表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/36

2-4.Party -Three Munsell-

「『ジュン』にやられた時のパーティはね、要はただの寄せ集め集団よ」


 ようやく本題に入ることが出来た。散々横道に反れた話題だったが、エルの方から軌道修正されてようやく本題に戻ることが出来た。

「え、だってさっき『仲間たちの仇』とか言ってなかった!?」

「だってそう言っておいた方が何かカッコ付くじゃない」

 エルの言葉に戸惑いながらもツッコミを入れるウヅキにあっけらかんと答えるエル。ちなみに俺はあきれ果てて言葉も出ない。カッコつける為だけになんかイイ感じの言葉吐いて俺に杖向けたのかこの女……。

「とあるクエストのために適当に集められただけのパーティだったのよ。まぁ、私は一人目の仲間が『ジュン』にやられているの見た瞬間にパーティ解除して逃げたけどね。目的のモンスター自体は討伐していたから、あとは報告さえすればクエスト完遂だったのよ」

 気怠げに髪の毛を指で弄びながらそう言うエル。何気に結構とんでもない事を言っているような気がするのだが、当の本人はさも当然の様に話している。

「でもソレって、結構ひどいんじゃないか? 一応仲間だったんだろ?」

「何言ってんのよ。所詮クエストのためだけに寄せ集めたパーティで、義理も人情もあったもんじゃないわ。

 全てはクエストの報酬のため。パーティの内、何人が欠けても最後の一人が生き残ってクエスト完遂の報告をするのが、即席パーティの唯一のルールであり、全てよ。

 たとえ仲間であったとしても、私達は全てのハンターを守れるワケじゃないし、守る義務も無い。

 結局は自分が生き残ることが全てなの」

 淡々と語るエルの顔からは先ほどまで談笑していた時のような、笑顔ではなくとも親しみやすいような印象を醸し出す雰囲気は消えていた。無表情と言ってもいいそんな造作で語るエルに何か言い返すための助け舟を求めてウヅキの方を見るが、意外なことにウヅキまで「魔王軍四天王・魔剣士のジュン」の話しをした時よりも居づらそうな雰囲気の何とも言えない表情をしていた。

「確かに、クエストが目的のパーティなんかでは良く聞く話だな。ひどいパーティでは上位のハンターが報酬を独り占めしてるとか聞くな……」

 俺の視線を感じたのか、暗い表情のまま補足するかのようにそう付け足すウヅキ。「あ、もちろん、オレとお前でそういうのは無しだぜ!?」と、慌てていつもの調子を取り戻すように付け足す。

「ま、私もそういうハンターと組んだことはあるけどね。当然、報酬の横取りなんてさせなかったけど」

 ウヅキのおかげで若干マシになった空気に、エルも先程の様に言う。……正直、レベルカンストまでして「氷 華 女 王(アイスドールクイーン)」なんて通り名が付いているような魔術師にそんなことするなんて、ただの自殺行為の様にも思えるのだが。

「まぁ、つまりそういう事よ。聞きたいことはそれだけかしら?」

 何となく話にひと段落ついたような心地がしたのか、エルが締めくくる。夜も更けてきている事だし、そろそろ自分の部屋から出て行け、と暗黙の内に示しているのを感じる。

 俺とウヅキは、とりあえず自分達の部屋に引き上げることにした。




「あら」

 エルと話した翌日の早朝。

 ギルド(この街のギルドは24時間体制で稼働しており、どんなに朝早く・夜遅くに行ってもクエストの受諾や報告が出来るようになっているらしい。発展都市だけに夜でも一定の需要があるらしく、この街に拠点を置くハンターもかなりの数がいるようだ)のクエスト掲示板に行った俺とウヅキは、三度、エルと鉢合わせしたのだった。

