6-1.Assassin -Re:Re:Reloaded-
>世界を再び巡りますか?
聞き覚えのある声に目が覚める。この声に起こされるのは、本当は何回目なのだろう。そんなことをふと考えてしまう程度には聞き覚えのある声だ。
また、ユニに殺されたのか。
今回はエルも巻き込んでしまったようだが、彼女も再び戻ってくるのだろうか?
何もない空間に、是、と念じる。そういえば、今回の職業もレベルがカンストしていた。前回も、そうだ。カンストするタイミングを見計らうかのようにユニに殺されているような気がするのは気のせいだろうか。
>職業を選択してください
目の前に、それぞれの職業名の書かれた光るボードのようなものが現れる。赤く光る「剣士」。青く光る「魔術師」、桃色に光る「ヒーラー」、黄色く光る「武闘家」、緑色に光る「狙撃手」。
さらに、「剣士」と書かれた赤く光るボードの上に、一つのボードが出現する。オレンジ色に光る「騎士」と書かれたボードだ。
一般的なハンターの5つの職業と、さらにイレギュラー的な存在であろう1つの|職業「ジョブ」のボードを見て思案する。
「剣士」と「騎士」は既にカンストさせた職業だ。さらにその経験で、「騎士」を選択すれば「剣士」と同程度の物理攻撃力に加え、範囲魔法まで使用することが出来ることもわかっている。
今回も「騎士」を選択しようか。……そして確か前回確認せずにおいた新属性とやらを確認してみようか……。
>尚、今回は、新しく選択できる職業が増えていますので、確認をお願いします
……新職業? まだ何かあるのか。
職業名が書かれたボードの中に、さらに新しいボードが追加される。今回は5つの職業の中央付近のかなり下の方に、ひっそりと現れた。
真っ暗な空間に隠れるかのように黒い光を帯びたそのボードに書かれていた職業名は「暗殺者」。
余計なことを考えるのも面倒になったので、とりあえずその「暗殺者」を指定してみる。
>「暗殺対象」を「1人」設定してください
>「最大3人」まで設定できます
>「対象」の設定は後から自由に変更できますが、最初に設定した「1人」は変更できません
何も考えなかったことを、一瞬だけ後悔した。何なんだこの明らかに複雑で面倒臭いシステムは……!
しかし、すぐに思考を切り替える。
生憎、俺はハンターの知り合いらしい知り合いは3人しかいない。そのうちの1人は既に俺のことを2回殺していて、さらに他にも少なくとも1人は殺している。……「変更不可能」な「1人」に設定するのにふさわしいどころか、むしろそうするべきだとすら思えてしまう。
『ユニは、『光属性』の『召喚士』だよ! とってもレアな属性と職業なんだから!』
以前交わした会話を思い返す。まともに会話したのは数えるほどなので、その記憶を辿るのも割合、容易かった。
「光属性」の「召喚士」、「ユニ」を「暗殺対象」に「設定」。
そう念じて「暗殺対象」の設定をした。
>職業の選択が完了しました!
ここまで設定をして初めて職業の設定が完了するらしい。これでは戻った後でもまたやっかいなシステムが待っていそうだ。
>新しい属性を選択できるようになりました。確認をお願いします
前回確認せずにおいた新属性とやらだ。もうどうにでもなれとばかりに確認する。
>現在選択可能な属性は「火属性」と「闇属性」です
……もう何もツッコまないでおこう。
そう思った俺は淡々と属性の設定をしていく。
>属性を「火属性」から「闇属性」に変更しました
>それでは、この世界を楽しんでくださいね!
楽しむ前に殺されてるんじゃ、楽しめるモノも楽しめないけどな?
「私のコト殺しに来るんだネ……楽しみに待ってるヨ……フフフフフフフフ」
小さく、何かが、聞こえたような気がした。が、ここには俺しかいない。
もしかして、この「声」は――――
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「おはよ、ジュン」
……まだ俺は目を開けていないんだが、何故起きたと思ったんだ?
ゆっくりと目を開けると、おなじみ(したくない)のハンター協会の本部の一室の天井。木目の位置も相変わらずだ。
「ふらいんぐーてんもるげーん!」
いろいろとごっちゃになりすぎて意味が解らないウヅキの言葉に、溜め息が出てしまった。
「なんか混ざり過ぎじゃないか……?」
「えー、せっかく起きたのにテンション低くない? もしかして、眠り姫を目覚めさせるキスとか欲しかった?」
「いらんわ」
天と地ほどにも差のあるテンションに、いろいろと突っ込む気力も失せてしまう。
周りを見回してみるが、部屋には俺とウヅキしかいないようだ。……もしかしてエルは戻らなかったのか、「ラストフローラ」以外のハンター協会に行ってしまったのか、はたまた『別の世界』に行ってしまったのか。
そんなことを考えていた俺を見て、ウヅキが言う。
「あ、エルならもう起きてて、何か服がダサいとか言って買いに行ったよ?」
ハンター協会の本部が設置されている以外、特に何もないフローラ地方随一であろう辺境の田舎町であるこのラストフローラに、女王様のお気に召すような服が売っているのか疑問である。
が、とにかくエルも『この世界』に戻ってきたと聞いてホッとした。別に他意はないが、俺の巻き添えのような形で死なせてしまったので多少の罪悪感くらいは感じていたのだ。
「そういえば、装備リングは回収しておいたから、返しておくね。最後に握っていた約束された勝利の剣は枕元に置いてあったよ」
そう言ってリングを差し出してくるウヅキの周りには相変わらず薄らと緑色の光が見えるので、どうやらまた魔攻の使える職業のようだ。
リングを受け取り確認すると、約束された勝利の剣以外に装備していた武器の内、レア装備である倶利伽羅のみが残っていた。どうやらレア装備以外は死んでしまうと引継ぎが出来ないらしい。……もしかしたら倶利伽羅のみをリングから外してウヅキが保管していたのかもしれないが。
職業が変わっても、2振りの剣は使えるらしい。しばらくはまた装備品集めに精を出さないといけないようだ。
エルが買い物から戻ってきた。俺を見て一瞬驚いたように眼を見開いていたが、すぐにいつもの調子に戻った。――正直言うと、俺もエルを見て驚いた。服装が以前と変わったとかではなく、周囲を漂っている光の色が変わっていたのだ。
新調したという白いシンプルなミニワンピを翻しながら、エルは俺のステータスも確認したいと言ってきた。そういえば俺自身もステータスの確認はしていなかった。
エルの新しいステータスも一緒に確認していると、2人がおかしなことを言い始めた。
「あれ、ジュン今度は『武闘家』にしたんだね。前に『武闘家』のハンターとパーティを組んだことあったけど、かなり攻撃力も高いうえに体力値も高いんだよねー」
「あら、今度は『魔術師』にしたの? もしかして私の影響かしら。ま、どーでもイイけどね。『魔術師』の装備は組むのにコツがいるから、何だったらまたリング組んであげてもいいわよ?」
……何言ってんだこいつら。
ジュン-男
属性-闇 職業-暗殺者 Lv.1
称号-なし 通り名-なし
周回数-3(+1)
エイプリル-女
属性-光 職業-召喚士 Lv.1
称号-なし 通り名-氷月華の女王
周回数-2(+2)
というか、まだ何のクエストも始めていないはずなのにエルに通り名が付いているのは、どうなっているんだ?




