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1-2.Shuumatsuron -Quest-

 ユニに引っ張られるままにハンター協会の建物を出た俺は、街の風景に軽い既視感(デジャヴ)を感じた。軒を連ねた商店や行きかう人々の多さ。恐らくは大方、どこの街にもある風景だからだろう。

 きょろきょろと周りを見渡す俺に構わず、ユニはぐいぐいと掲示板とやらの方向へ俺を引っ張っていく。

「あったー! ココが『クエスト掲示板』だよ! クエストの受理の仕方は知ってるよね? ……え、知らない?」

 何故知っている前提で聞いてくるのか些か疑問だが、これまでのユニの奇行を顧みて深く突っ込まないことにした。

 ユニによる「クエストの受理の仕方講座」を右から左に文字通り受け流した俺は、早速クエストとやらに出向こうとしたのだが……またしてもユニによる妨害である。

「ジュンの今レベで受理できるクエストはー……このあたりかなー」

 そう言ってユニが掲示板からベリべりと引き剥がした(ぶっちゃけマジかよと思ったが、周りのハンターたちは何故か気にする素振りすら見せない)クエストの内容を見た俺は、文字通り固まってしまった。

「とりあえずちゃっちゃか片付けて本格的なクエに……って、どうかした、ジュン?」

「どーもこーもあるわ! 何、ふざけてるワケ?」

「えっ、ふざけてなんかないよう……ジュンの今のレベルは最初期値で経験値も無いから、このクエストからやる必要があるんだよ」

「レベルって何だソリャ……そんなもんでクエストとやらが決まんのかよ」

「レベルを上げてからじゃないと、敵にやられちゃうよ! だから、実力に見合ったクエストを選んで地道に経験値を積んで行くのが、世界を救う一番の近道なんだよ!」

 不服ながら、今回ばかりはユニの主張に正当性があるように感じる。確かに、実力に見合わないクエストで思わぬ強さの敵に遭遇したら、まず助からないだろう。

「……わかったよ、やればイイんだろ、やれば」

 そう言って、ユニが掲示板から引き剥がしたクエストの内容を見てみる。

「……おい何だよコレは!!」

「何って……初期値なんだから、指南系クエからやる必要があるんだよ?」

 ユニが俺に差し出したクエストの内容は『初心者クエ:剣士の心得』『初心者クエ:剣士の構え』『初心者クエ:剣士の作法』等といった、まさに初心者感バリバリのクエストだった。しかもこれらのクエストを終えてからでないと冒険にも出られないという。

 仕方がないので俺は適当にユニの引っぺがした紙の中から『初心者クエ:剣士の心得』を受諾することにした。


 結局、『初心者クエ』は短時間で終わるモノがほとんどで、俺はその日のうちに初心者クエスト十数件を全て終わらせてしまった。

 クエストの中には実際に敵との戦闘があるモノもあったので、それなりにレベルも上がったと思いたい。

「ジュンったらすごい意気込みだよねー。まさか今日だけで初心者用のクエ全部終えちゃうなんて思わなかったよー」

 再びハンター協会の部屋に戻った俺(と、なぜか一緒に付いてくるユニは放っておいた)は、ボフリと音を立ててベッドに横になった。

「さっさとレベルとやらを上げて、ハンターらしくクエストやらねーとだろ。次あんなナメたクエ持ってきたらぶっ飛ばすかんな」

「えーやだジュンこわーい」

 あからさまな棒読みで答えるユニに、もはやツッコむ気力にもなれない。

 そういえば、ユニに関して気になることがあったので、問いただしてみる。

「そう言えば、お前、俺よりずっと強いんじゃなかったのかよ? クエ中ずっと補助魔法ばっかだったじゃねーか」

 あれだけ「強い」と豪語していたユニが、戦闘中に一切攻撃する素振りを見せなかったことに、若干の違和感があったのだ。

「えー? ……だって、ユニがあの程度のクエの敵に攻撃なんかしちゃったら、ジュンに経験値が入らないじゃん。ユニはジュンのためにサポートに徹してたんだよー?」

 貼り付けたような笑みを終始浮かべながら答えるユニに、やはり違和感を感じたが、その正体もいずれわかるだろうと楽観視しておくことにした。

「とりあえず、俺はもう寝るからな! とっとと部屋から出てけよ?」

「え? なんでー? ジュンはユニの事なんか気にしないで、安心して寝ててイイよ?」

 むしろ安心できないんだよ、と言ったところで、奇行種トンデモ行動女なユニに通じるのか甚だ疑問だ。

 俺は布団をガバリと被り込み、外界をシャットダウンすることで安眠を試みることにした。


 翌朝、身支度を整えた俺は、早速クエストをこなしながら冒険を進めることにした。冒険で各地を放浪していても、行く先々の街でハンター協会やギルドがクエストの斡旋や紹介をしていることを、協会の一階事務の女から聞いた俺は、とりあえずクエストに関しての不安も無く旅立とうとしていた。……が。

「ちょっと歩くの速いよジュンー!」

 なぜか俺の旅路に付いてくる気満々なユニである。クエストでは時にパーティというモノを組む必要性があるらしいが、基本的にはその場で組んで解散、という所がほとんどだと聞いた。なので、これ以上俺としてはユニに用事は無いわけだが……。

「もう! ジュンったらそんなに急がなくたって、次の街はそんなに遠くないんだから大丈夫だよ!? 女の子の歩くテンポに合わせられないオトコなんてモテないんだからね!!」

 昨日のクエでわかったことはユニ関連を除けば二つ。

 まず、俺はいわゆる「魔法」及び「魔法攻撃(魔攻)」が使えないらしい。一応『火属性』ではあるモノの、俺の職業(ジョブ)とレベルでは、ただのステータスでしかないという事らしい。

 もう一つは……この無駄にイケメンな顔についてだ。どうやらこの世界では(少なくともハンターは)イケメン美女は当たり前なことであるようで、俺の顔が特別美しい造作というワケでもないと言う事だ。内心、魔攻が使えない事よりもこちらの方が精神的にダメージを受けているとかそういうわけでは……やっぱりある。


 キャイキャイと煩いユニを完全スルーして、俺は次の街に到着した。街に着いてハンター協会を探していると、ユニが「こっちだよ」と服の裾を引っ張ってくる。連れられた先にあったのは街の地図で、ソレを読む限り、この街には協会は無く、ギルドによってクエストを受理することと、宿屋を探す必要があることが分かった。

 とりあえずハンターギルドに向かった俺は、カウンターでクエスト完了の報告をする。実をいうと、『この街に来る』という事自体がクエストの一つだったのだ。他にも、簡単なモンスター討伐のクエストを受理していたのでそちらも完了報告をして、報奨金を受け取った。とりあえず今日の宿代くらいにはなるだろう。


 気が付けば既に日も落ち始めていたので、俺は当然のように付いてくるユニを引き連れて、この街に一つしかない宿屋に向かうことにしたのだった。

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