4-2.Transmigration -Knight-
ジュン-男
属性-火 職業-騎士 Lv.1
称号-なし 通り名-なし
周回数-2(+1)
俺は新しく変わったステータスを確認する。何度も繰り返しているが、ただ職業と属性、レベルや周回数等が書かれただけのモノだ。
しかし、エルはこのステータスを見ただけで「魔攻が使えるようになった」と言った。どういうことなのかさっぱりわからない。
さっぱりわからないと言えばもう一つ。起きてからずっと、部屋の中に見える色とりどりの光の粒だ。
既にエルもウヅキも休むと言ってそれぞれの部屋に帰ってしまった。どうやら俺が再びこのハンター協会本部に戻ってから、ずっと寝ずに見張っていたらしい。……カンストハンターが二人もいるのだから交代で休めばいいのにと思うのだが、そう言う問題でもないのだろう。
俺は再びユニが部屋に現れないか警戒していたが、今夜は大丈夫だと思い、再び眠ることにした。
「その光の粒って言うのが、所謂『魔攻が使える』状態の証よ。正直言うと『騎士』なんて職業は聞いたことが無いけれど、どうやら以前の『剣士』の上位互換職業とみてほぼ間違いなさそうね。
たとえば、私の周囲には青い光が見えていると思うんだけど、コレは『氷属性』の光の色よ。私にはジュンの周囲には常に『炎属性』を示す赤い光が見えていたわ。ウヅキは『風属性』の緑色の光が見えているはずよ。他の属性のハンターを見れば別の色の光が見えるから、外に出た時にでも確かめればいいわ。
ちなみに各属性の相性については前にも言ったと思うけど――」
翌朝、食堂で落ち合ったエルに早速尋ねてみると、朝一特別講義が始まってしまった。魔攻とほぼ無関係なウヅキは、起きたばかりだというのに欠伸を咬み殺しながらその講義を聞き流している。
エルの話しを要約すると、「魔攻」が使えるハンターには、それぞれの属性を表す光の粒が見えるらしく、それで戦闘における相性や、攻撃時のダメージの相性や補完に役立てるらしい。もっともエル自身も、物理系の職業で魔攻が使えるモノは聞いたことが無かったらしく、探究心のような何かのスイッチを押してしまったような形になる。
今日は、エルの提案で、俺の新しい職業の能力の確認やレベル上げも兼ねて、いくつかのクエストを受諾して別の街へ移動する予定だ。ラストフローラに長居しても、特に目ぼしいクエストも無いようなので、俺もウヅキも移動には大賛成だ。
ラストフローラからの出立は、俺の初心者用クエが終了次第、という事にしてくれているらしく、俺の用事が終わるまではウヅキはハンター協会本部で待機しているという。他に見て回るようなものも無い田舎町なので、無駄にうろつくよりも、協会に引き籠って装備の点検や手入れをしていると言う。
エルの方は、どうやらオレの初心者クエに付き合うつもりらしい。確かに、このまま一人で行動してまたユニに捕まるのも面倒だし、エルならば魔攻についても詳しいに違いない。……一度死んでしまったからか、やはり装備リングや補助リングの装備はほぼすべてリセットされてしまっていて、何故か手元に1本だけ残った「約束された勝利の剣」――そういえば、前回もハンター協会から出る時に適当に取ったのはこの剣だった――だけになってしまっている。服装の方は、初期装備から変更することなくユニに殺されてしまったため、特にもったいないようなモノは無かった。
「あ、そういえばコレ」
クエストに臨むに当たって自分の状態の確認をしていると、ウヅキがポーチの中を漁りながら言う。差し出されたそれが何かと思えば、殺される前に装備リングの2番目に着けていた「倶利伽羅」だった。正直言うと、コレはかなりのレア装備だったらしいので、かなり嬉しいサプライズだ。
「ありがとう……ウヅキもコレ持ってたのか? ……自分の装備に使わなくて良かったのか?」
