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3-1.Reincarnation -Lecture-


「まず、このエネキノコというのは薬の原料になるモンスターなの。ギルドに報告すれば薬問屋に卸されてその卸値が私達の報酬になる。


 次にデクビースト、ウッドソルジャー、ツルクサボウズは、服等の繊維に使われるわ。こちらもギルドに報告して卸値が報酬になる。討伐した後のクエスト受理の証書を衣服などの装備の店に持って行けば、ちょっとくらいなら値切れるのよ。ちなみにウッドソルジャーは割と出現率が低いから、見つけたらすぐに知らせる事。何気に攻撃力も高いから、魔攻でさっさと倒した方が早いわね。ちなみにコイツは弓や銃なんかの遠距離系の物理攻撃は受け付けないから注意すること。


 その次がマッスルシシーとゴブリンね。これは毛皮なんかの皮が主な使用用途になるわね。マッスルシシーの毛皮は安価で街で取引されている素材の一つでもあるから、後で市場でも見ておけばいいと思うわ。ゴブリンの方は、毛皮では使われないけれど、主にその装備品等が加工されて私達の装備に流用される。どちらのモンスターもそれなりの数が街の外に常に出現するうえにそこそこの戦闘力を持っているから、討伐にはそれなりの需要もあるのよ。もっとも、戦闘力はともかく、知能はかなり低いんだけどね。


 コウラリアンとマジロックスは、どちらも甲殻類型のモンスターね。言わずともわかるかもしれないけれど、その甲羅や硬い皮膚が加工されて、武器や鎧などの防具になるわ。さっきの衣服の素材と一緒でこいつらも討伐の証書を店に持って行けばまぁそこそこ値切れるわ。剣や鎧を充実させたいならこの2つのモンスターのクエストがかなり適当で常に依頼もあるからおススメかしら。


 他にもいろいろなモンスターがいるけれど、たまにモンスターが装備品自体を落とすこともあるわ。ハンターの間では『ドロップ』と呼んでいるけど、このドロップ品は以前にそのモンスターに倒されたハンターの持ち物ってことが多いらしいわ。つまり、装備品をドロップしていくようなヤツはまず、そこそこの戦闘力があるとみて間違いないわね。

 あ、ドロップ品はもちろんそのまま拾って自分のモノにしてしまっても構わないのよ。自分の職業(ジョブ)の装備ならそのまま使えるし、違う職業(ジョブ)の装備なら自分の装備の強化にも使えるし、交換や換金に回すのもアリ。要するに落し物と同じ扱いよ。拾ったモノは拾い主のモノってこと。


 あと、モンスターによっては、物理攻撃を受け付けなかったり、逆に魔法攻撃を受け付けない種類のモノもいるから注意するのよ。

 今回受諾した中で物攻を受け付けないのは、近距離だと特にいないわ。もちろんそういう風に受諾してあげたのよ、感謝なさい。

 あ、さっきも言ったけど、ウッドソルジャーだけは遠距離物理攻撃を受け付けないから、それだけは注意して。まぁ、魔攻か至近距離での物攻なら有効だから、最悪ジュンでも倒せなくはないけど、結構強いモンスターでもあるから、見つけたら私を呼ぶこと。コイツに関しては狙撃手のウヅキは戦力外だから肝に銘じておきなさい。

 逆に魔攻を受け付けないのは、今回は受諾していないわ。物攻がアンタたち2人だけじゃ不安だったし、採集系のクエストの対象になるようなモンスターで魔攻が効かないって言うのはほぼいないわ。強いて言うなら、ツルクサボウズには炎か氷系以外の魔攻は効きづらい、くらいかしらね。私には関係ないけど。

 ちなみに、甲殻類型のモンスターは文字通り硬いから、物攻が効きづらいの。全く通用しないわけじゃないけど、あまり効果がないのよね。魔攻で一気に片付けた方が早いから、こいつらも見つけたら私を呼ぶこと。


 それと、昨日みたいに『闇堕ち』が出現する可能性も無くは無いわ。確率的には非常に低いけれども、もし見つけても単独で戦闘を挑んだりしない事、特にジュン。私やウヅキの様にカンストしてるならともかく、LV.34程度じゃまずお話にもならないわよ。

 基本的に、物攻系の『闇堕ち』には魔攻は効きづらくて物攻が有効、魔攻系の『闇堕ち』には物攻耐性があって魔攻が有効ってことだけは覚えておきなさい。コレは普通のハンターにも言えることなんだけどね。


