魔王
「魔王さま」
優しく呼ぶ声で目が覚める。
「ん~」
大きく背伸びをして起き上がる、いつもより体が軽い。
「ふぁ?」
病室のベッドではなくそこはクイーンサイズのベッドだった。そして目の前には骸骨が禍々しい布をかぶって立っていた。
「ひやぁ!死神!!」
私は生まれつき体が弱い。産まれてからずっと病院で生活している。私のお母さんは私を産んですぐになくなった。お姉ちゃんとお父さんがお見舞に来てくれる以外はいつも変わらない毎日。
看護師さんが起こしに来て、体温と点滴をして、ご飯を食べる。検査に言ってリハビリをする。またご飯を食べて、注射で血を抜いて、またご飯を食べて寝る。
きっと死ぬまで繰り返すルーチンワーク。でも私は明るく生きるんだ、そう決めた、でもついにお迎えがきちゃったかー
「そうです魔王様、死霊隊長のシニガミンでございます」
骸骨は不気味にケタケタと笑いながら答えた。
「はぁ??」
「無理はありません、久しぶりのお目覚めです。このシニガミンが説明させてもらいます、しかし魔王様が復活した途端に力が溢れてきますぞ!」
シニガミンこと骸骨はそれは嬉しそうに話をしてくれた。
500年前に魔物と人間の間で大きな戦いがあったこと。
勇者に魔王が封印されてから魔物達の力が弱くなっていたこと、魔王軍という謎の組織が魔王の復活を望んで、生き延びた魔物を引き連れて人間に見つからないように慎ましく生きていたことを聞いた。
「つまり、私は魔王で私がいるだけで魔物は元気になるってこと?」
「そうです魔王様、我等魔王様の復活を心待ちにしておりました、魔王様が復活したことを知れば各地に隠れすんでいる同志たちもすぐに集まるでしょう」
「魔王って行きなりいわれてもなぁ、私ただの病弱だし」
私は生まれながら人より心臓が弱いのだ。
「心配には及びません、魔王様は我等の旗印、いてくださるだけで我等魔物のちからとなります」
そう言うと骸骨は地面に文字を書き出した。床を指でなぞるだけなのに不思議と地面が光っている。
不思議と骸骨がなにをしようとしているかがわかる、魔法だ、魔法を使おうとしているのだ。
「シニガミンの名においてここに魔王様の復活を宣言する、各地に散らばった魔物達よ、その忠誠の義に参じるがよい」
地面の魔方陣が輝きを放ち、頭のなかで声が響く、つまりこれは通信の魔法なのだろう
そこから色々な形の魔物達が私の元を訪れた。
「まるでお見舞みたい」
私はクスクスと、笑って魔物たちと会話した