三回も連続で・・・」

「うるせぇな!当たらなかったから良いだろが!」

「まぁね・・・でも当たったらこうなるんだよ!!」


ドッ

ドッ

ドカッ


一瞬だった

女の放った二度のジャブとその後の回し蹴り

女の言葉を聞いていてガードが出来なかったが

それ以前にひとつひとつの動きが速すぎてガードを出来たのかも怪しい

倒された俺がそんな事を考えられたのは、保健室で目が覚めた時だった


気が付けば昼休みの時間

俺は保健室の先生に挨拶をし教室に戻った


「あれ?」


女がいない

手をあげてしまった事を謝るつもりだったのだが

昼休みでどこか出かけたのだろうと思った

それよりもあの女の事を思い出すと同時に

素早い攻撃の痛みを思い出してしまい身震いが起きるのであまり考えないようにしていた


そんな感じで昼休みを過ごしていたら午後のチャイムがなり

そのまま午後の授業が始まっていった

結局、女は教室に帰って来なかった


後から職員室に呼び出された俺、教室で騒動を起こした事を叱られ

同時に女が俺を気絶させた為に1週間の停学になった事を知った


「手を出したのは俺なのに・・・」

「あぁそれについては本人やクラスのみんなから聞いている

 だが、あいつ自身がそうさせてくれって言ったんだ」

「そんな・・・」


俺は罪悪感を覚えながら下校した


予定通りその後の1週間あいつは登校してこなかった

俺はその1週間、あいつの事ばかり考えていた

なぜ、あんなに強かったのか?

なぜ、自らに重い罰をあたえたのか?

なぜ、あんなにもこの街を毛嫌いしていたのか?

そんな事を考えていたら、1週間がとても長く感じた


そして1週間後、あいつは普通に登校してきた

俺はそれを確認すると、先週の詫びを入れるためにあいつの所へ向かった


「おいっ」

「何?告白でもするつもり?」


こっちの気持ちも知らず、またも強気な態度で食いかかってきた

それ以上に予想外の話をされ、少し混乱していた俺は思わず


「おぅ・・・」


っと言っていた

朝の賑やかなクラスが騒然とした

俺も自分の言葉に騒然とした

女は黙ったまま赤面していた


しばらくお互い沈黙していたが、女の方から話してきた

「ぇ、そうなの・・・まぁ、別に・・・いいけど・・・」

「ぇ?」

「別に付き合っても良いって言ってるの!」


俺はまだ状態を理解出来ずにいた

頭が混乱した俺は、脳内の処理が追いつかず

そのまま倒れこんでしまった

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