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6-2.Assassin -Ring-

 

 

 

 

 

ジュン-男

 属性-闇 職業-暗殺者 Lv.1

 称号-なし 通り名-なし

 周回数-3(+1)



エイプリル-女

 属性-光 職業-召喚士 Lv.1

 称号-なし 通り名-氷月華の女王(アイスドールクイーン)

 周回数-2(+2)



 俺とエルの新しいステータスを見て、俺は溜め息を吐く。あの何もない空間で職業(ジョブ)を選んだ時から予感はしていたが、「暗殺者」というジョブはかなり特殊なようだ。

 その証拠か知らないが、珍しくエルとウヅキが口喧嘩をしている。いつもはウヅキがさっさと折れるので、この二人の喧嘩というのは本当に珍しいと思う。


「だから、ジュンの職業(ジョブ)は『武闘家』だって言ってるだろ!? 良く見ろって」

「そっちこそ、『職業(ジョブ)スキル』でもなんでも使って良く見なさいよ、『魔術師』って書いてあるわ!」


 先ほどから、ずっとこの調子だ。


 俺としては、この後どっちみちハンター協会本部のカウンターで再度ハンター登録をすれば、俺の職業(ジョブ)くらいすぐにわかるだろうと思っているので、特に気に留めないでいる。と言うのも、俺のステータスよりもエルのステータスの方に注意が向いているからなのだが。


 『属性-光 職業-召喚士 Lv.1』。


 この際、なんで既に通り名が付いてるとかそう言うのはどうでもいい。肝心なのは、この職業(ジョブ)と属性。――俺が「暗殺対象」として設定したユニと全く同じ職業(ジョブ)と属性だ。

 「暗殺対象」の設定が、どのような効果を及ぼすのかは全くわからない。だが、不安要素として俺を揺するには十分すぎるほどだ。――だって俺は、間接的、いわば巻き添えとはいえ、一度エルを死なせてしまったのだから。


 次に、俺はウヅキが回収しておいてくれていた装備リングを確認する。どうやらウヅキが回収できたのはメインの「装備リング」のみだったようで、「補助リング」は今回は無いようだ。前回は5つ全てのリングを回収してくれていたのだが、今回は時間が無かったのだろうか。

 ひとまず、装備リングを確認しておく。



  装備リング:約束された勝利の剣(エクスカリバー)(レア、火属性、使用可能必殺スキル「聖 杯 の 祝 福アンリミテッドブレイドワークス」)

         倶利伽羅(ク リ カ ラ)(レア、火属性、使用可能必殺スキル「業火の理」)



 どうやら、「暗殺者」でも魔攻は使えるようだ。まぁ、起きてから部屋中に漂って見える光の粒のおかげで、ある程度は予測してはいたが。


 そういえば、「騎士」のプレートは「剣士」の上に表示されていた。ウヅキの言う「武闘家」は最初に選択できる5つの職業(ジョブ)の中にもあったので、おそらく町やそのあたりのフィールドで目にする屈強な男たちの職業(ジョブ)の中でも過半数を占めるのかもしれない。エルの今回の職業(ジョブ)である「召喚士」だが、こちらはユニ(暗殺対象)以外には見たことも聞いたことも無い職業(ジョブ)だ。最初の職業(ジョブ)のどれかの上に来るのかもしれないが、少なくとも俺は確認出来なかった。……そういえばエルはもともと「魔術師」だったのだから、それの上に来ると考えるのが妥当かもしれない。


 そんな中でも、俺の「暗殺者」だけは、何故か他の職業(ジョブ)の下に表示されていた。何か意味があるのだろうか?




 ウヅキとエルの攻防を傍目に、俺はそんなことを取り留めもなく考えていたのだった。






 結局、二人の攻防が中断されたのは、昼下がりにしても随分と遅い頃合いになってからだった。


「っていうか、補助リングが根こそぎ無くなってるじゃない! アレ結構高いのよ!?」

「仕方ないだろ、オレが見つけた時には、エルなんてほとんど消えかかってたんだぜ? 装備リングだけでも回収できただけ上出来だと思ってよ」


 ドン、と床に金色に輝く細長い杖のようなものを突き立てながらそう言うエルに、ウヅキが返す。

 エルが握っている棒は、他でもないエルを貫いた、おそらくはあのユニの杖だ。


「それに、あらかじめ預かっていた()()は、ちゃんと取っておいてあるからさ」


 ほら、とウヅキがエルに渡したのはやはり杖だった。いつの間にウヅキに預け物なんかしていたのだろう。確かに、この中でも生存率だけは断トツのウヅキなら、何かを預けるにはうってつけかもしれないが。――事実、俺も既に二回、倶利伽羅(ク リ カ ラ)をウヅキから受け取っている。


 エルは杖を受け取ると、しばらくソレを睨んでいた。……どこか見覚えのある、青い光を纏うその杖……。そういえば、俺がメインで扱っていた剣には結構細かい分類があったようだが、杖にも分類のようなものはあるのだろうか。


「……ルキウスの(スタッフ)、『召喚士』でも一応は使えるみたいね。無駄にならなくて良かったわ」


 氷の様な翼を模したモジュールが先端に付いた、細長い棒。エルの元師匠であり、「魔王軍四天王氷河(グレイシア)のルキア」が所持していた、あの吹雪を起こすあの杖だ。


「でも、やっぱり『大魔導師』の(スタッフ)じゃ、『召喚士』には扱いにくいわね。仕方ないけど、街まで出たら改造(カスタム)してもらわないといけないわね」


 ルキウスの杖を装備リングに装着しながら、エルはぶつぶつと何か呟いている。


「さ、そうとなったら、早速(イーストフローラ)へ行くわよ!」

「……その前にハンター登録だろ……」


 何度も「やり直し」させられていれば、自然と覚えている事だったが、そういえばウヅキもエルも『同じ世界』での「やり直し」を経験していなかった。……多分俺が何度もユニに殺されていることがおかしいのかもしれないが。


