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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
新しい始まり編
7/63

そうだ。友情を育もう!

「青葉くん!昨日クッキー焼いたんだ。良かったら食べて?」

「いつもありがとう。井上さんのクッキーは美味しいから僕も好きなんだ」

「……っ!///」

「……っ!!だったら私、今度カップケーキ作ってくるね!」

「そういえばわたくしベルギーの有名なお店からチョコレートを取り寄せたんでしたわ。また持ってきます」

「青葉さん。僕お弁当作ってきたんです。お昼一緒に食べましょう?」

「お昼は………」

「「「…………っ!!?」」」

「天野さん!!お昼は私たちと食べようよ!女の子同士友情を深めよう?ねっ?」

「そうですわ。まずは女の子同士のお食事会に限ります」

「いえ、僕は……」

「うん。それがいいよ。早くクラスに馴染めるといいね、ユエル」

 天野さんは青葉の言葉に撃沈し引きずられるようにして去って行った。

 首を掴まれた猫のごとく悄然と項垂れる様は美少女形無しの哀愁を漂わせていた。

 



 翌日。青葉のハーレムに新たな一員が加わった。

 転校生の天野ユエルさん。美形クラスの中でも抜きん出た美貌を誇る彼女は転校初日にして大勢の人間を虜にしその日の内にファンクラブが結成されるという偉業を成し遂げた。取り巻きをはべらして踏ん反り返っても許される立場にありながら、取り巻きにいても存在感薄過ぎてあ、いたんだレベルの取り巻きその三十が似合いそうな男青葉浩一の取り巻きに加わるという俺史上最大の衝撃を与えた。…何か取り巻き取り巻き言い過ぎて訳わからなくなってきた。

 いや、前々から青葉の魔性には気づいていたんだ。特進クラスのほとんどがイケメンであるがゆえに持ち合わせていない謙虚さと親しみやすさを兼ね揃え、柔和な雰囲気が女子に安らぎを与えているということに。健全な思考を持った男子ならば羞恥に身を震わせるような少女漫画的行動を平然とやってのける天然たらしでもあるが。

 青葉はイケメンではないがブサメンでもない。顔立ちは地味で人目を引くものではないが素朴さが青葉の持つ良さを最大限に生かしていた。おまけに青葉は誰に対しても恋情や打算、欲といった感情を見せなかった。

 俺も中学の時経験したが俺に近づいてくるやつの大半が俺の容姿だったり家柄だったりそういう“外見”に惹かれてやってきた。中身を見られないというのは女子にとって辛いものだったのかもしれない。まあ、俺は女子なら腹の中に何を抱えてようがウェルカムだったけどな。

 外見に拘る事もせず美少女であろうがそうでなかろうが青葉は態度を変えたりしない。自分の中身だけを見てもらえるというのはなおさら心地よいものなのかもしれない。…そこから女子の本気度が窺えるというものだ。


 俺は目の前に座る青葉をじーっと見つめる。最初は黙々と弁当を口に運んでいた青葉だが俺の視線に気づき顔を上げる。見る間に頬が赤く染まり落ち着きなく目をきょどらせる。

「あの…二階堂くん?僕の顔になんかついてる?」

 首を傾げてポケットから取り出したハンカチで口元を拭う。実を言うと特進クラスのハンカチ所持率は九十九パーセントだ。ちなみに残りの一パーセントは俺だ。男子は普通持たないよな?袖で事足りるよな?…これ以上は俺の好感度が下がりそうなので自重しよう。元からないとかは受け付けない。絶対に。

「お前、転校生とどういう関係?」

 結局聞けずじまいだった疑問をここで出してみる。青葉は常にハーレムに囲まれているためどういう関係か聞くなら今しかない。彼女たちがいては答えづらい質問も俺だけなら教えてくれるかもしれない。何てったって青葉の方から友達を申し出てきたぐらいだからな!そこに関しては美少女にも負けてないぜ!…あれ?女子と張り合ってどうすんだ、俺!あまりにも女子に敵視され過ぎてここに弊害が…。

 青葉は俺の葛藤には気づかず考えるような仕草をした。答えあぐねている様子にやっぱり付き合ってるのかと俺は焦る。いや、天野さんが青葉狙いであるのは転校一日目にしてすでに周知の事実だが俺は認めていない。青葉の気持ちが天野さんに向いていなければ俺にもまだチャンスはあるはずだ。

 青葉には井上さんあたりがいいんじゃないかな。世間一般から見ればそれも釣り合わないとか思われるだろうが実際は青葉に選ぶ権利が与えられているのだ。くそっ、羨ましい奴め!

「ユエルはなんていうか…昔の恩人なんだ。僕にはやりたいことがあって、でも出来なくなってしまって。そんな時ユエルが僕にもう一度チャンスを与えてくれた。ユエルにとっては役目だったからかもしれないけどそのおかげで僕は救われたんだ。だからすごく感謝してる」

 つまりなんだ?昔の知り合いでってことは幼馴染か?そのやりたいことについて励ましてもらったとか?よくわからんが非常にやばい気がする。青葉が天野さんに抱く思いは恋心ではないのかもしれないが特別に思っていることは必至だ。

「ふーん。そういえば転校生と昼食べなくて良かったのか?弁当作ってきたとか言われてなかったか?」

 ふと思い出す。天野さんの手作り弁当発言はばっちり聞いていた。そこまで俺の好み!と興奮を覚えたものだ。

「僕には自分のお弁当あるし…」

 俺は学食か購買でパンを買っている。前世は母ちゃんの冷凍食品で固められた手抜き弁当が常だった。今は家が裕福かつ両親が共働きのため弁当などたまにしか作ってもらえない。自分で作るという選択肢はもちろんない。そのため手作り弁当は憧れのまた憧れだった。対して青葉はいつも手作り感満載の弁当を食べている。だし巻き卵にウインナー、ミートボールなどなどなど。なんとも食欲をそそるラインナップだ。

「いいよな、青葉は。弁当作ってくれる人がいて」

 ここでも俺と青葉の格差が…。美少女に付属して手作り弁当まで確保してるなんて。どんだけ贅沢なやつなんだ!俺は恨みの篭った目を向けるが青葉は自身の弁当に視線を落とし徐に口を開いた。

「……僕が作ってこようか?」

「………は?何を?」

「だからお弁当。これも僕が作ってるんだ」

「…………は?」

 俺の気のせいだろうか。青葉が弁当を作ったように聞こえる。俺は恐る恐る確認をとるため青葉に問いを重ねる。

「青葉、料理出来んの?」

「うん。一応趣味なんだ」

「まじで!?そんな特技隠し持ってたのか!?」

「ま、まあね。毎朝家族の分作ってるんだけど、そのついででいいなら二階堂くんの分も用意出来るよ」

「頼んだ!!材料費は出す!」

 いつにない俺のテンションの高さに青葉は引き気味だがそんなの構ってられない。美味いには美味い学食が味気なく感じ始めていたのだ。この際男の手作りだろうがなんだろうが弁当が食べれるなら問題ない。むしろ前々から狙ってたのだ。それを青葉が作っていたなんて。棚からぼた餅な展開に俺は当初の問題なんて忘れさっていた。

「じゃあ、さっそく明日、作ってくるよ」

 青葉はなぜか嬉しそうに笑って快諾してくれた。

「おう、よろしくな!」

 やっぱり持つべきものは料理の出来る親友だよな!

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