「いや、コレはお前のなんだ……こないだ森で発見した時に、ジュンが消える前に何とか回収できたのはコレだけだったから」
「そうか……ありがとな」
受け取った倶利伽羅を装備リングに装着する。ついでに現在の装備はこんなカンジだ。
装備リング:約束された勝利の剣(レア、火属性、使用可能必殺スキル「聖 杯 の 祝 福」)
倶利伽羅(レア、火属性、使用可能必殺スキル「業火の理」)
補助リング:なし
ジュン-男
属性-火 職業-騎士 Lv.1
称号-なし 通り名-宝具の収集者
周回数-2(+1)
やはり通り名の「宝具の収集者」は、「約束された勝利の剣」と「倶利伽羅」をセットで装備した時に付けられるらしい。そして、前回は「使用可能必殺スキルなし」になっていたはずの「倶利伽羅」のスキルが解放されていた。
「やっぱり、そういう事なのね」
「どういうことだ?」
満足気に頷くエルに尋ねる。
「まず一つ目は『通り名』よ。ジュンの持っている剣は二本ともレア級だから、コレはおそらくレア級相当の装備が2つ以上つけられた場合に付けられる通り名のようね。
そして、もう一つ。『倶利伽羅』のスキル解放よ。前回は『約束された勝利の剣』のスキルは解放されていたけど、今回は『倶利伽羅』の方も解放されている。おそらく、『聖 杯 の 祝 福』は物理のみで発動可能なスキルで、『業火の理』は魔法かそれに準ずる効果を持っている為魔攻を使える状態じゃなければスキルが解放されないんじゃないかしら。
まぁ、あくまで仮説の一つにすぎないけれどね」
それだけ説明すると、軽く腕を曲げ伸ばししてストレッチをした後、エルはご自慢のロッドで背中を突っついてきた。
どうやらとっととクエストを始めろと言うことらしい。
俺は二本の剣を装備して、初心者クエスト攻略者御用達である森ラストフォレストへと脚を踏み入れた。
「さ、『魔攻』が使えるようになってから初めて入る森の感想はどうかしら?」
森の中は、鬱蒼と生い茂る木々に遮られる薄暗い視界は相変わらずだが、あたり一面に広がる茶色の光の粒だけが、以前とは異なっていた。
「……あまり暗く感じないな」
「茶色の光の粒がそこらじゅうに見えるからだと思うけど。この色は『樹属性』の色よ。各属性の光が多く見える場所では、その属性に応じたハンターやモンスターの属性値が上がるわ。だから、この森には樹属性のモンスターが多く生息しているし、樹属性のハンターの性能も上がるわね。
前にも説明したと思うけど、樹属性に有効な属性は『火』と『雷』よ。だから、ジュンの場合はこの森である程度自分の魔攻の感覚がつかめると思うんだけど。というか、掴みなさい。このクエでは私は一切手出ししないわよ」
そう言い放つと、エルは俺の3歩ほど後ろに陣取った。どうやら魔攻に関するアドバイスだけをするためにクエに付き合ったらしい。
初心者クエ用に出現させられる樹属性のキノコのモンスターを、斬り付ける。『約束された勝利の剣』の切れ味はやはり相当なもので、ついでに魔攻が使える様になったからか基礎的な威力も増しているようだ。
「物理攻撃ばっかしてどーすんのよ。新しいスキルあるでしょ?」
大樹にもたれかかりながら、面倒臭そうにエルに言われて思い出した。もう一本の剣『倶利伽羅』の新しいスキル。
今までスキルのことなど気にしたことも無かったので、どうやれば発動するのかは知らなかったが、『倶利伽羅』に持ち替えてスキルを発動使用と決めると、自然と剣の方がスキルを発動してくれるようだ。……親切設計ご苦労。
「『業火の理』」
『倶利伽羅』を持ち、顔の正面でまっすぐ上に向けて構えると、自然と声が出た。
発動されたスキルは確かに火属性の魔法のようだ。俺を中心に半径5m程が一瞬で焔に包まれ、灰になった。
