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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
新しい始まり編
5/63

あれ?俺の存在は……?

 転校生の天野ユエルは当然その日の話題を掻っ攫った。転校生という立場に加え美形クラスの中でも引けを取らない美貌と学力。全学年が彼女に注目するのは仕方ないことだ。

 野郎共は新たな美少女到来に狂喜乱舞し、ミーハーな女子は早速品定めのために我らがクラスに休み時間の度に押しかける。特進クラスはAクラス以下とは別校舎にあるため比較的静かな環境にあるのだが今日はその静寂も吹っ飛び祭りでもやってるのかといっそ感心する程の賑わいを呈している。

 しかし廊下からクラスを覗き込んでも転校生の姿を拝むのは難しいだろう。

 いつもは青葉を囲んでのハーレムが目立つが今日ばかりは美少女が美少女を囲む純正美少女ハーレムが構築されているからだ。

 かく言う俺はもちろん転校生の隣の席であるために邪魔者扱いの末追いやられ教室の隅からその様子を眺めている。

「前はどこに住んでたの?」

「上の方です」

「上野?結構遠くから来たんだ」

「天野さんってすっごく可愛いよね!どんな手入れしてるの?」

「特には何もしてないですよ」

「うっそ〜〜!?そんなに肌綺麗なのに〜!?」

「羨ましいですわ。私なんて一日でもさぼってしまうと荒れてしまいますもの」

 髪も綺麗だよね。長いのに毛先までつやつやだし」

「フフフ。ありがとうございます」

 ここは天国か?楽園か?天使たちが戯れてる。見える。俺には見えるぞ。天使の羽が。こっちを見ても美少女。あっちを見ても美少女。

 ありがとう、天野さん。

 あなたは俺に恋心だけでなく男の夢を与えてくれました。

 中心が青葉じゃないだけでハーレムがこれほどまでに心をときめかせるものだったことを思い出せました。

 しかしその感動も虚しく彼女たちの話題は俺の望まぬ方向に流れていった。

「……ところでさ。青葉くんとどういう関係なの?」

「そうそう!なんか親しげだったよね!?」

 とうとう禁断の質問が飛び出した。俺は耳をダンボにして聞き耳を立てる。

 ちらりと青葉を見れば珍しく一人で、そわそわとして落ち着かない様子だ。青葉に限ってハーレムを取られてというわけではないだろう。天野さんとの関係を言及されたくない。けれど転校生との交流に口出しも出来ないといったところか。

 ここでも青葉の名が話題にのぼる事は若干気に食わないが、天野さんとどういう関係か俺もものすごく気になる。ただの知り合いなのか、大穴で親戚というのもある。いや、そうに違いない。そうすれば名前呼びにも納得がいく。恋人なんていう選択肢は決してない。だって青葉だぞ?女子よりも俺と話す時の方が嬉しそうな青葉がそんなまさか。俺も青葉に問い詰めたいところだが今は天野さんの答えを待つ。

「それは……秘密、です」

「ええ〜〜っ!?それ余計気になるよ!」

「幼馴染とか?でも青葉くん生まれも育ちもここって言ってたから天野さんがこっちにいたことがある?」

「いいえ。初めてですよ」

「じゃあ。ネットとか?」

「青葉くんそういうのあんまりやらないよ」

 美少女たちは青葉と天野さんについて憶測を交わすが謎は深まるばかりだ。

 天野さんはのらりくらりと答えをはぐらかしその状況を楽しんでいるようにも見えた。



 そんなこんなで一日を終えた放課後。事件は起こった。

 更に天野さんを問い詰めようと女子たちが集結する前に青葉が天野さんの元へ行きその腕を取ると教室を飛び出した。

 運動音痴の青葉が見せる鮮やかなまでの二人の逃避行を俺たちは唖然として見送ることしか出来なかった。

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