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飛ばした私の嘘真

作者: ゆぅり

「おまじない?」

「そう、おまじない。嫌なことがあったらこうしてみるといいんだよ」


夢を見た。

それは、ずっと昔の記憶

私が小学校に入ったばかりの頃の記憶。


学校帰り。

両親が共働きの私はいつも夜遅くまでおばあちゃんの家に行っていた。

家に一人でいるのが寂しかったから。


「どうすればいいの?」

「真っ白な紙に嫌なことを書いて、紙飛行機にして飛ばすのさ。

 そうすれば嫌なことがあっても忘れられるんだよ」


私はおばあちゃんが大好きだ。

おばあちゃんはいつも私の話を聞いてくれる。

おばあちゃんはいつも私を見てくれる。

おばあちゃんはいつも私を助けてくれる。


その日は学校でクラスメートに変なことを言われた。

男の子と話してばっかりで嫌なやつだって。

そう言ってその子は私を叩いた。

痛くて泣いた。


だから私はおばあちゃんの言うとおりにした。

だから私は真っ白い紙に書いた。


(今日、ともかちゃんに男の子と話してばっかで嫌なやつだって言われた。ほっぺを叩かれた。痛かった)


そう書いて紙飛行機にして飛ばした。

そうするとすごくすっきりした。

紙飛行機と一緒に嫌なことが飛んでった。

忘れていないけど飛んでいった。

だっておばあちゃんが言ったんだから。

飛んでいったんだ。


とても懐かしい記憶。

あれ以来、嫌なことは全部そうするようになったっけ。

見る人が見たらゴミを捨てるなって怒られるんだろうな。


そういえば、ここ最近はしなくなった。

ここ最近というか、中学に上がったあたりからまったくやってない気がする。

嫌なことを思い出そうにもほとんどない。

楽しいことだらけだ。

どうやら私はうまく生きていけているらしい。

おばあちゃんから教えてもらったとはいえ、いつもあのおまじないを使わなきゃいけないような人生ならおばあちゃんも心配してしまう。


いや、昨日嫌なことがあったんだった。

思い出した。

最低の嘘をつかれた。

お父さんと、お母さんに。


二人はもう定年を迎えて、のんびりしている。

今はずっと家にいる。

私の家はもう一人じゃない。


でもついて良い嘘と悪い嘘がある。

あんなの最低だ。


真っ白い紙を用意する。

紙に嫌なことを書く。


(今日、両親がおばあちゃんは30年前に亡くなっていると言っていた)


私は紙飛行機を飛ばした。

さて、今日もおばあちゃんに会いに行こう。

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