6-4.Assassin -Rule-
エルとウヅキに「血の誓い」の儀式をさせるために、俺は二人に「血液」を流すように求めた。それと同時に、素材の採集用のナイフで、自分自身の両手の親指の腹に傷を入れ、血を流す。
その様子を何か恐ろしいものでも見るかのような表情で眺めていたエルとウヅキだったが、すぐにエルが、それに続くような形でウヅキも親指の腹にナイフを突き刺した。二人とも右利きなので、傷口のある指は左手側だ。
「血の誓い」は、文字通り、「対象者の血液によって、指定された情報を秘匿するための誓い」だ。やり方自体は非常に単純で、例えば俺の「暗殺者」という職業についての情報を隠匿したい場合は、俺の血液とその情報を得る者の血液を体内で混ぜることで「誓い」の儀式が成立するようだ。
「今から、俺の本当の職業について、お前達に伝える。コレはそのための儀式で、今後俺の職業については俺達以外には他言無用だ」
ぼたぼたと地面に落ちる血液は無視して、俺は二人に説明をする。
二人に傷口の方の親指を出すように示すと、二人とも神妙な顔つきではあったが傷口を差し出してくれた。
二人の傷口から零れる血液と、俺の両手の親指から零れ落ちる血液を混ぜるように、傷口同士を擦りあわせる。傷口を合わせたまま、俺は自分のステータスを表示し、本当の職業を二人に教える。
「今回の俺の職業はかなり特殊なようでな。こうしないと、お前達でも本当の職業名が解らないままになるんだ」
そう告げると、傷口を合わせたままの恰好で、エルが納得したように呟く。
「そう言う事だったのね。いくらなんでもおかしいと思っていたのよ」
そんな風に呟くエルは放って置き、俺は改めてステータスを表示した。
「闇属性……って、まさか闇堕ちってコト!?」
「というか、その『暗殺者』って、今までみたいにレア装備によって称号を付けられたりとかって、無いのね」
各々の反応を確かめ、俺は自分のステータス情報が二人に正しく開示されていることを確かめる。
「お前らは、この『俺のステータス情報』を、このまま秘密にできるか?」
俺は改めて二人に問う。もし、ウヅキ辺りがうっかりと漏らしてしまったりしたら、どうなるか分かったものではない。
「……えぇ」
「……あ、それが必要なコトなら」
それぞれの答えを示した二人に、俺はようやく二人の親指から傷口を離した。
「血の誓い」の儀式を終え、俺はようやく二人に素性を明かすことが出来たのだった。
「『ジョブ』の名前がどこに表示されていたとか、敢えて訊かないでおくわ……多分、その方が良いと思うから、お互いにね」
エルが森で拾った「接近治療」の杖で全員の指の傷口を治療するときに、俺にだけこっそりと呟いたのだった。
「そういえば、ジュンは今回も、魔攻使えるんだよね?」
そう切り出してきたのはウヅキだった。おそらくは今後の戦闘でのフォーメーションについてだろうと察しは付く。
「まぁな。一応、今俺が持っている装備は二本とも使えるようだ」
そう答えると、ウヅキは気まずそうに言う。
「今日の初心者クエでも思ったんだけど、今後このメンバーで組んでいくなら、戦闘における役割分担みたいなのが必要だと思ったんだ。……えーっと」
「どうもこの『召喚士』って職業、あまり火力が無いみたいなのよね」
「っていうか、皆無なんだよね」
ううむ、と難しい表情で言うエルに、笑顔でウヅキが止めを刺す。何気にえげつないな。
「ある程度レベルが上がらないと、『召喚』が使えないみたいなのよね。それさえ使えれば火力は出るんでしょうけど。……『魔術師』の時の杖やルキウスの杖も、戦闘時ではあまり使い勝手がイイとは言えないわ」
「一番無難なのは、ジュンに前衛で攻撃全般を担当してもらって、エルは後方で回復と支援かなってカンジかな?」
ちなみにその場合だと、ウヅキ自身は中間に入り、俺とエルのサポートに回るらしい。
「ま、しばらくはそうなるな」
俺一人が前線で斬り込む形にはなるが、エルは現時点でも回復・支援系の魔法なら使えるとのことなので、そちらに期待しようと思う。多分、後方で司令塔の役割もしてもらうとは思うが、それは今までどおりなのであまり関係ない。
ちなみに、初心者クエでは、その職業に合わせた初期装備がドロップされたり、拾ったりできる確率が格段に上がるのだが、今回俺は『暗殺者』としての専用武器などは拾わなかったようだ。エルの方も、『召喚士』ではなく『ヒーラー』向けの回復魔法や補助魔法の杖のみの収穫だったらしい。
