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2-2.Party -Sniper-

 街に着いた俺たちは、とりあえずクエスト完了報告をするために街のギルドへ向かう。先を歩くウヅキの背中を見つめながら、俺は「ひと段落したらウヅキに尋ねる事リスト」を頭の中で整理している。


 まず一つ目は、なぜ俺のコトを最初から知っている風に話すのか。ユニはともかくとして、ウヅキは普通のハンターだ(と信じたい)。もともと人懐っこいというか、コミュ力は高めな性格のようだが、旅を始めたばかりの俺の事をさも昔からの友人のように扱う理由が知りたい。

 次に二つ目、「闇堕ち」について。先ほども対峙したが彼、もしくは彼らは何なのだろうか。先程は慌てていた為良く確認できていなかったが、「闇堕ち」も装備だけならば俺たちと同じようなハンターに見えた。ハンター同士で戦おうとする者の事をそう呼んでいるのだろうか。

 最後に三つ目。先ほど「闇堕ち」から助けた女の子が俺を指して言っていた「魔王軍四天王・魔剣士のジュン」について。奇しくも俺と同じ名前で同じ職業(ジョブ)、属性まで同じのようだが、彼は俺と何か関係があるのか。そして、「魔王軍」、「四天王」とは何なのか。

 自身曰く「この世界は長い」ウヅキならば、おそらくこれらの俺の疑問にも答えられるはずだ。


「やっと着いた。ここがこの街のハンター協会だ」

 今回の街は初めから数えても三つ目という事もあって、それなりに大きな都市として栄えているようだ。もっとも、都市といっても、今までの街には無かったような大きな市場などがあり、人が集まり栄えている、という意味でだが。大きな都市なだけあって、ギルドではなくハンター協会の支部が設置されているようだ。

「やっぱ大きな街のハンター協会は賑わっているなー。クエスト報告リミットまでに行列が終わればいいけど」

 そう言いながらウヅキと共にカウンターへの行列に並ぶ。最初の街にあったハンター協会とは違い、カウンターも五つ設置され、手続きなどの係員との会話も必要最低限だ。それなのに協会の建物一階のエントランス部分を埋め尽くす勢いでハンター達がクエスト報告をしようと待っている。ざっと見繕ったところ、俺とウヅキの並んだカウンターはあと70人は報告手続きを待っているようだ(これでも経験豊富なウヅキの判断で出来るだけ並んでいる人数と係員の手際の良さを見た結果だ。隣のカウンターの係員は少なくともこのカウンターの係員の倍の時間をかけて手続きをしているのが見える)。

 この行列ならば、先程頭の中でまとめていた「聞きたいことリスト」の内の一つか二つくらいなら消化できるかもしれない。

 俺は行列待ちの暇つぶしついでに、ウヅキにいろいろと尋ねたいと思っていた事を尋ねることにした。

「え? なんでお前の事を最初から知ってたみたいに話すのかって?」

 いきなり「魔王軍四天王・魔剣士のジュン」は無いだろうと思って、まずは一つ目、なぜ俺のコトを最初から知っている風に話すのか、だ。

 それを尋ねると、ウヅキは気まずそうに視線を右往左往させる。そして、周りのハンター達が自分達の会話など気にも留めていないことを確認すると、ウヅキは俺の質問に答え始めた。

「知ってるみたい、っていうか、ホントに知ってるんだよな」

「どういうことだ?」

 ウヅキの返答に驚いた俺は思わず聞き返す。ウヅキは困ったように言葉を探しながら、俺の問いに答えようとする。

「えーっと、何ていうか……オレとお前で、前にもパーティ組んでたんだよ。で、お前だけ、その……」

「つまり、俺だけ一度死んで、お前は生き残ったってことだな」

 何だか歯切れの悪いウヅキの答えに、俺は勝手に結論付ける。確かに、パーティの相方が死んだのに自分だけ生き残っただなんて、本人には言い辛いだろう。

「まぁ、そんな感じ、かな……他にも何か聞きたいことあるか?」

 いつもよりもテンションの下がったウヅキは、俺に他の質問、というか話題を促す。

 ウヅキの返答の様子から、俺は自分の疑問が単なる一つの疑問ではなく、結論として連なった結果になるのではないかと予想した。

 仮にだが、前回俺が死んだ理由が「闇堕ち」だとして「魔王軍四天王・魔剣士のジュン」=俺という図式は別に何ら不可思議な構図ではないだろう。その「魔王軍四天王・魔剣士のジュン」が何者かに討ち取られて、俺は再びハンターとして冒険に出ることになり、ウヅキと再会した。

 あくまで俺の勝手な空論に過ぎないが、確かめる必要性が無いわけではないだろう。

「じゃあ、さっき遭遇した『闇堕ち』って言うのは何だ?」

 俺は自分の立てた仮説の真偽を確かめるように、ウヅキに質問を繰り返す。

「『闇堕ち』って言うのは、言葉の通り、闇に堕ちたハンターの事だ。基本的に本人には『闇堕ち』した自覚は無いらしいが、四天王クラスは別だって聞いたこともある。どちらにせよ、オレ達ハンターを襲うハンター、っていう解釈で問題ないぜ」

「四天王って?」

「さっきも聞いたと思うけど、『魔王軍』の最強四人衆ってとこだな……もっとも、魔王だとかホントにいるんだかわかんねーし、四天王自体が相当強力だから、三人までしかわかってねーんだけど」

「『魔王軍四天王・魔剣士のジュン』はそのうちの一人ってことか?」

「あぁ……っていうか、もう隠しても仕方ねーな。オレも話しづれーわ! ま、ぶっちゃけ言うと『前』のお前なんだわソレ。俺と冒険してるうちにいつの間にかお前、『闇堕ち』してて、気づいたら四天王になってたんだわ」

 周りのハンターに聞こえない程度にだが、何かのスイッチが入ったんだか切れたんだかよくわからない感じにウヅキが開き直り始めた。そして、同時に、俺の立てた仮説があながち間違いでもないという事に驚く。

 そして、先ほどの女の子が俺に向かって杖を向けたことにも合点がいった。

「あ、次、オレらの番だぜ? とっととクエスト報告して宿探さねーとだな!」

 先ほどまでの陰鬱としかけていた空気を払拭するかのように、ウヅキは俺にそう言った。




「……このままじゃジュンがまた闇堕ちしちゃう……あの男から引き離さないと……!」

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