すぐ後ろで樹にもたれかかっていたはずのエルの方を見ると、氷の膜のようなボールに包まれていた。何の魔法か知らないが、それが無ければ今頃はエルも炭になっていたかもしれない。エルがもたれかかっていた大樹は、葉のほとんどを灰に変え、大きな幹も炭と化し、そこに茂っていたという面影だけを残していた。
「なるほど、範囲系の完全魔法攻撃だったのね。そりゃ魔攻使えないんじゃ発動不可能よね」
何でもない事の様に氷のボールを消したエルは、そう言いながら『倶利伽羅』をしげしげと眺める。
「これは武器の強化もそうだけど、スキル自体のレベルも強化すればもっと強力な範囲魔法になるわね……私は範囲魔法はまだ使えないし、これはかなりの戦力だわ……あと、炎系の属性値も高めて、魔力も底上げしないといけないわね……この際だから苦手属性への対処は最小限に留めて、回避か耐久を属性か魔力と一緒に上げられる装備が見つかれば効率的なのだけれど……それに――」
何かをブツブツと呟いているエルは、かつて見たユニのそれとは別の意味で怖いと思った。……どちらにせよ、敵に回したくない事は確かだ。
エルが自分の世界に入ってしまったので、オレは仕方なく、初心者クエを全て一人で片づけたのだった。
「あれだけの範囲魔法だもの、おそらく相当の魔力の充填が必要に違いないわ……ねぇ、戦っていて何かそう言った兆候は見られなかった? え、敵を切り刻むのに集中していたですって? アンタ何のために私がこんな金にもならないクエストに付き合ってると思ってんのよ! とりあえず『業火の理』の発動条件を見極めないと、実戦ではうかつに使えないわね……もし体力なんかを媒体にしているんだとしたらとんでもないことになるわ……」
「オーレーもーまーほーうーつーかーいーたーいーーーーー!!」
クエストを完遂してハンター協会に戻り、ウヅキと合流してクエストの内容を簡単に説明すると、ウヅキはそう言いながらテーブルに突っ伏した。
「私だって範囲魔法使いたいわよ! 自分の職業に文句言わないの!」
ウヅキの頭をロッドでゴスンと良い音を鳴らして殴ったエルはそう言いながらお茶をすすっている。
「範囲魔法って、そんなに珍しいのか?」
エルの言葉に俺は疑問を口にする。カンスト魔術師のエルでさえ範囲魔法が使えないとなると、その使い手はどんな職業のハンターになるのだろう。
「珍しいわよ! 少なくとも私はそんな使い手は見たことが無い。……どの『世界』でもね」
そう言えば、ステータスを見た時から思っていたのだが、地味にエルの『周回数』が「1(+2)」となっているのは気になっていた。
俺のように闇堕ちしたりユニに殺されたりしたわけでもなさそうだが、エルの周回数の謎はどういうことなのだろう。
それともう一つ。エルがふと漏らした言葉、「世界」というキーワードに反応してしまう。
「なぁ、エル。……どの『世界』でも、って、どういう事だ?」
そう尋ねると、エルは席から立ち上がり、屋内に入るときには脱いでいるローブを手に持った。
「その話は……そうね、かなり長くなるわ……次の街に向かいながらでも話してあげるわ。感謝なさい」
そう言って、エルはパーティ用のクエスト受諾申請をしに、協会の受付へ向かって行った。
ジュン-男
属性-火 職業-騎士 Lv.15
称号-なし 通り名-宝具の収集者
周回数-2(+1)
ウヅキ-男
属性-風 職業-狙撃手 Lv.99
称号-カンスト,狙撃の神,他 通り名-神 風 射 手、女王の番犬
周回数-1
エイプリル-女
属性-氷 職業-魔術師 Lv.99
称号-カンスト,永久凍土を背負う者,他 通り名-氷 華 女 王
周回数-1(+2)
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