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3-3.Reincarnation -Remuneration-

「じゃ、あとはもう数匹モンスターを狩ればクエストは達成だから、午前中はそれに徹しましょ。……ウヅキはくれぐれもウッドソルジャーの群れになんか突っ込まないで頂戴ね? で、午後からはジュンのレベル上げよ! ウッドの群れに突っ込むなら午後からにしてよね! じゃ、各々索敵開始!」

 朝の森に、エルの声が響く。ウッドの群れに関してはウヅキは完全に言い返せないのでうなだれているが、そもそもレアモンスターの群れに突っ込むこと自体がレアだと思うので気にしないでいいと思うのだが。


 結局、幸運(?)なことにウヅキがウッドの群れに三度突っ込むという事も無く、午前の半分も過ぎないうちにクエスト自体は完遂することが出来た。エルの機嫌も上々である。エルとウヅキ曰く、一度クエスト完遂報告をしてしまうと、もう一度森に立ち入るための手続きが面倒なため、このまま俺のレベルカンスト計画に移るそうだ。

「さぁ、ウッドの群れに突っ込みなさい!」

 エルは上機嫌でそう言いながら、手にしたロッドでウヅキをせっつく。……完全に尻に敷かれている。

「突っ込めって言われて突っ込めるよーなモンじゃねーじゃん!?」

 ウヅキは涙目でそう訴えるも、目の前には小ぶりな木の人形のようなモンスターがずらりと現れる。……ウッドソルジャーだ。

「何言ってんのよ、やれば出来るじゃない!」

 今度は笑いながらロッドでウヅキの腰あたりを殴るエル。女王の二つ名は伊達ではないようだ。……もっとも、「氷華」などという甘い幻想を抱きそうな部類ではないが。

「ほら、何グズグズしてんのよジュンったら! とっとと斬り捨てるわよ! それに、次の群れもお待ちかねみたいだし?」

 周囲を見渡すと、ぐるりとウッドソルジャーに囲まれていて、俺達は逃げることも出来ないくらいに木の人形で覆い尽くされている。

 声も無い悲鳴を上げ逃げようと試み(そして失敗す)るウヅキに対し、俺とエルは次々と襲い来るウッドを殲滅していったのだった。




「全く、ウヅキったら、それでもカンストハンターなの!? 威厳も何もあったもんじゃないわ!」

 辺りを埋め尽くしていたウッドソルジャーの群れを全て薙ぎ払った俺達は、その場で立っているただ三人のみのハンターとなっていた。

「だって、オレの攻撃全く通用しないんだぜ!? しかもアイツらオレばっか狙って撃って来やがって!」

「ウッドソルジャーも同じ狙撃手の匂いでも感じたんでしょうよ。それに、単なる遠距離物理攻撃なら、当たらなければどうってコトないじゃない」

「……ま、一応ありがとな?」

「そんな目でオレを見るなよジュン!」

 涙目のウヅキを宥める俺とエルに対し、もうこんな森に居られるかオレは帰るぞとでも言いたげなウヅキ。いや、正確には、俺にもエルにもウヅキを宥めようという意志など微塵も存在しないので、単なる茶番だが。

 キイキイと茶番を繰り広げる二人に対し、俺は今の連戦でどのくらいレベルが上がったか確認しようとステータスを確認する。……いい加減騒ぐのも大概にしないと、別のモンスターに見つかる可能性もあるしな。


 ジュン-男

 属性-火 職業-剣士 Lv.99

 称号-カンスト、駆け抜ける初心者(ホープネス・ルーキー) 通り名-なし

 周回数-1(+1)


 ……どうやら、今日の目標は全て達成したようだ。太陽も、まだ昇りきってはいない。随分と予定が前倒しになったようだ。




 そんなこんなで、俺達はかなり予定よりも早く森から帰還し、ギルドに達成報告をし報酬を受け取った俺達は(ちなみに、今回の内容のクエストでは受諾から報告までの速さでは歴代2位だったらしい。俺のレベル上げが無ければ、歴外1位も狙えたかもしれないと、ギルドの受付嬢に言われた。どちらかというと、こんな無茶苦茶な選択の組み合わせのクエストを過去に受諾したパーティがいた事の方に俺は驚いた)、パーティ解除して解散……とはいかなかった。まだ、俺とエルの約束が残っている。「一番いい装備」を頼んだアレだ。

 散々ウッドを釣る囮にし、さらには短時間ではあるが仲間外れになってしまうウヅキには申し訳ないとは思うが、全てはだいたいお前のレクチャー不足のせいだ諦めてくれ。ちなみに、俺個人としては、装備を選ぶのにウヅキがいても何ら問題は無いのだが、女王様( エ ル )の方はそうはいかなかったらしい。何でも、関係ない人物がいると気が散るのだそうだ。そう言われてしまうと俺もテキトーなモノを選ばれてしまうと厄介なため、泣く泣くウヅキとは一旦別行動、ということにしたのだ。別に泣いてはいないが。

 単独行動のウヅキは放って置くことにして、俺はエルに連れられる形で、街の市場(バザール)へと赴いたのだった。




「まず。アンタ、武器とかのアイテムは幾つぐらい持っているの?」

 エルにそう問われるが、ぶっちゃけ言ってる意味はわからない。先ほどまでのクエストでモンスターがドロップしていったものなら数個所持してはいるが、かさばる上に荷物になるためできれば一刻も早く手放してしまいたいのが本音だ。

「さぁな……とりあえず、さっきのクエで拾ったモンは全部荷物として包んで背負ってるけど?」

 エルはしげしげと俺の背中に背負われている荷物を見ている。というか、コレは何度も見た、エルの呆れている時の表情だ。

「……どうやら、ジュンには本ッッッッ当に基本的なことから教えないとダメみたいね」

 溜め息を吐いてそう言ったエルに、今度の講義は特別長くなることだけは理解できた。


「おい、こっちじゃないのか?」

 ぐいぐいと俺の袖を引っ張るエルに、俺は服や鎧等の装備を売っているらしき店の並びを指さす。

「だまらっしゃい」

「あっ、ハイ」

「アソコはまだジュンには早いわ。先ずはここよ」

 エルに引っ張られるままに連れて行かれた先には、一件寂れた風な装いの……店、なのかコレは?