「で、その後はしばらく『初心者クエスト』だろ。ココ(ラストフローラ)から出るのだって、それなりに時間は掛かるだろ」

「あら……確かにそうだったわね」

「ならオレが二人の初心者クエの引率役をやるよ」

「カンストハンター自らの申し出とは心強いな」


 ようやく俺達は、部屋から出て、ハンター協会本部での手続きに乗り出したのだった。






 ハンター協会本部のカウンターには、やはり眼鏡をかけた女性が座っている。ふと妙だと思ったのは、辺鄙な場所にあるとはいえハンター協会の「本部」であるはずのこの施設では、スタッフらしき人物を彼女以外に見かけない事だ。まぁ、あまり長く滞在するようなところでもないので、ただ単に目にしなかっただけかもしれないが。


「ハンター登録ですね。かしこまりました、少々お待ちください」


 そう言って彼女はハンター登録のための作業を始める。しばらく待っていると、彼女の方から声を掛けてくれる。


「ハンター登録完了いたしました。『光属性』の『召喚士』エイプリルさん、ハンターとしてのご健闘とご活躍を心よりお祈り申し上げます」


 やはり勝手に職業(ジョブ)と属性を登録され、地味に嫌な響きの言葉と共に送り出される。

 そして、おそらく、彼女が俺の職業(ジョブ)と属性を口にすれば、部屋で散々言い争っていた二人の気も済むだろう。


「ハンター登録ですね。かしこまりました、少々お待ちください」


 今度は俺の方に向き直ってそう言う彼女に、半ば期待を込めて待つ。……ところが。


「ハンター登録完了いたしました。『闇属性』ジュンさん、ハンターとしてのご健闘とご活躍を心よりお祈り申し上げます」




 俺への見送りの言葉に、俺の職業(ジョブ)の名前は入っていなかった。




「……え、は? それだけかよ」


 思わず受付の女性に食いついてしまう。エルとウヅキは怪訝そうにこちらを見ている。どうやら、二人は()()が異常な事態だと言う事に気付いてはいないようだ。


 さっさと初心者クエを受諾しようとしている二人を制して、俺はさらに受付の女に詰め寄る。


「他に、何か、無いのか? ……その、言う事、とか」


 一瞬ポカンとした表情でこちらを見つめていた女だったが、ここでさらに驚くことを言い出す。


「そうですね……そういえば、最近、ハンターが行方不明になるという事件が多発しているようですね。ついこの間も、()()()()()()()()』と『()()()』が『行方不明』になったとか。その前も、()()()()()()()()』が行方不明になっているようです。他にも、『()()()()』や先程とは()()カンストした『()()』も行方が知れないとか……。実力(チカラ)のあるモノでも巻き込まれるくらいですから、登録したばかりのハンターはより一層、気をつけるべきでしょう。……ハンターとしてのご健闘とご活躍を心よりお祈り申し上げます」


 ……俺が知る限り、このハンター協会本部のカウンターの女は、淡々とハンター登録の作業をして職業(ジョブ)と属性を告げ、地味に嫌な響きの言葉と共にハンターを送り出すだけだった。しかし、今回は、明らかに以前とは態度が違う。――俺が問い詰めたからか? それとも、他に何か要因があるのだろうか。


 その後、黙ったままの俺を差し置いて初心者クエを受諾したエルとウヅキは、俺も引き連れて森へ向かおうと言った。が、俺はその前に寄りたい所がある。というか、出来た。それを告げると、二人は一緒に付いてくると言うので、俺は二人を引き連れてある場所へと向かう。


 向かった先は、ラストフローラに唯一の酒場。『前』に来たことは無かったが、存在は知っていたのだ。

 中に入ってみると、まだ陽も高いと言うのに、男たちが酒を酌み交わし笑い転げている。エルは俺の背後で露骨に顔をしかめているに違いない。


 俺はその男の中の一人に話しかけようと近づいてみる。と、男の方から話しかけてきた。


「よう、兄ちゃん。儲かりまっか?」


 杯を上げながらそう言う、熊のように毛深い男に、俺は「ぼちぼちだな」と返す。

 すると、男はさらに豪快に笑いながら、取り留めもない噂話を俺達にも聞かせてくれた。どうやら先程もこの話題で盛り上がっていたようだ。


「この『世界』が滅びる、だって?」

「あぁ、何でもそんな『神託』があったってハナシよ」

「……」

「まぁそう辛気臭いカオしなさんなって。なんでも、『犠牲』とやらが払われれば、滅びないらしいからよ」

「『犠牲』でもなんでもイイから、滅びないなら滅びないで放って置いてくれりゃあイイのになァ」

「でもこうして酒の肴にはなるって寸法よ」

「そりゃあいい」


 一言も返すことの出来ない俺に変わって、別の男が熊のような男に笑いかける。髭面で、既に顔が酒に酔って真っ赤になっている男だ。

 熊の男と髭の男がまた笑いながら酒を飲みだしたので、俺はさらに詳しく話しを聴こうと再び話しかけようとする。

 が、やはり、熊のような男の方から話しかけてきた。


「よう、兄ちゃん。儲かりまっか?」


 どうやら、見かけによらずこの男も相当酔っぱらっているのか、話は堂々巡りするばかりだった。


 四回目の「儲かりまっか」を聞く前に、ウヅキが店を出ようと言うので、俺は仕方なくその場を後にした。


 

 

 

 

 


 

 

 

あらすじ「オレのターン!!」( ,,`・ ω´・)

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