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4-6.Transmigration -Icedoll Queen-







*****






 前の『世界』で分かれて以来だった師匠・ルキアとの再会を喜んでいた私に突き立てられた事実。

 それは、師匠がかつてのジュンと同じく四天王――『魔王軍四天王・氷河(グレイシア)のルキア』と成り果てていたこと。


 それともう一つ。恐らく師匠……いえ、ルキウスは私の職業(ジョブ)である「魔術師」の上位職業(ジョブ)の「何か」かもしれないという、確信に近い予想。もしこれが当たっているとするならば、単純な攻撃の一つ一つが、私のソレを超える威力を持っていることになる。

 根拠は「剣士」から「騎士」に職業(ジョブ)が変化した後のジュンの、単純な攻撃力が単純に増していたこと。以前のカンスト剣士の威力と比較しても、現在の成り立てホヤホヤ騎士の攻撃力は遜色がない。おまけに「騎士」になることで使えるようになった魔攻。これによって、ジュンは既にこのパーティ内での圧倒的火力担当になりつつある。


 そのジュンの魔攻が、今回は使えない。ジュンの属性である「業火の理」では、氷属性であるルキウスにダメージを与えることはできない。

 ジュンの火力にばかり頼っていたツケがここで来てしまった。


 ルキウスの全体魔法への対策として「球氷壁(アイスボール)」をジュンとウヅキに施しているが、私は生憎防御魔法が得意な方ではない。この「球氷壁(アイスボール)」もあくまで「防御」だけの魔法であり、ルキウスの魔法を無効化できているわけではない。

 つまり、時間をかけ過ぎると、火属性のジュンや完全物理型のウヅキにとっては致命的なダメージにもなりうる。

 特にジュンには至近距離でルキウスに挑んでもらう必要があるため、ジュンの身体自体の他に、武器の方にも「カード」によって防御魔法を掛けておいた。これはジュンの身体に掛けた方の防御魔法が切れた時に発動するように仕掛けてある。念のため、同じものを、ジュンがルキウスの元へ向かった後にウヅキの弓にも掛けておいた。


 魔術師職業(ジョブ)と謂えども、魔法は無限に使えると言うわけではない。どんな魔法でも必ず何かを媒体として魔法を行使している。魔術師の場合は、その身体に宿っている魔力を使う事が多い。他の職業(ジョブ)は分からない。もしかすると、魔力の他にも何か別の媒体が使えるのかもしれない。本当はそれを確認しておきたかったのだけれど、師匠――ルキウスと対峙するタイミングが悪すぎた。それに……このパーティ内の空気を重くしてしまった原因が自分であるという事もわかっている。

 今まで渡り歩いてきた『世界』の話しはともかく、ジュンに余計なことを教えてしまったのがいけなかった。ジュンとウヅキなら大丈夫、などと軽く考えていた自分に今更腹が立ってくる。

 二人の性格なんて(自分)が一番理解(わか)ってる、だなんて思っていた。男の子なんて単純なんだから、だなんて。……一番単純なのはきっと私だ。


 とにかく、魔術師と謂えども魔法は無限には使えないのだ。それは四天王であるルキウスだって同じはず。

 今のところ、私の残存魔力は、防御魔法にかなりの比率を割いてしまっているため六割残っているかどうか、という所だ。


 もちろん、魔力や体力を回復させる為のアイテムはある程度所持してはいる。私が素材収集系のクエストを受諾し続けることに余念がないのは、回復薬を「調合」するのにはある程度の時間が必要だとわかっているからだ。……「調合」自体が得意だというのもあるが。

 普段から回復薬を「購入」するだけのハンターも確かに一定数いるが、「購入」するよりも自分でクエストを受諾して素材を集めて「調合」する方が、遥かにコスパが良い、と言うのが私の持論。回復薬を入手できて尚且つクエストの報酬も入る、非常にお得な手段だと自分では思っている。


「さて。作戦を説明しましょうか。グズグズしていられないし……何より、時間が無い。それに……一か八かだけど……成功するかもわからないけれど……でも、今やらなきゃ……やられるわ」