 雨などがしのげればいいとでも言うような、お情け程度の小さく張り出した軒のような部分の下に、これまたこじんまりとしたカウンターがある。カウンターの上にはベルが置いてある。……それだけだ。ていうか何屋だココは?

 エルは躊躇することなくベルをけたたましく鳴らした。何度も何度も鳴らすため、通りを歩いている人が音を聴きつけては笑っているのが見える。……少し恥ずかしい。

 エルがベルを鳴らすのがかれこれ30回目くらいになろうかという時になって、ようやく店の奥から一人の翁が顔を覗かせた。しわくちゃな顔だが、表情は穏やかな好々爺。

「おや、久しいの、氷の娘よ」

「鳴らしても鳴らしても店主が出てこないなんて、ベルの意味がないじゃないこの糞爺(クソジジイ)

「ふぉっふぉ、聞こえんのぅ。最近また耳が遠くなったようでの」

 エルの舌打ちも悪態も軽く聞き流した店主は、俺を見てまた笑う。

「ふぉっ、コレはまぁた、めェんずらしいお客を連れてきたのぅ氷の娘よ」

「いいからさっさと装備リング1個と、補助リングを4個。出してちょうだい。お代はコイツからよ」

「ふぉっふぉっふぉ、長生きもしてみるモノじゃのぅ」

 そう言いながら、店主はエルに言われたとおりらしき品をカウンターに出した。お代は合わせて金貨3枚。かなりの出費だ。そういえば、この世界での通貨は全て、3種類のコインで支払われている。金貨、銀貨、銅貨だ。金貨1枚=銀貨5枚=銅貨50枚、というレートだ。先ほどまでのクエストで、実は宿代や食事代以外にあまり金を使っていない俺は、今のところ金貨でいうなら70枚と少しくらいは溜めこんでいる。……初心者にしてはかなり稼いでいるそうだ。

 店主に代金を支払い、合計5つのリングを持った俺とエルは、昼食がてら近くにあった食堂に入った。適当に注文をし、料理が来るまでの間に、先程購入したリングについての講義が始まる。


「そのリングは『装備リング』と言って、ベルト等に着けて使うモノよ。その一番大きなのが『装備リング』で、残りの4つが『補助装備リング』。

 装備リングには通常戦闘で用いる武器類、補助装備リングにはステータス上昇のために通常戦闘では使わないような武器や装備等を装着するのよ。

 ……ジュンの場合は『剣士』だから、装備リングには剣士用の武器を着けることになるわね。ちなみに装備リングには最大で5つまでしか武器は装着できないわ。まぁ、もしその5つから溢れた武器があったとしても、他の武器や装備の補強素材にも出来るし、属性ごとに武器を確保するのも大事なことよ? ……あ、アンタ魔攻使えないんだったわね……忘れてたわ。

 それから、補助リングで補整できるステータスはそれぞれ『属性値』、物理・魔法含めた『攻撃力』、同じく『防御力』、『回避率』、『耐久値』が主ね。……クエスト中の戦い方を見る限り、多分、ウヅキ辺りは『回避率』か『耐久値』に極振りしてそうだけど。ちなみに補助リングも最初は1リングにつき最大5つまでしか装備できないけれど、もうカンストしてるし、多分私たちと同じく1リングにつき20くらいは装着できるはずよ。

 ジュンは『火属性』だったわよね?だったら、リングの武器構成は火属性のモノを中心に、出来るだけ弱点になりやすい『氷属性』への対処を出来るように組んだ方が良いわね。……どうせ知らなかっただろうから教えておくけど、各属性の相性って言うのもあるのよ。あ、やっぱり知らなかったわね? 顔に出てるわよ。

 基本的には優勢属性順に、火→樹→土→風→雷→氷→火っていう感じね。更に細かく言えば、火属性と風属性、樹属性と雷属性、土属性と氷属性は、補完関係及び相互に有効属性とされているわ。……アンタとウヅキも魔攻が使えれば、確かに納得のいく属性関係ではあったんだけどねぇ……風属性は火属性の攻撃をさらに強めるからね。他に光属性と闇属性ってのもあるけど、基本的にこの二つは互いが拮抗関係だから、ジュンやウヅキ的には無視してくれていいわ。

 それと、リングに装着した時の、属性別の補整ステータスって言うのもあるのよ。順に、火属性と雷属性は攻撃力、樹属性と土属性は防御力、風属性は回避率、光属性と闇属性は魔法攻撃・防御力。氷属性については、武器や装備の種類によって攻撃力補整か防御力補整か分かれるのでそのつもりで。

 ……さて、食事を頂いたら早速リングに装備品を組んでみましょうか? ……いい加減その山みたいに積まれている武器や装備見てると気が滅入るわ。あ、ちなみに装備品はリングを持っていればだいたい10cm位の大きさに縮小出来るのよ。

 さぁ、頂きましょう?」


 エルの講義を聞いているうちに、適当に注文した料理が運ばれてきた。エルの言っていることはちんぷんかんぷんだが、要はやってみるしかないのだろう。

 俺は自分の後ろに積んである山のような装備品を見て溜め息を吐いた後、テーブルに並べられた料理に手を伸ばした。

エルさんは話し出すと止まらないタイプ(笑)

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