『騎士』の時には既に武器が有ったので気にしたことが無かったが、もしかすると上位職業になると、専用武器の入手は困難になるのだろうか。
「まぁ、武器とか装備に関しては、街に行かないとどうにもならないわよ。ルキウスの杖も改造してもらわないとまともに使えないしね」
装備の改造? どういうことなのかはさっぱりだが、とりあえず街に着けば、いろいろと進展するのだろう。きっとたどり着くまでに、俺やエルのレベルもどうにかなっていると思いたい。
とりあえず、初心者クエを無事に終えた俺達は、明日からは街に向けて出立すると言う事で意見をまとめ、その夜はそのまま休むことにした。
「そういえば、前に、森の向こうの『ルネール』ってところを目指そうとしていたよね? アレはイイの?」
翌日、早速いくつかのクエストをパーティで受託した俺達は、街に向けて出立した。ひとまず今日の目標は、はじまりの町「ラストフローラ」と接している唯一の隣町である「ラルフローラ」だ。ラルフローラへの到着が遅ければ、今日はラルフォレスト、フローラ平原には入らない。昼前にラルフローラに到着できた場合のみ、到着クエストの報告と「イーストフローラ」を目指すクエストの受託だけ追加してそのまま進軍、という予定だ。
かなりの強行軍だが、ウヅキの質問によりエルが前周回で目指していたコトを思い出してしまったのだ。おかげで、とにかくレベルの上げやすい森でのクエスト受託及び、森の突破が第一目標になったのだった。
……装備の改造とやらはあくまでオマケ、という事らしい。どのみち装備リングが無い状態ではレベルを上げても補助装備による補整が出来ないので、改造を施す店とやらにもついでに顔を出す必要があるらしい。
「最終目標は『フローラフォレスト』突破及び、『ルネール地方』への出立よ。覚えておきなさい!」
前回も達成出来なかった「フローラフォレスト」の突破。少なくとも、俺達全員がレベルのカンストをしていなければ無理だろう。だからこそ、一日も早く、「イーストフローラ」に拠点を作り、レベルを上げていかなければならない。特に今回は、俺もエルも上位職業なので今までよりも段違いにレベルが上がりづらいだろう。
ラルフローラに向かう為、俺達は森を突っ切っている。先頭が俺で殿にはウヅキ。間にエルを置いている。攻撃力皆無のエルを最後尾に置いた場合、移動中に背後から攻撃をされると一撃死する恐れがあるとのことで、移動中のフォーメーションはこの形で行くことになった。
基本的に俺の一撃で森程度のモンスターなら屠れてしまうので、基本的に本格的な戦闘にはならないでひたすら森を突っ切る形になっている。途中で見慣れない装備(というか、俺にとっては剣以外の武器装備以外はほとんど「見慣れない」装備だ)をドロップするモンスターもいたので、コレは後で俺かエルが使えないか確認することにする。
森を一気に突っ切ってしばらく進めばラルフローラに着いた。時間は大体昼前と言ったところか。
予定通り、ラルフローラ到着の報告をしてからイーストフローラを目指すクエストの受託、少し早めだが軽く食事を摂ってすぐに、街へ向けて出発した。
相変わらずの弾丸進軍である。
ラルフローラでの短い休憩の間に、俺は森で拾ったドロップ装備をエルに確認してもらった。ウヅキにはクエストの報告と受託、食事の手配をしてもらっている。
どうやら俺が拾った装備は、ほとんどがエルが使えるモノだったようだ。特に、「接近治療」のように直接患部に当てなくても使用できる「範囲治療」の杖を渡すと、大変ご満悦だった。どうやら結構レアな装備だったようだ。ステータスには表示されなくても、俺の「レア装備ホイホイ」体質はまだ有効らしい。他にも補助魔法の杖などもあったので、森でのドロップ装備はほとんどエルに渡る形になったのだった。
その後、森とフローラ平原を突っ切った俺達は、日没とともに、再び街の石畳の地面を踏んだのだった。
ジュン-男
属性-闇 職業-暗殺者 Lv.27
称号-なし 通り名-なし
周回数-3(+1)
エイプリル-女
属性-光 職業-召喚士 Lv.32
称号-なし 通り名-氷月華の女王
周回数-2(+2)
ちなみに:2周目「剣士」の「ジュン」が街に着いた時のレベル=Lv.34でした(2-3.Party -Magician-より)