 今日はちょっといつもよりも強めのモンスターが対象のクエストに挑戦しようとウヅキと話していたのだが、クエスト開始前に既にラスボスが現れた気分だ。

「おはよう」

 そんな俺の考えはいざ知れず、エルはしれっと挨拶をしてくる。俺達に挨拶をするエルを見た、ギルドに少数だが既に来ていた他のハンター達がこそこそと何か言っているのが見える。やはり通り名までつけられるレベルの有名人は違うのだろう。……ウヅキも通り名があったような気がしたが、何故かそこまで噂になっているのを見たことが無いような気がしたのはきっと気のせいだと信じたい。

「おう」

「おっはよー! エルって朝早いんだねー。あ、今日は何のクエ狙いなの?」

 表情筋がストライキを起こしているかのようなぶっきらぼうな返事を返す俺に対して、さらさらと流れるように話し出すウヅキ。

 ペラペラと喋るウヅキの姿を認めたハンター達はさらにざわつき出す。カンストクラスが二人も揃えば確かに圧巻なのかもしれない。


 エルは昨日と同じ、ポケットやボタンのたくさんついた機能的な黒のシャツに、同じく黒のミニスカート、脚には黒のニーハイソックスと茶色の革のショートブーツを纏い、ピンクのベルトとホルダーを腰と右脚に付いている。黒いローブは今は彼女の腕にかけるように持たれているため、背まであるピンクブロンドの長髪は惜しげもなく晒されていた。

「朝から五月蝿うるさいわね。私は今日は素材採集系のクエストを中心にしようと思っていたところよ。そろそろ新しい装備も手に入れようと思っていたところだったし、薬なんかもそろそろ補充したかったのよね。アンタ達はどうするの?」

 ソレを聞いたウヅキは待ってましたとばかりに、今日の俺達の計画を話す。俺達の計画を聞いたエルは、ふむ、と考えるような仕種を見せた後、じろじろと俺の頭から足の先まで前身を観察した。

「な、何だよ……?」

「ジュンは初期装備のままみたいだけど、もしかしてそのままでそんなクエストに挑戦しようとか思っていたわけ? ウヅキは確かに強いかも知れないけれど、アンタ達が今挙げたモンスターの中には、それなりに強力な魔攻を使ってくるモノもいるわよ。ウヅキは置いとくとして、ジュン、アンタその装備のままじゃまた死ぬわよ」

 ……これ、初期装備だったのか。

 確かに、俺の服装(エルの言葉を借りるならば装備か)は、最初の町のハンター協会でユニに投げつけられたモノをそのまま着用している。普段着とほぼ変わらないような適当な白いシャツと黒のパンツの上から適当な軽装鎧を着けて、剣もユニに言われるがままに協会から持ち出したモノ一本のみだ。

 言われてみれば、ウヅキもポケットのついたブラウンの袖なしの革のジャケットにクリーム色の半袖シャツ、上着と同じくポケットのたくさんついたブラウンのハーフパンツに、革のブーツを履いている。何気ないが統率が取れていて且つ、機能的な服装だ。狙撃手という職業(ジョブ)からして弓矢を扱うのに邪魔にならないような服装であるとともに、そういえば戦闘の際にもウヅキが時折武器を持ちかえているのも見た気がする。

 当時はそんなものなのか、くらいにしか思わなかったのだが、おそらく武器も複数を使い分けるのが正攻法なのだろう。むしろ最初のクエスト開始時から力任せに振り回してきた適当な剣が良くここまで折れなかったモノだと半ば関心してしまう。