 ……何か他に注意事項があれば、適宣伝えていくから。わかった?」


 クエスト出発前の一時間半、俺とウヅキに向けられたエルからの講義の内容は主にこんなカンジのモノだった。一通りの説明が終わった後に、俺とウヅキがちゃんと理解しているのかテストまでさせられたので、1時間半という時間を費やしたのだった。ちなみに講義自体は30~40分程度で済んだと思うのだが、テストが長かった。口述で行ったのだが、俺とウヅキが揃って満点の答えを出すまで延々と続けられたからだ。基本的にエルは完璧主義だという事が、俺の中で完全に確信に変わった。

 その後、エルは俺に向けて完全個人授業で装備についての講義を賜った。が、何が何だかサッパリな上、非常に種類が多い。結局、コレに関しては実物を見て決めた方が早いとエルも判断し、30分程度で済んだのだった。一応どのような装備がイイかだけは考えておいてとは言われたものの、具体的なイメージ等も特に浮かばず、ようやく絞り出せた答えが「一番良い装備で頼む」の一言だった。

 つまり、俺は装備面に関しては完全にエルに委託する形になったのだが、当のエルは俄然やる気が沸いてきたと言わんばかりの様子だ。……人には得手不得手というモノがあるのだから、これでいいんだと俺は心の中で自分に言い聞かせていた。




「ウッド出たぞ!」

 俺達は、イーストフローラの街から東に広がるフローラフォレストという森に出て、採集のクエストを行なっていた(森の名前は街から出る際に見かけた看板に記載してあった)。どうやら俺とウヅキは最初の町(「ラストフローラ」という名前らしい。エルに聞いて知ったのだが。ちなみにウヅキと出会った街が「ラルフローラ」、ラルフローラからクエストに出た森が「ラルフォレスト」、森からイーストフローラまで広がっていた平野は「フローラ平原」というらしい。)からずっと東に向かって進んでいたらしく、この地域全体を「フローラ地方」と呼んでいるようだ。イーストフローラはそのフローラ地方の西端に位置するとともに、フローラ地方最大の発展都市というワケだ。


 どうやらウヅキがレアモンスターであるウッドソルジャーと遭遇したらしく、俺とエルを呼ぶ声が聞こえる。俺はすぐに向かおうとしたのだが、エルの方が近くに居たらしい。すぐに魔法によるだろう爆発音と硝煙の様な臭い、冷気が流れてきたので、エルが瞬殺したことが分かったので俺はウヅキ達の方に向けていた脚を止め、再び採集対象の捜索に戻る。

「倒したからジュンは来なくて大丈夫よ」

 エルからも改めてそう声を掛けられたため、俺は改めてモンスターを探していた。

 正直言うと、ラルフォレストの時の様に、不意にユニが出現するのではという不安が付きまとうのだが、今はクエストに集中しようと俺は必死だ。

 エル曰く、このフローラフォレストには様々なモンスターがいるらしく、大抵の採集クエストであればこの森だけで事足りるらしい。ラルフォレストと比較してもかなり広大な面積であろうこの森を地図で確認した後の今ならば、確かにそれも頷ける。

「おい、またウッドだ!」

 どうやらウヅキは立て続けにウッドソルジャーに遭遇しているらしく、半ば悲鳴じみた声を上げている。……遠距離物攻の効かないウッドソルジャーだが、もしかすると意図的にウヅキの前ばかりに現れているのではないだろうか。どうせまだエルが近くにいるだろうと判断し、俺は他のモンスターを探す。途中で、エルに渡されたクエストの受諾書を確認すると、目標の討伐数にはまだまだ遠いことだけが分かった。ちなみにこの受諾書、何か魔法が掛けられているのだろうか、仕組みは分からないが、討伐数が自然とカウントされるようになっており、受諾しているクエストとその進捗状態が一目でわかるというなかなか便利な仕様だ。

「ちょっと、ジュンもこっち来なさい! ウヅキったら、ウッドの群れに突っ込んだみたいよ!」

 やたらウッドソルジャーと遭遇すると思っていたらそういう事だったらしい。俺はようやくウヅキとエルに合流し、剣を(ふる)う事となったのだった。


「午前中だけで、かなり経験値溜まったんじゃない?」

 昼になり、その場で仕留めたマッスルシシーの肉を持っていた香草(未だに何の種類なのかわからないので、後でエルに確認してみようと思う)で焼いたものを食べている時に、エルがそう言う。俺以外の2人はカンストしているので、無論その言葉は俺に向けられたものだ。

 促されるままにステータスを確認する。


 ジュン-男

 属性-火 職業-剣士 Lv.57

 称号-駆け抜ける初心者(ホープネス・ルーキー) 通り名-なし

 周回数-1(+1)


「こんな称号あるのね。知らなかったわ」

「オレも」


 ……どうでもいいんだが、称号や通り名が異様にイタい気がするのは気のせいだろうか。

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