 そう前置きして、私は『魔王軍四天王・氷河(グレイシア)のルキア』もといルキウス攻略のための大まかな作戦を二人に説明する。――出来る限り平常に振る舞っているつもりだが、出来ているだろうか……?――少なくとも、ジュンにはこの説明だけで十分なハズ。むしろ、これからウヅキに話すつもりの詳細な、そして無茶な作戦をジュンに聴かせるのは得策ではないだろう。最前線で最も危険な位置に着いてもらうのに申し訳ないとは思うが、こちらを気にして自分がダメージを喰らう事だけは避けてほしい。


 まず、基本的な陣形は、前衛がジュン、後方に私とウヅキ。

 基本的には、物理攻撃・魔法攻撃の両方を扱えるジュンに、雷属性の剣でルキウスを攻撃してもらう。大剣の必殺スキルが使用可能になった時点でそれを発動。その時に、後方で待機する私とウヅキが支援攻撃を行う(ジュンには具体的な方法を説明していないが、ウヅキにはこれからこの支援攻撃の説明をするつもりだ。何せ、この支援攻撃にはウヅキの力が必要不可欠なのだから)。

 威力を増大させた雷属性の攻撃の後、約束された勝利の剣(エクスカリバー)による物理攻撃および必殺スキル「聖 杯 の 祝 福アンリミテッドブレイドワークス」を発動。

 これの繰り返しでルキウス討伐が可能である、という予測。――唯一のネックは「聖 杯 の 祝 福アンリミテッドブレイドワークス」の発動条件が未だに判明されていないことだ――


 ジュンに説明した大まかな作戦は大体こんなカンジだ。ジュンがルキウスの方へ駈け出したのと同時に、一つ目の「球氷壁(アイスボール)」を展開させる。ジュンとウヅキの武器に掛けてある方は、あらかじめ「カード」に魔力を移してあるので、私の魔力が切れても、一つ目の「球氷壁(アイスボール)」が切れた時点で次が作動する。


 ルキウスとジュンの攻防が始まったところで、私はウヅキに「支援攻撃」の詳細を説明する。……説明し終わった後のウヅキの反応は大体予想が付くが、今はコレに頼るしかない。


「さて。私たちの仕事の説明よ」


 落ち着け、自分。……私は氷華の女王(アイスドールクイーン)のエルよ。落ち着きなさい。


 私はそう自分に言い聞かせながら、作戦行動を始める。それは――自分の装備リングを外すこと。

 私の装備リングに付けられている武器は全て魔術師職業(ジョブ)(ロッド)だ。氷属性が殆どだが、氷属性値により攻撃力および防御力の強化、さらに(ロッド)の特性である回避率の強化がされている。そして武器の精度はほとんどが準レアかレアに近いモノでかなり強化もしてある。つまり、それらの着けられたリングを「外す」という事は……ソレに着けられていた武器によるステータス補整を全て「無」にすると言う事だ。


「なっ、何してんだよエル!?」


 ウヅキが慌てて止めようとするのも当然だ。今の状態で装備リングを外すという行為はほぼ自殺行為に近い。

 ただし、私だって何も自殺しようとしているわけではない。主に体力値を増強させている補助リングは着けたままにしてあるので、体力値のステータス補整だけは外れないはずだ。そして、魔術師職業(ジョブ)(ロッド)が着けられたリングを外すことによるメリットは……。


「コレで私も『魔弓』を使えるハズよ……さっき二人の装備を確認させてもらった時に、ウヅキの装備に『風属性』の魔弓が多いのを確認したわ。……私が『風属性』の魔力を込めて弓を引くから、ウヅキには照準を合わせてほしいの」


 普段自分の職業(ジョブ)の武器を着けているリングを持っている場合、他の職業(ジョブ)の武器は使用することができない。でも、自分の職業(ジョブ)の武器を一切装備していない場合、他の職業(ジョブ)の武器を利用することが可能になる。

 それともう一つ。

 ウヅキの持つ「風属性」には、回避率のステータス補整の他にも、もう一つ重要な補整がある。それが「威力増大」だ。特にこれは火属性に強く効く。今回はジュンの使用する武器は「雷属性」だが、元々の属性値は炎のため、ルキウス(氷属性)との相性を考えても風属性での援護が一番効果的だろう。


 そのことをウヅキに伝えて、再度、魔弓の拝借と照準について尋ねる。


 大丈夫、アンタの反応も返事も、予想の範囲内だから。





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