 そんな俺の様子を見てまた、エルが「呆れた」と呟く。

「とりあえず、今日のところはそんな無茶なクエストは止しておきなさい。ジュンは素材を集めて装備を充実させるところから始めないとダメね」

 それだけ言うと、エルはくるりと向きを変えて歩き出す。恐らくは既に決めてあったのだろう採集クエストの受諾に向かったのだろう。

「ちょ、ちょっと待ってくれないか、エル」

 慌ててエルを制止すると、頭だけをこちらに向けて無言で用件を言うように促してくる。

 俺はプライドもへったくれも捨てて、彼女にこう言った。相変わらず表情筋はストライキを起こしたままだがコレは今に始まったことではないのでそっとしておく。

「その、装備、なんだけど。もっと詳しく教えてくれないか? 何ならおススメとかあるんだったら是非」

「対価は?」

 俺の申し出にやはり素っ気なく返してくるエル。昨夜から計画を練ってくれていたウヅキには申し訳ないが、ここは俺の装備の強化のためだ、見逃してくれ。

「今日のお前のクエスト、俺達も手伝ってやるよ」

 エルはその言葉に、そう、とだけ返してくる。驚きや喜び等の感情が特に表情に表れていなかったのは、俺の提案とも言えないだろう提案はやはり想定内だったのだろうか。

 そのままスタスタとカウンターに向かうエルに、やはり無理な提案だったのかと気が重くなる。が、数分ほど経つと、エルはいくつかのクエストリストを手にこちらに戻ってきた。

「仕方がないから、アンタ達もクエストに申請してきたわ。今日は1日みっちり手伝ってもらうわよ。いいわね」

 リストの中身を確認した俺とウヅキは、もうこれは仕方ないと、顔を見合わせて溜め息を吐いた。


  クエストリスト - パーティ名:素材を採集する程度のパーティ

     パーティメンバー:エイプリル、ジュン、ウヅキ   計三名

    依頼内容

  ・エネキノコを50体討伐する

  ・デクビーストを75体討伐する

  ・マッスルシシーを25体討伐する

  ・ウッドソルジャーを10体討伐する

  ・ツルクサボウズを80体討伐する

  ・ゴブリンを30体討伐する

  ・コウラリアンを60体討伐する

  ・マジロックスを45体討伐する

      ・

      ・

      ・

  計30個のクエストを依頼致します。

     ハンター協会イーストフローラギルド支部


「…………」

「……コノクエ数ハナンデスカエイプリルサン……」

 思わず言葉も出ない俺と片言になるウヅキ。そんな俺達には構わず、エルはバサリとローブを羽織り淡々と説明をしていく。あと、この街の名前がイーストフローラというとか今更知った等とそんなことはもう口に出したりはしない。

「今日は助手が2人もいるからいつもの3倍も受諾してきちゃったわ。とりあえず、クエストの内容について説明するわよ。

 まず、このエネキノコというのは薬の原料になるモンスターなの。ギルドに報告すれば薬問屋に卸されてその卸値が私達の報酬になる。

 次にデクビースト、ウッドソルジャー、ツルクサボウズは、服等の繊維に使われるわ。こちらもギルドに報告して卸値が報酬になる。討伐した後のクエスト受理の証書を衣服などの装備の店に持って行けば、ちょっとくらいなら値切れるのよ。ちなみにウッドソルジャーは割と出現率が低いから、見つけたらすぐに知らせる事。何気に攻撃力も高いから、魔攻でさっさと倒した方が早いわね。ちなみにコイツは弓や銃なんかの遠距離系の物理攻撃は受け付けないから注意すること。

 その次がマッスルシシーとゴブリンね。これは……」


 クエストに出発する前に1時間半、俺とウヅキはエルのモンスターについての講義をみっちりと頭に叩き込まれることになったのだった。

 その後さらに30分、俺は装備品や武器についての軽い講義を受ける羽目になる。その最後に、俺はどんな装備が良いのかエルに問われた。30分という(おそらくエルにしては)短い講義の中で、とりあえずわかった事は、とにかくいろんな装備があるという事のみだ。

「一番良い装備で頼む」

 俺が答えることが出来たのはこれだけだったが、何故かエルはさらに気合が入ったようだった。


 かくして、カンストハンター二人を擁する採集クエストに挑むだけに組まれたパーティ(という名のエルの小間使い)はフィールドへと出て行ったのだった。




 ちなみに、俺がエルに装備について指摘されてからクエストの受諾に至るまでの間、ウヅキはただひたすら溜め息と意味不明な悶絶を繰り返していたという。


何がとは言いませんが言わせたかっただけです笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